ロイヤルティ構築に、もう個人間の関係はいらない :カスタマーサクセス10の原則⑤
カスタマーサクセスの教科書として知られる通称「青本」↓
カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則
- 作者: ニック・メータ,ダン・スタインマン,リンカーン・マーフィー,バーチャレクス・コンサルティング
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2018/06/06
- メディア: 単行本
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その第5原則が「ロイヤルティ構築に、もう個人間の関係はいらない」です。
上記の本は、「10の原則」がチェックリスト的に使えて実務的に非常に使いやすいのですが、
以下では、本の内容を紹介・補足しつつ、その実務上の意味合いについて考えたいと思います。
なぜ、ロイヤルティ構築に個人間の関係はいらないのか
カスタマーサクセスとロイヤルティの関係
話の前提として、カスタマーサクセスと「ロイヤルティ」の関係を整理したいと思います。
本書の第1章で、ロイヤルティは以下のように説明されています。
カスタマーサクセス とは、つまるところロイヤルティだ
一般的には、2種類のロイヤルティがあるというのが定説だ。心理ロイヤルティと行動ロイヤルティである。
実は、カスタマーサクセスとは、心理ロイヤルティを生み出すための手段なのである。
なぜ、ロイヤルティ構築に個人間の関係はいらないのか
青本のこの章は、タイトルづけが不親切だと思っています。
実際言っているのは
「ロイヤルティ構築に、もう個人間の関係はいらない」
というより
「ロイヤルティ構築を個人の関係でやるのは無理。代わりに体系化されたプログラムが必要」
だと思います。
エグゼクティブサマリーにも、以下のような記述があります。
現在は、ベンダーにとって顧客とやりとりできる体系的プログラムの構築は欠かせない。多くの会社では、顧客基盤の中で最大の割合を占める顧客に対して同サービスを提供するかが切迫した問題となっている。関係構築の手段として人手がかかるものではなく、テクノロジー寄りの方法を採ることが求められているのだ。「顧客の最も大きな層」とは、ここの年間支払額という点での価値は高くなくても、全体の成長に対しては大きな役割を果たしている層のことである。
体系化されたプログラムで達成できるから(そして個人間の関係ではやりきれないくらい顧客が広がるから)特にSaaSのようなビジネスでは個人間の関係は必須ではない、ということです。
この原則は、ハイタッチに適用されない
もう一つ重要なのは、この原則はハイタッチには適用されないということです。
著者による補足にも、以下のような記載があります。
実は、原則⑤はハイタッチ層の顧客にはまず適用されない。定義からして、個人的な関係を構築するのがハイタッチ客だからだ。
プログラムを強化する方法
そして、体系的なプログラムを強化するために、以下のような手順を紹介しています。
-
自社の事業に合った指標で顧客をセグメント化する
-
セグメント毎に顧客カバレッジモデルを決める
-
対象モデル毎に顧客とのやりとりの指針を作る
-
顧客とやりとりする頻度を決める
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強固なロイヤルコミュニティを構築して顧客同士を結び付ける
-
顧客のフィードバックループを作る
いくつか用語の補足します。
- 「セグメント化」は、多くの場合ARR(つまり収益性)で分類されます。要は大口・中堅・小規模と顧客を分けることです。ここまでは多くの日本企業でもやっている。
- 「カバレッジモデル」は、要はハイタッチ/ロータッチ/テックタッチのどのモデルを採用するか、という話です。
考察 :体系的なCXプログラムを提供しよう
個人的には、この原則のタイトルはポジティブに「体系的なCXプログラムを提供しよう」とかが良いと思ってます。
「SaaSにおいては、個人間の関係じゃなくて体系的なプログラムで成功に導くことが大切」というのが、この原則の言いたいところだからです。
そして「体系的なプログラム」、実際作ってみると結構難しいです。
手順は、本に書いてある通りなのですが、その中身がイケてないものになりがち。
例えばオンボーディングプログラム一つにしても、顧客毎の色々な変数を考慮しながら、「いい感じの最大公約数」をとって、ベースを構築しなくてはならない。
「全員セミナーを受けさせる」「四半期毎に訪問する」とかいう意思決定は簡単なのですが、中身がスカスカだと、CXの毀損にしかなりません。
この辺のグランドデザインこそが、旧来のセールスや受け身のカスタマーサポートではなくカスタマーサクセスという仕事の役割であり、腕の見せ所のなのかな、と思います。
※他の原則についてはこちら↓
カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則
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