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カスタマーサクセスの必読書&おすすめ本

カスタマーサクセス関係で読んでおいたほうがよさそうな本をまとめてみました。
 
「カスタマーサクセス(Customer Success)」とは、主に月額課金系のビジネスで、顧客を成功に導く一連の活動や組織を指します。
月額課金型のビジネスの増加や、下記「青本」の出版などもあり、日本でもだんだん一般的な概念となりつつあります。
 
そんなカスタマーサクセスの「必読書」と言えそうな本やオススメの本ご紹介します。
 
<目次>

カスタマーサクセスど真ん中系の本

まずは、カスタマーサクセスど真ん中の2冊から。 問答無用の必読書系。

「カスタマーサクセス」

カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則

カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則

 
【必読】
そもそも「カスタマーサクセス」という概念が日本で一般的になったのは、この本の翻訳版が2018年に出版されたことが大きいです。
カスタマーサクセス界隈では青本」と呼ばれ、2018年が「カスタマーサクセス元年」と呼ばれる、それくらい有名な本。なんとなく前提知識扱いされている気がします。
「10の原則」でまとめられているので、自分のビジネスに適用するときのチェックリストっぽく使えるのもポイント。
 

「カスタマーサクセスとは何か」

カスタマーサクセスとは何か――日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方」

カスタマーサクセスとは何か――日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方」

 
【必読】
青本」に対して「赤本」って呼ばれたりします、青本アメリカで書かれた本の翻訳なのに対して、「赤本」は日本で書かれた日本向けのカスタマーサクセス本です。
「〜とは何か」系の本って、抽象的なことも多いですが、この本は実務的に使える知見にあふれています。事例も日本だし。特に第2章の「カスタマーサクセスとはいったい何か」あたりは、実務的示唆にあふれ、参考になる部分多いのではないかと思います。
 

サブスクリプション

カスタマーサクセスの流行の背景には、サブスクリプション(月額課金)サービスの増加があります。
そのため、サブスクリプションそのものや、サブスクリプションサービスでのセールスプロセス一般について理解を深めておくと、カスタマーサクセスについてもより深い理解が可能になります。
 

 「THE MODEL」

【必読】
カスタマーサクセス自体を深掘りするのではなく、セールスやマーケといった周辺工程も含めた全体像を把握するならこの一冊。
SaaS界隈では前提知識扱いされちゃっていて、この本に書いてあること知らないと、他部署の人や他社の人と若干会話がしにくくなる気がします。
 

 「サブスクリプションマーケティング」「サブスクリプション

サブスクリプション・マーケティング――モノが売れない時代の顧客との関わり方

サブスクリプション・マーケティング――モノが売れない時代の顧客との関わり方

 
サブスクリプション――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル

サブスクリプション――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル

 

 

【おすすめ】
カスタマーサクセスの背景にあるサブスクリプションビジネスそのものについて理解を深めるならこの2冊。toCの事例とかもあって面白いです。
 「青本」の第1章のタイトルが「サブスクリプション津波」となっていることに象徴されるように、カスタマーサクセスを理解する上では、サブスクリプションビジネスとの連続で捉えることが非常に重要です。
 

各論や昔の本

 「CRMの基本」「CRM-顧客はそこにいる」

CRMの基本

CRMの基本

 
CRM―顧客はそこにいる (Best solution)

CRM―顧客はそこにいる (Best solution)

 
【おすすめ】
カスタマーサクセスという言葉が使われる前から、カスタマーサポート以外にも近い言葉で「CRMなんてものがあったわけです(今もありますが)。
そのCRMについて日本語で書かれた良書を2冊。
カスタマーサクセス関係者でも意外と読んでいない人が多い印象なのですが、
歴史を知り、その差分としてカスタマーサクセスを理解することで、より実務での応用に幅が出ると思います。
 

 「おもてなし幻想」

おもてなし幻想 デジタル時代の顧客満足と収益の関係

おもてなし幻想 デジタル時代の顧客満足と収益の関係

 

【おすすめ】

「カスタマーサクセスって手間かかるなぁ、どこまでやればいいんだろう」的な問題意識であればこの一冊。
何でもかんでもこちらでやることが顧客のためにもならない、という話がデータとともに紹介されています。
 

「 売上につながる『顧客ロイヤルティ戦略』入門」

売上につながる「顧客ロイヤルティ戦略」入門

売上につながる「顧客ロイヤルティ戦略」入門

 
【おすすめ】
「ロイヤルティ」とか「エンゲージメント」にフォーカスしたマーケティングの教科書。NPSやロイヤルティの段階について解説した良書。
カスタマーサクセスとは、つまるところロイヤルティだ 
↑は、「青本」の最初の方に出てくる一節ですが、カスタマーサクセスは、既存顧客に対して改めてロイヤルティを高めるマーケティングという側面が強くあり、その意味でも役に立つ1冊です。
 
 

リーン・スタートアップの方法論系書籍

カスタマーサクセスという組織がSaaSやスタートアップ界隈で導入されていることが多いのもあって、スタートアップの方法論を知っているとカスタマーサクセスに関する知見も応用が利くようになったりします。
(例えば、「青本」でも「プロダクト・マーケットフィット」という言葉を知っているのが前提となっているのですが、その辺は以下の本の知識が前提になっているということです)
 

 「リーン・スタートアップ」

リーン・スタートアップ

リーン・スタートアップ

 
【おすすめ】
検証による学びをベースにした、スタートアップの方法論の教科書。
翻訳版で2012年と古いですが、「当然読んでますよ」と言っておきたい一冊。 

 「Running Lean」「ビジネスモデル・ジェネレーション」「バリュー・プロポジション・デザイン」

Running Lean ―実践リーンスタートアップ (THE LEAN SERIES)

Running Lean ―実践リーンスタートアップ (THE LEAN SERIES)

 
ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書

ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書

 
バリュー・プロポジション・デザイン 顧客が欲しがる製品やサービスを創る

バリュー・プロポジション・デザイン 顧客が欲しがる製品やサービスを創る

 
【おすすめ】
「リーンキャンパス」関連の書籍を3冊。
顧客に提供する本質を凝縮して表現したもの、それがバリュー・プロポジションである。「本当のところ誰に何を売るのか」に対する答え、と言ってもよい。バリュー・プロポジションは戦略ストーリーの起点であるコンセプトを定義する。<中略>それだけにバリュー・プロポジションの決定は容易ではない。<中略>洗練されたバリュー・プロポジションへと磨き上げるツールがここにある。
↑「ストーリーとしての競争戦略」の楠先生が「バリュー・プロポジション・デザイン」に寄せたコメントが素敵。
 
「カスタマーサクセス」というコンセプト自体が「バリュープロポジション」「プロブレムソリューションフィット」「プロダクト・マーケットフィット」といった概念・思想を前提とし、深く関わっています。
 
この3冊あたりの知識押さえられていると、経営とカスタマーサクセスを本当につなげて語りやすくなる(そうあるべき)気がします。
 
 
今後、随時追加していきたいと思います。

経営企画という仕事の4つの役割

経営企画とか事業企画とか、それに近しい仕事を生業としているわけですが、
意外と、経営企画の仕事とか役割というのを他の人に説明するのは難しいです。
 
中の人からすると、経営企画という仕事には、実際以下の4つの役割があるんじゃないかなぁ、なんて思ったりします。
  1. 戦略・計画を立てる
  2. 戦略・計画の進捗を管理する
  3. 戦略・計画実現のための課題を優先付けし、ボトルネックを潰しに行く
  4. 事業運営に必要だけど誰も拾わないボールを拾う
 

経営企画という仕事の4つの役割

1.戦略・計画を立てる

一般的な経営企画・事業企画のイメージはこれだと思います。
 
会社レベルや事業レベルの戦略というのは、元々は社長ないし事業部長といったトップが立てるものですが、
組織が大きくなってくると、だんだんトップの手が回らなくなってきます。
一人でやろうとすると、時間が足りなかったりして精度が落ちてくる。
 
そこで、現状を分析し、計画を立案するために作られたのが経営企画です。
 

2.戦略・計画の進捗を管理する

戦略・計画を立てたら、進捗を管理しなくてはなりません。
「管理」というと堅苦しいですが、
例えば、進捗管理表を作ったり、報告のフォーマットを作ったり。
 
そういった進捗管理PDCAの仕組みを整えることで、計画を絵に描いた餅から現実へとつなげていく。
こういった機能を担う経営企画も多いはずです。
 
経営会議みたいなのを事務局で仕切っているのが経営企画ってことも多いですね。
経営企画は、戦略・計画の進捗を管理する。

3.戦略・計画実現のための課題を優先付けし、ボトルネックを潰しに行く

世の中的にあまり語られていないですが、結構重要な経営企画の役割として、
「戦略・計画実現に向けた課題を優先順位づけし、場合によってボトルネックを自ら潰しに行く
というのがあると思います。
 
例えば、
  • 戦略として新規事業の立ち上げが重要課題だけど、今事業部に実際やれる人間がいない
  • 戦略的に、人事制度再構築を課題としているが人事だけではなく事業部の観点を入れるプロマネが必要
  • V字回復のために、大胆なコストカットが必要
  • 社運をかけてM&Aをした子会社との一体的なマネジメントの確立
みたいな局面で、一番重要な課題に経営企画のメンバーやマネージャーが自らを投じて戦略を実現しに行く経営企画って、結構多い気がしています。
 
「戦略的重要課題を扱う」という意味では花形なのですが、
要は一番の死地に赴くので、実際の現場としてはとーっても辛くて泥臭いことが多いです。
 
しかも、経営企画のメンバー自身に経験があったりする領域が戦略的重要課題とは限らないので、苦戦することもしばしばです。
 
ただ、ハードな局面ゆえに、突破した時の高揚感は半端なく、
コンサルではなく事業会社の中で経営企画をやる醍醐味って実はここにあるんじゃないかな、と思います。
 
 

4.事業運営に必要だけど誰も拾わないボールを拾う

最後は、「事業運営に必要だけど誰も拾わないボールを拾う」です。
 
厳密には、3.の「戦略・計画に照らして一番のボトルネックを自ら潰しに行く」の一種とも言えますが
ちょっと戦略課題とは呼びにくいタイプの業務も経営企画には存在する気がするので、別立てにしました。
 
より具体的には2種類あって
  • 一時的に発生するアレコレ ←これは3.に限りなく近い
    • 外には言えないようなトラブル処理
    • 会社の存亡に関わるトラブル対応
    • 商号変更、上場
  • 専門部署がある会社もあるけど、ウチの会社にはないからやってるアレコレ
    • IR・PR
    • 財務
    • 全社会議の運営
とか。
こういうのも、事業会社の経営企画の業務として存在すると思います。
 
 

経営企画が生まれるとき

 
経営企画と呼ばれる組織の役割については、この本(↓)が本当に秀逸です。 
戦略参謀の仕事――プロフェッショナル人材になる79のアドバイス

戦略参謀の仕事――プロフェッショナル人材になる79のアドバイス

 

 この本(↑)の中で解説されているのですが、

経営企画の役割は「経営企画がなぜ生まれるか」という経緯に照らして考えるとわかりやすい。

  • 創業直後は、創業者が全てを一人でやる
  • 事業規模が大きくなり始めると、比較定義しやすい以下のような仕事が分業され始める
    • 営業や仕入れのような、体を動かす仕事
    • 経理のような、手を動かす仕事
  • さらに事業が大きくなってくると、頭を使う「企画」「管理」と呼ばれる業務が分業され始める
  • (以上の段階では全社レベルでの課題の優先順位づけや計画自体は創業者がやっているのですが)さらに組織が大きくなってくると、全社レベルでの課題の優先順位づけについても社長一人でやるには24時間では足りなくなる/精度が下がってくる。
    • そこで生まれるのが経営企画
という話です。
 
要は、経営企画というのは、常に「創業社長」の目線で物事を考えなくてはならない。
創業社長って事業が大きくなる過程で本当に色々なことをやって来ていると思うんですよね。
自分で営業もしたと思うし、トラブル対応も、資金調達も、戦略も・・・。
創業社長は、事業の当事者に他ならないので目的達成のためならなんでもやるのです。
 
経営企画が参謀たり得るには、ロジカルシンキングとか経営の知識とかも必要だとは思うのですが
どうせ(コンサルではなく)事業会社で経営企画をやるなら、社長と限りなく同じ目線・オーナーシップを持って
「火中の栗を拾いに行く」(上記の本の帯に書いてある言葉です)気持ちで
経営課題に取り組む姿勢こそが必要なんじゃないかなぁ、なんて思う次第です。
 
そんなわけで、事業会社で経営企画をやってる人・目指す人にはこの一冊とてもオススメです。 
戦略参謀の仕事――プロフェッショナル人材になる79のアドバイス

戦略参謀の仕事――プロフェッショナル人材になる79のアドバイス

 

 

こちらも(↓)ほぼ同じ内容ですが、小説風に書かれていて読みやすいです。比較的若い方とかはこちらの方がいいかも。

カスタマーサクセスに求められる3つの人材像 「肉食」「草食」「メガネ君」

カスタマーサクセスの人材像・能力が議論されている

SaaS界隈を中心に「カスタマーサクセス」という組織が日本でも定着してきました。
 
これに伴い「カスタマーサクセスに求められる人材像」「CSMに求められる能力」なんてのが議論されることが増えてきました。
 
例えば、この記事だとカスタマーサクセスマネージャーが持つべき12の能力とか。
この記事だと8つの能力とか。
 
より具体的に、後者の記事だと以下が掲げられています。
1. 分析思考(Analytical Awareness)
2. 積極性(Proactiveness)
3. 共感性(Empathy)
4. 粘り強さと情熱(Tenacity & Enthusiasm)
5. チームプレイ(Being a Team Player)
6. コミュニケーションスキル(Communication Skills)
7. 高度な専門性(Domain Expertise)
8. 戦略思考(Strategic Mindset) 

 「そりゃそうだけど、そんなヤツいねぇよ」と。

 
実際、カスタマーサクセスの人材像・能力というのは、まだ結構探り探りのフェーズなのかなと思います。
 
そんな中で、自分なりになるべくシンプルに考えると、
  • 草食
  • 肉食
  • メガネ君
という3種類の人材の組み合わせでチーム作るのがいいんじゃないかな、と思っています。
 
 

肉食

カスタマーサポートとカスタマーサクセスの違いで最も強調されるポイントの一つのはプロアクティブです。
すなわち、カスタマーサクセスは顧客を待っているだけでなく、自ら先手を打って顧客を成功に導くアクションが求められる。
特に、従量の概念やアップセル・クロスセルがある商材であれば、カスタマーサクセスにセールス要素が強く求められることは容易にご想像いただけると思います。
 
他方で、カスタマーサクセスの流行の流れの中で「元々あったサポート組織」を母体にカスタマーサクセス部隊を立ち上げるケースも少なくないと思います。
でも、元々サポートにいる人って、セールスでガツガツやりたいって人あんまりいなくないですか?
そういう人に「カスタマーサクセスじゃい!」「プロアクティブじゃい!」「LTV!」とか強制して、ガツガツさせようとしても、良さを失わせてしまう気がするのです。
 
だったら、プロアクティブの急先鋒として、セールスバックグラウンドの「肉食」系のキャラクターを配置したほうがいい。

草食

 
じゃあ、旧サポート系の草食系人材は要らないかというと、そんなことはない。
 
プロアクティブをどんなに強調しても、リアクティブなサポートを全くなくせる会社はそこまで多くない。しかも、それを全部botでやるのは難しい。
そんな背景で、カスタマーサクセスという組織名でありながらも、リアクティブなサポート機能を残している組織は多いはずです。
 
で、セールス出身のバリバリ肉食系は、リアクティブ機能を意外とできない。
飽きちゃうと思うし、安定して高品質を出せない、というかそもそもやりたくないと思う。
 
そういったわけで、守りを固めるための人材として、現状としてこれまでのサポート機能にいたような「草食系」も、これまたカスタマーサクセスには必要。
 

メガネ君

 
上記の通りの「肉食」と「草食」だけを揃えると何が起こるか・・・
 
とっ散らかる。
 
容易に想像できます。
 
KPIや方針・オペレーションを統制する人は必要だし、カスタマーサクセスは、ヘルススコアはじめとしたハードデータに基づくべきであることは、カスタマーサクセスの教科書「青本」その他各所で強調されているところです。
 
「肉食」「草食」はデータ分析が苦手な人が多いですし、
逆にこのメガネ君はセールスやサポートが得意とは限らないです。
 
そういうわけで、データ志向・戦略志向のために、カスタマーサクセスには、戦略性やデータ分析に長けた「メガネ君」が求められます。
 
 

カスタマーサクセスの人材要件まとめ

以上のような思考回路で、
  • 肉食
  • 草食
  • メガネ君
という3つのキャラクターのバランスを見ながら配置することが、カスタマーサクセス組織における人材マネジメントとしてポイントになるんじゃないか、と考えているわけです。
 
この3つの側面を一人称で満たせればいいのかもしれませんが、そんな人簡単に採れない。
なので組み合わせを考える必要がある。
 
もちろん、実際の人材は複雑で、純粋な「肉食」「草食」「メガネ君」もいない。「肉食寄りのメガネ君」みたいな。
でも考える観点としては、
超シンプルに「肉食」「草食」「メガネ君」という観点で、配置や採用、分担を考えることで、カスタマーサクセスの組織運営がしやすくなるんじゃないかなぁ、と思っている次第です。

「既知」と「未知」を区別する

ロジカルシンキングや問題解決、プレゼンテーションの良書は数多あるのですが、MECEとかツリー構造とかに偏っていて、
意外と一般的に認識されていない重要なポイントが一つあると思っています。
 
それは「既知と未知」を区別すること。
 
これは後述するように、アカデミックな世界やビジネスの現場でとても大切なのですが、
特に、いわゆる文系の人で、この能力が身についていないケースが多くみられます。
 
ビジネスの現場で、出くわす
  • セミナー出てみたけど、超つまんない
  • エライ人への説明で、序盤の反応が悪い / 最後まで聞いてくれない
  • 頑張って分析したExcel、グラフも綺麗でロジカルなのに全然刺さらない
こんな現象たちは、「既知と未知の分類」を正しく行うことで、結構な確率で回避ができます。
 
 

既知と未知とは

定義するまでもないですが、
既知:相手ないし世間が、すでに知っている事項
未知:相手ないし世間が、まだ知らない事項
ということです。
 

研究論文の基本的お作法

「既知」と「未知」というのは、大学などで学術研究の教育を受けていると、割と普通に使いこなされる概念です。
というのも、研究論文のお作法として、以下のような形で始まるのが一般的だからです。
  • XXXという課題は、〜〜〜という理由でとっても重要。
  • 重要なので、先人の研究はたくさんある。例えば、■■博士による<論文名>はXXXについて〜〜〜を明らかにし、▲▲博士による<論文名>はXXXについて〜〜〜を明らかにし、・・・・という感じである。 ←「既知」の定義
  • しかし、「YYYの場合にXXXがどうなるか」は、結構重要なのにまだ研究されていない。 ←「未知」の定義
  • そこで、「YYYの場合にXXXがどうなるか」を、ZZZという手法で検証した。
 
こんな感じで、研究論文を書くときは(「世の中で一番詳しい人」を前提に)、「既知と未知」を切り分けるという作業が最初に来ます。
 

ビジネスに使える「既知と未知」の具体例

この「既知と未知」の切り分けは、ビジネスの現場でも結構使えます。
 

セミナーでの「既知と未知」

特にわかりやすいのが、セミナーです。
 
「ものすごくつまらない」「得るものがほとんどない」ビジネスセミナーって正直ありますよね。
 
つまらないセミナーは 
「伝えるメッセージ自体が、聴講者にとって既知」 
という次元での間違えを犯していることが多い、というのが私の見立てです。
 
例えば、介護業界の経営者を集めたセミナーで
  • 介護業界では人材が不足していて、大変な課題です。
  • この新聞記事でも、介護業界で人材が不足していると書いてあります。
  • この厚労省のデータでも、介護業界の人材不足がわかります。
  • アンケートでも、介護業界の人材不足が叫ばれています。
  • ・・・
 
と、「介護業界は人材不足」という日本人の8割が知ってるようなメッセージを、いろいろなデータや事例を交えて15分とか説明しちゃう
 
だから「そんなん知ってるわ。解決策を聞きに来とるんや!」
となっちゃう。
 
そうじゃない。
セミナーは聞き手にとっての「未知」をくすぐらなくてはいけない。
 
例えば、以下のようなストーリーなら成立するはず。
  • 介護の人材不足は、周知の事実です。(さらっと) ←既知の定義
  • でも、周りにうまく採用できてる法人もありません?そういうとこがどうやってるのか、知りたいですよね? ←聞き手にとって未知かつ重要な事項の定義
  • 実は、私が全国1,000社を支援する中で、採用で成功しやすい法人の特徴がわかってきました。その方法論を今日はご紹介します。
とか
  • 介護業界で人が集まらないのは超前提ですが、その理由は低賃金だと思ってません?
  • でも、うちが運営する求人媒体のデータ分析したら、ぶっちゃけ賃金があんまり関係ない可能性が出てきました。 ←聞き手にとって既知だと思っていたことが実は嘘だと否定する
  • じゃ、賃金じゃなくて何が具体的に影響しているのか、データを使って説明します。 ←新たな未知の定義。
とか
  • 採用活動のステップは、一般的に①〜〜、②〜〜、③〜〜、と進みます。これは知ってますよね? ←既知の定義
  • じゃ、②のステップでXXXをやってる人ってどれだけいます?いないですよね?実はこれが大切なんです。 ←意表を突く未知の定義
  • なぜそれが重要なのか、具体的にどうすればいいのか、これから説明します。
とか。
面白いセミナーはすべからく、結果としてちゃんと聴衆の「未知」をくすぐっているのです。
 
 
エライ人向けの説明とかでも同じです。
「そのエライ人」にとって、既知の事項に時間を割くと嫌われる。
ロジカルかつ綺麗なグラフで既知の事項を説明されても、全然価値を感じない。
「未知」=新しい何か、を提供しないといけない。
 
多くの人が関与するプロジェクトのプロマネとかでも、それぞれの人にとっての既知と未知を整理してあげることで、結構取り組むべきイシューが明確になったりする。
 

実は名著の中では触れられている

そんなこんなで、「既知と未知」の区別が大切だと思うのですが、
「既知と未知」の話は、実はロジカルシンキングの名著の中では触れられています。
 
超名著 イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」 では、イシューの定義で「常識に反する」というのがあるのですが、これも「既知と未知」の話のうち、「既知と思われているものを否定する」ということだと思うんです。
そして、これまた超名著 思考の整理学 (ちくま文庫)では「既知と未知」ってタイトルの章があったりする。
 
ツリー構造とかMECEとかも重要なんですが、それ以前に「既知と未知の分類」大切。
そこを押さえないでグラフやパワポを綺麗にしても、さらにいうと問題の分析しても意味ないと思うのです。
 
ということで、以下2冊は手元に置いておいて読み返したいものです。

 

イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」

イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」

 
思考の整理学 (ちくま文庫)

思考の整理学 (ちくま文庫)

 

 

 

誰でもできるMECEのコツ :ロジックツリーの分岐を全部2つにする

コンサル時代、先輩に言われた教えの中で一番トンデモナイと思ったことの一つに
 
「ロジックツリーの分岐を、全部2つにしろ」
 
というものがあります。
 
トンデモナイ教えです。
 
でも、一応の正義はある教えなのです。
MECEかどうか自分でわからない」って人にオススメの発想です。
 
 

一番簡単にMECEにする方法

世の中の現象を、一番簡単にMECEに分類する方法があります。
 
それは、「AとA以外」に分けることです。
 
盲点だけど、当たり前すぎる話。
 

分岐を2つにすると、「AとA以外」になる

で、人間MECEを意識してロジックツリーの分岐を2つにすると
結局「AとA以外」になるのです。
 
実際、ちゃんとしたロジックツリーは、この「AとA以外」の2つの分岐に置き直すことができます。
本当に「AとA以外」でロジックツリーを作っちゃうと、階層が多くなりすぎてとても見られたもんじゃないのですが。
 

「AとA以外」は確認のための発想

冒頭のアドバイスをくれた先輩は、アホな新人達のロジックツリーもどきを見て
 
「ああ、こいつらもうダメだ」
 
と思ったのでしょう。だから
 
「(お前らアホは)ロジックツリーの分岐を、全部2つにしろ!」
 
と言い放ったのだと、私は解釈しています。
 
今考えてもトンデモナイ一言だと思いますが、全く正義がないわけでもないってのが面白い一言だと思っています。
 
実際、自分のロジックツリーに「漏れやダブりはないか」と確認する工程って、
「AとA以外」に分けて考えている気がするのですよね。
(ま、ホントは「AとA以外」で分けるのか「BとB以外」なのか、それともAとBを複合的に考えるのか、みたいなところの方がずっと難しいし、重要なのだと思うのですが。超入門編の内容として。)
 
 
 
そんなこんなで10年以上前に言われた「ロジックツリーの分岐は全部2つにしろ!」という先輩の暴言は、確認のための視点として、今も私の中で生き続けています。

タフな状況下でオンボーディングに向き合い続けられるか

カスタマーサクセスという言葉は、SaaS界隈では一般的なものとなりました。
SaaS界隈以外でも、「カスタマーサクセス」をお題目として唱える企業は増えたと思います。
 
そんな中で、どれだけ本気でかつ健全にカスタマーサクセスに取り組んでいるかの試金石の一つが
「オンボーディングにどれだけ投資しているか」、特に「タフな状況下でオンボーディングに向き合い続けられるか」だと思います。
 

オンボーディングとは

オンボーディングとは、契約初期の顧客をサービスが利用できる状態/サクセスした状態まで持っていく一連のプロセスを指します。
 
由来としては、
元々「船や飛行機に乗る」という意味だった「オンボーディング」という言葉が、
新入社員研修に転じて使われるようになり、
さらにカスタマーサクセスに転用されて、上記のような意味合いになったようです。
 

「オンボーディングが重要」は共通認識

「オンボーディング」は、カスタマーサクセスにおける重要概念の一つとして認識されています。
 
なぜ、オンボーディングが重要なのか?
 
それはチャーン(解約)を防ぎ、その後のネガティブチャーン(アップセル・クロスセル)の種となるからです。
例えば、業務システムで最初の導入がスムーズに行った方が辞めにくいしアップセルもしやすいというのは、想像に難くないかと思います。
 
カスタマーサクセスの教科書として知られる通称「青本」でも、
その第7原則として「タイムトゥバリューの向上にとことん取り組もう」と、
オンボーディングの重要性を説いています。
 
カスタマーサクセスという名の組織であれば、何かしらのオンボーディング機能は当然持っているはずかと思います。
 

なのに、注力度合いはちょっと差が出る

 
ただ、オンボーディングにどれだけ投資ができているか/こだわっているかは、会社によって結構違う気がします。
 
単にハイタッチ/ロータッチ/テックタッチという違いの話ではなく、
「どれだけオンボーディングに真剣に向き合っているか」というのが、会社によって違う気がするのです。
 
皆、最初は「オンボーディングが大切」と言うのです。
 
でも例えば、
  • 契約数が目標にちょっと届かない
  • クロスセル商材が生まれた
  • 大口顧客が解約になりそう
  • 一度うまく行ったオンボーディングプロセスが、ビジネス拡大などの事情でうまく成立しなくなってきた
みたいなとき、最初と同じ質と量のリソースを投入してオンボーディングに取り組み続けられる会社というのは、意外に多くない気がしています。
 
もっと具体的に言うと「今期の売上足りないから、CSMがオンボーディングの優先順位下げて、クロスセルばっかりしてる」みたいなこと、一定成熟した企業だったらある気がします。
 
こういうことが発生する理由はたぶん単純で、オンボーディングは売上に効くまでのリードタイムが長いから。
例えば、一年契約のビジネスやってたら、オンボーディング失敗しても痛い目を見るのは最短で一年後です。しかもそれまでにリカバリのチャンスはあります。
 
今この瞬間オンボーディングがうまくいかなくても、売上や契約数が動き始めるまではタイムラグがある。
だからこそ、オンボーディングが後回しになってしまう瞬間、あると思います。 
 

タフな状況下でオンボーディングに向き合い続けられるか

 
成長企業は(特に外部の資本入れていると)、成長への強烈なプレッシャーと戦っています。
なので、短期的に成果が出る施策に注力がされることを、一概に悪というつもりは全くありません。
 
ただ、例えば
  • 「青臭いカスタマーサクセスをやれているか」
  • 「中長期的に重要なことをちゃんとやれているか」
みたいな観点でどれだけ本気で取り組んでいるかを見る時、
オンボーディングという時間がかかる取り組みにどれだけ向き合えているかというのは一つの試金石になる気がします。

 

コンサルからベンチャーに行って苦労したこと :気持ち悪くても走る

コンサルからスタートアップ・ベンチャーに転職して活躍している人はたくさんいますが、他方でうまくフィットできずに苦しむ方もいます。
 
その違いを生む要素はたくさんありますが、その一つが「気持ち悪くても走る」だと思います。
 

コンサルは、間違えないやつが偉い

「極論すると、あなたは客前で絶対間違えるなと言われて育ってきたと思う。そのために、スライド一枚にも猛烈なプロ意識を持って取り組んできたはずだ。それをウチに入ったら捨ててほしい。
自分がコンサルからメガベンチャーに転職したときに、役員からこんな(↑)趣旨のことを言われました。
 
確かにコンサルって、ジュニアでも客先で何を言うかどう振る舞うか、要はどうバリュー出すかに必死で、客先に出すものに一点の隙も残さない(ように努力する)ものな気がします。
そのために、スライド一枚にしても超こだわる。
 
以上の意味で、コンサルは間違えない奴がえらい。
 
 

ベンチャーでは、早く間違えた奴が偉い

他方で、ベンチャーは違う。
リーンスタートアップとかの方法論で知られるように、大枠を固めたら、素早く走り出してトライ&エラーを繰り返していくことが求められる。不確実性が高いから。そのほうが結果としてスピードが出るから。
 
メガベンチャーとか呼ぼれる規模になっても大体一緒で、「早く間違えた奴が偉い」という世界に生きてる。
 

頭でわかっても、心と体が追いつかなかった

「早く間違える」ってただの仮設検証の一つだし、コンサル出身者ができないはずないんです。 
 
でも、私はここのアジャストに時間がかかりました。
頭でわかってても、心と体が追いつかなかった。
 
例えば、何かの施策打つとき、粗が見える。
  • 「仮にこのマーケティング施策がヒットして、100件申し込み来たら経理処理が破綻するな。とすると申し込みを制限するオペレーションとして、、、」
  • 「この論点とこの論点の答え出てないな」
とか。実際は100件申し込みくるかなんてわからないし、一度やってみると論点だと思っていたものは実は論点じゃなかったなんてことがよくあります。
もちろん、得意のロジカルシンキングで一つ一つ潰していくことも可能なのですが、不確実性が高く人手も足りないベンチャーにおいて全部潰していくと、コンサルの中でも特に処理能力が高い人間じゃないと求められるスピードに追いつかない。
 
私は論点を全部潰してやろうとして時間をかけすぎたり、
逆に変に「スピード感出すぞ」って雑にやりすぎて全然成果出なかったりしました(リーンだって、極端に雑にやったら成果でない)。
この辺の「いい塩梅」を身につけるまでとても時間がかかりました
 
「コンサルがスタートアップ・ベンチャーにいくと、アンラーニングすべきスキルがある」って話は、もはやよく知られた話です。
 
その中でも、個人的にはこういう「プロフェッショナルとしての心構え」と紐づいた領域が、特にアンラーニング難しいんじゃないかなーと思ってます。
頭というより心と体に染みついているから。
 
でも繰り返しますが、「早く間違える」ってただの仮設検証の一つだし、コンサル出身者ができないはずない。そう思ってます。
ちょっと時間がかかるだけで。 
 

 

 

リーン・スタートアップ

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