B-log

コンサル→ベンチャー。ビジネス系のネタ。

誰でもできるMECEのコツ :ロジックツリーの分岐を全部2つにする

コンサル時代、先輩に言われた教えの中で一番トンデモナイと思ったことの一つに
 
「ロジックツリーの分岐を、全部2つにしろ」
 
というものがあります。
 
トンデモナイ教えです。
 
でも、一応の正義はある教えなのです。
MECEかどうか自分でわからない」って人にオススメの発想です。
 
 

一番簡単にMECEにする方法

世の中の現象を、一番簡単にMECEに分類する方法があります。
 
それは、「AとA以外」に分けることです。
 
盲点だけど、当たり前すぎる話。
 

分岐を2つにすると、「AとA以外」になる

で、人間MECEを意識してロジックツリーの分岐を2つにすると
結局「AとA以外」になるのです。
 
実際、ちゃんとしたロジックツリーは、この「AとA以外」の2つの分岐に置き直すことができます。
本当に「AとA以外」でロジックツリーを作っちゃうと、階層が多くなりすぎてとても見られたもんじゃないのですが。
 

「AとA以外」は確認のための発想

冒頭のアドバイスをくれた先輩は、アホな新人達のロジックツリーもどきを見て
 
「ああ、こいつらもうダメだ」
 
と思ったのでしょう。だから
 
「(お前らアホは)ロジックツリーの分岐を、全部2つにしろ!」
 
と言い放ったのだと、私は解釈しています。
 
今考えてもトンデモナイ一言だと思いますが、全く正義がないわけでもないってのが面白い一言だと思っています。
 
実際、自分のロジックツリーに「漏れやダブりはないか」と確認する工程って、
「AとA以外」に分けて考えている気がするのですよね。
(ま、ホントは「AとA以外」で分けるのか「BとB以外」なのか、それともAとBを複合的に考えるのか、みたいなところの方がずっと難しいし、重要なのだと思うのですが。超入門編の内容として。)
 
 
 
そんなこんなで10年以上前に言われた「ロジックツリーの分岐は全部2つにしろ!」という先輩の暴言は、確認のための視点として、今も私の中で生き続けています。

タフな状況下でオンボーディングに向き合い続けられるか

カスタマーサクセスという言葉は、SaaS界隈では一般的なものとなりました。
SaaS界隈以外でも、「カスタマーサクセス」をお題目として唱える企業は増えたと思います。
 
そんな中で、どれだけ本気でかつ健全にカスタマーサクセスに取り組んでいるかの試金石の一つが
「オンボーディングにどれだけ投資しているか」、特に「タフな状況下でオンボーディングに向き合い続けられるか」だと思います。
 

オンボーディングとは

オンボーディングとは、契約初期の顧客をサービスが利用できる状態/サクセスした状態まで持っていく一連のプロセスを指します。
 
由来としては、
元々「船や飛行機に乗る」という意味だった「オンボーディング」という言葉が、
新入社員研修に転じて使われるようになり、
さらにカスタマーサクセスに転用されて、上記のような意味合いになったようです。
 

「オンボーディングが重要」は共通認識

「オンボーディング」は、カスタマーサクセスにおける重要概念の一つとして認識されています。
 
なぜ、オンボーディングが重要なのか?
 
それはチャーン(解約)を防ぎ、その後のネガティブチャーン(アップセル・クロスセル)の種となるからです。
例えば、業務システムで最初の導入がスムーズに行った方が辞めにくいしアップセルもしやすいというのは、想像に難くないかと思います。
 
カスタマーサクセスの教科書として知られる通称「青本」でも、
その第7原則として「タイムトゥバリューの向上にとことん取り組もう」と、
オンボーディングの重要性を説いています。
 
カスタマーサクセスという名の組織であれば、何かしらのオンボーディング機能は当然持っているはずかと思います。
 

なのに、注力度合いはちょっと差が出る

 
ただ、オンボーディングにどれだけ投資ができているか/こだわっているかは、会社によって結構違う気がします。
 
単にハイタッチ/ロータッチ/テックタッチという違いの話ではなく、
「どれだけオンボーディングに真剣に向き合っているか」というのが、会社によって違う気がするのです。
 
皆、最初は「オンボーディングが大切」と言うのです。
 
でも例えば、
  • 契約数が目標にちょっと届かない
  • クロスセル商材が生まれた
  • 大口顧客が解約になりそう
  • 一度うまく行ったオンボーディングプロセスが、ビジネス拡大などの事情でうまく成立しなくなってきた
みたいなとき、最初と同じ質と量のリソースを投入してオンボーディングに取り組み続けられる会社というのは、意外に多くない気がしています。
 
この理由はたぶん単純で、オンボーディングは売上に効くまでのリードタイムが長いから。
例えば、一年契約のビジネスやってたら、オンボーディング失敗しても痛い目を見るのは最短で一年後です。しかもそれまでにリカバリのチャンスはあります。
 
今この瞬間オンボーディングがうまくいかなくても、売上や契約数が動き始めるまではタイムラグがある。
だからこそ、オンボーディングが後回しになってしまう瞬間、あると思います。
 
 

タフな状況下でオンボーディングに向き合い続けられるか

 
成長企業は(特に外部の資本入れていると)、成長への強烈なプレッシャーと戦っています。
なので、短期的に成果が出る施策に注力がされることを一概に悪というつもりは全くありません。
 
ただ、例えば
  • 「青臭いカスタマーサクセスをやれているか」
  • 「中長期的に重要なことをちゃんとやれているか」
みたいな観点でどれだけ本気で取り組んでいるかを見る時、
オンボーディングという時間がかかる取り組みにどれだけ向き合えているかというのは一つの試金石になる気がします。

 

f-bun.hatenablog.com

 

 

カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則

カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則

 

 

コンサルからベンチャーに行って苦労したこと :気持ち悪くても走る

コンサルからスタートアップ・ベンチャーに転職して活躍している人はたくさんいますが、他方でうまくフィットできずに苦しむ方もいます。
 
その違いを生む要素はたくさんありますが、その一つが「気持ち悪くても走る」だと思います。
 

コンサルは、間違えないやつが偉い

「極論すると、あなたは客前で絶対間違えるなと言われて育ってきたと思う。そのために、スライド一枚にも猛烈なプロ意識を持って取り組んできたはずだ。それをウチに入ったら捨ててほしい。
自分がコンサルからメガベンチャーに転職したときに、役員からこんな(↑)趣旨のことを言われました。
 
確かにコンサルって、ジュニアでも客先で何を言うかどう振る舞うか、要はどうバリュー出すかに必死で、客先に出すものに一点の隙も残さない(ように努力する)ものな気がします。
そのために、スライド一枚にしても超こだわる。
 
以上の意味で、コンサルは間違えない奴がえらい。
 
 

ベンチャーでは、早く間違えた奴が偉い

他方で、ベンチャーは違う。
リーンスタートアップとかの方法論で知られるように、大枠を固めたら、素早く走り出してトライ&エラーを繰り返していくことが求められる。不確実性が高いから。そのほうが結果としてスピードが出るから。
 
メガベンチャーとか呼ぼれる規模になっても大体一緒で、「早く間違えた奴が偉い」という世界に生きてる。
 

頭でわかっても、心と体が追いつかなかった

「早く間違える」ってただの仮設検証の一つだし、コンサル出身者ができないはずないんです。 
 
でも、私はここのアジャストに時間がかかりました。
頭でわかってても、心と体が追いつかなかった。
 
例えば、何かの施策打つとき、粗が見える。
  • 「仮にこれで100件申し込み来たら経理処理が破綻するな。とすると申し込みを制限するオペレーションとして、、、」
  • 「この論点とこの論点の答え出てないな」
とか。実際は100件申し込みくるかなんてわからないし、一度やってみると論点だと思っていたものは実は論点じゃなかったなんてことがよくあります。
もちろん、得意のロジカルシンキングで一つ一つ潰していくことも可能なのですが、不確実性が高く人手も足りないベンチャーにおいて全部潰していくと、コンサルの中でも特に処理能力が高い人間じゃないと求められるスピードに追いつかない。
 
私は論点を全部潰してやろうとして時間をかけすぎたり、
逆に変に「スピード感出すぞ」って雑にやりすぎて全然成果出なかったりしました(リーンだって、極端に雑にやったら成果でない)。
この辺の「いい塩梅」を身につけるまでとても時間がかかりました。
 
「コンサルがスタートアップ・ベンチャーにいくと、アンラーニングすべきスキルがある」って話は、もはやよく知られた話です。
 
その中でも、個人的にはこういう「プロフェッショナルとしての心構え」に近い領域が、特にアンラーニング難しいんじゃないかなーと思ってます。
頭というより心と体に染みついているから。
 
でも繰り返しますが、「早く間違える」ってただの仮設検証の一つだし、コンサル出身者ができないはずない。そう思ってます。
ちょっと時間がかかるだけで。 
 

 

 

リーン・スタートアップ

リーン・スタートアップ

 

 

「ロジカルな解決策が動かない」はロジカルじゃない

 
コンサル出身者の端くれで、今は事業会社で働いていることもあり、コンサルから事業会社に転職したての人から
 
「ロジカルに出した正しい結論なのに、現場が全然動かない。」
 
みたいなことを、言われることがあります。
 
セットで「現場はロジックじゃ動かないからねぇ」みたいな言説がついてくることが多いです。
いつも、適当なこと言ってお茶を濁すのですが、個人的には「ちょっと違うんじゃないかなぁ」と思っています。
 
端的に言うと「ロジカルな解決策が動かない」という話自体が、結果論としてロジカルじゃない気がしています。
 
とても面倒臭く、わかりにくい話をします。
 

「ロジカル」「論理的」 の定義

そもそも「論理的」とは、シンプルに定義すると
  • 原因と結果、もしくは結論と理由の関係において
  • 抜け漏れなく(できればダブりもなく)
  • その繋がりを確からしく説明すること
ということです。
 

「動かない解決策」は、結果論としてロジカルじゃない。

「ロジカルに出した正しい結論なのに、現場が全然動かない。」
は、以下の意味でロジカルじゃないと思っています。
 

「実行できる」の論証が必要

まず、ビジネス実務においては、与えられている問いが「『実行できる』〇〇の解決策を探せ。」と、実行可能性を前提にしています。
 
とすると、実行できない(理論上は可能でも、実務上の実行を担保されていない)解決策は、問いに対する答えの要件を満たせていない、というのが私の考えです。
 
(「実行の実務的担保は、コンサルや経営企画の仕事じゃない。」という主張は、確かに傾聴に値します。でも、究極の究極、実行されないと、そのビジネス全体の価値提供先に対してはバリューにならない。てか、一円も儲からないもん。よって「実行可能性は前提」というのが私の「価値観」です)
 
というわけで、「ロジカルな解決策」であるためには、「実行できる」という結論に対する理由を説得的に示す必要があります。
 
(ま、こんなまどろこしい説明せずとも経営企画室やコンサルのアウトプットで質の高いものは、できるかできないがギリギリの線を突きつつも、「できそう!やってみたい!」となるようなワクワク感とか仕組みがセットになっていますよね。)
 

でも「実行できる」の論証は難しい

「実行できる」を論証するには、「すべき」を説得的に示す必要があることが多い
かくして、ビジネスの解決策を示すには「実行できる」の論証が必要です。
しかし、「実行できる」の論証は難しい。
なぜなら、現場(ここではミドルマネージャーくらいまで含む)に対して「これをすべき」を説得的に示す必要があるからです。
 
この「すべき」が曲者です。
 
ちょっと面倒くさい話をします。
 
「すべき」の論証はとても難しい
そもそも命題には2つ種類があります。
  • sein命題(「である」の命題)
  • sollen命題(「すべき」の命題)
seinとsollenはドイツ語で、英語に直すと"be"と"should"です。
 
そして、重要な話として「すべき」命題は、どんなに事実(「である」命題)を積み上げても、超厳密には論証できない。
 
わかりやすく言うと
「この店のカツカレーよりサラダの方が、カロリーが低い」は、論証できるけど
「ランチにはサラダを食べるべき」は、どんなに事実を積み上げても、厳密には論証できない。
 
「ランチにはサラダを食べるべき」を論証するには、
「カロリー摂取は控えるべき」「痩せるべき」とかいう、「すべき」命題をまた前提にしなきゃいけないんだけど
今度はその「痩せるべき」を論証するために・・の無限ループで絶対に論証できない。
 
「いや、俺不健康でもうまいもん食って死にたい」と言われたら終わり。
 
ロジックじゃなくて、意志の力によってしか打破されない。
価値論争、神学論争、比較不能な価値の迷路に陥るわけです。
 
というわけで、「すべき」命題は、厳密には論証不可能です。
 
実務として「すべき」を説得的に示すことは可能だけど、ベースとなる個人の判断軸は複雑
とはいえ、実務的なレベルにおいて「すべき」命題を説得的に示すことは可能です。
「すべき」の前提となる「判断軸」や「価値観」を、関係者にとって受け入れられる形で定義(≠論証)することが必要です。
 
例えば、「痩せた方がいい」が、受け手の主観において異論なければ、
「ランチにはサラダを食べるべき」は説得的に示せる。
 
ただし、個人が何かする/しないの判断軸は、会社の何かする/しないの判断軸と厳密に重なることはありません。
さらに、その判断軸は、マトリックスで判断できるような二次元じゃなくてはなく、かつイチゼロのデジタルな判断でもない。
ものすごく多層構造・多次元での総合考慮が行われています。
 
例えば、
「痩せてモテたいけど、美味しいものは食べたい。あ、あとお金はあんまりかけたくなくて、会社から遠くないところがいい。ついでに、本当はランチくらいのんびりできるところで食べたいなぁ。贅沢を言うと、昨日肉たくさん食べたから肉は避けたいな。全部程度問題だから、どれを何割重視するとかはないんだけど・・。」
みたいな。笑
 
それを、
  • こうすれば会社が儲かる(あるいは評価制度がこうなっている)。
  • 使用人は会社が儲かる方向(あるいは評価制度に)従うべき。
  • そして、それは実際に可能である。
  • だから、使用人であるお前はこうすべき。
と短絡的なロジックで説得しようとするから、うまくいかないのです。
 
 
 

短絡的なロジックへの反論の具体例

  • こうすれば会社が儲かる(あるいは評価制度がこうなっている)。
  • 使用人は会社が儲かる方向(あるいは評価制度に)従うべき。
  • そして、それは実際に可能である。
  • だから、使用人であるお前はこうすべき。
という短絡的なロジックで説得しようとした時に、具体的に現場からよくある反論を考えたいと思います。
 
「こうすれば儲かる」「実現可能」に対する反論
まず
  • こうすれば会社が儲かる
  • そして、それは実際に可能である。
に対しては、現場ならではの視点での反論があると思います。
 
例えば、「(お前は知らないかもしれないけど)実際現場はこんな感じになってるから、実行できないし、かえって損するよ」的な。
これは、解決策のロジックのMECEさに対する反論に他なりません。
ゆえに、丁寧に耳を傾けた上で、解決策のロジックに、現場の視点を内包していけばいいだけです。既に内包していれば、それを丁寧に説明すればいいだけです。
 
ただし、ここで注意すべき点があります。
それは、現場が丁寧に説明してくれるとは限らないので、しっかりと耳を傾けなくてはならないということ。
なのに、それに耳も傾けずに表層的な言葉尻だけで
「(私が考えた結論を拙い言葉で反論してくるなんて)ロジカルじゃない」と否定してしまうのは、以ての外です。
そして、こういうケースが意外と多いと思います。
 
「会社が儲かるからやるべき」に対する反論
  • 使用人は会社が儲かる方向(あるいは評価制度に)従うべき。
への現場からの反論はちょっと複雑です。
 
なぜなら
  • 個人が何かする/しないの判断軸は、会社の何かする/しないの判断軸と厳密に重なることはない。
  • だけど、表立って会社の判断基準と違う判断基準を主張しにくい
  • しかもその判断軸は、マトリックスで判断できるような二次元じゃなくて、ものすごく多層構造・多次元での判断が行われている。
という3点から、正面切ってキレイに言語化された反論になることは少ないからです。
 
その結果として、本当は単に「やりたくない」場合でも、
表面的には「うまくいくわけない」みたいな形で反論として出てくることが多いです。
 
例えば、
(俺もサラリーマンだし会社が儲かる方向に動かなくちゃいけないのはわかる。でも、正直これをやると部下のXXは反対しそうだなぁ。あいつとはいい関係を保ち続けたいんだよな。あと、子供も小さいから俺も早く帰りたいしなぁ。とはいえ、そんなの部長に言うのもアレだしなぁ。やりたくないなぁ・・。報告書のデータ、正直細かくてよく理解できてないんだよなぁ、、。てか、今回の施策ってよく考えたら2年前に失敗したアレに似てない?そうだな、うん、似てる気がする。まぁ、今回の方が緻密に練られてるのは間違えないけど)2年前にやった施策と同じです。コンサルに2千万も払って。そんなんじゃ儲からないと思います。
みたいな。
 
 
これを言葉通り受け取って、カッコ内の思考に思いを巡らせず、「根拠がない、ロジカルじゃない」と断罪してしまうというのも、私は正しくないと思います。
この辺の「深み」を理解しないと、現場は説得できないのです。
 
(もちろん、こういう面倒臭いこと言わなくても動く現場はたくさんあるわけで、そういう方々は素敵だと思うのです)
 

翻って「ロジカルな解決策が動かない」は・・

以上を踏まえ、悪意溢れる補足をしながら「ロジカルな解決策が動かない」を言い換えると
  • (会社の判断軸をベースにした)ロジックで(すべき命題が原理的に論証不可能という自覚さえないまま)
  • (今自分が言語化できている情報の範囲では、確からしいというレベルにおいて)正しい結論を出しているのに、
  • 現場が全然動かない。(私が考えられなかった切り口や、個人の判断軸については預かり知らないもん!)
ということだと思います。
 
それは、お前が見えている範囲でロジカルに見えるだけで、お前が見ている範囲は世界の表層だよ、と。
 
 

じゃ、どうすんねん

結局「ロジカルな解決策が動かない」は、
「形式的には」ロジカルに見えるかもしれないが、「中身的には」他の可能性の考慮にモレがあったり、因果関係が弱かったりすることがほとんどです。
特に、現場の意思決定の構造や、現場で起きる複雑怪奇な事象を変数として考慮しきれていないことが多い。
 
それに対して、現場の事実や価値観を可能な限り一つ一つ吸い上げて、
一つ一つを変に切り捨てず、立体的な思考をすることで、「ロジカルな解決策が動かない」は相当な確率で回避できると思います。程度問題ですが。
 
そして最後は、「できそう!やってみたい!」と、それぞれの判断軸や価値観に沿った素敵なビジョンとして提示していくと、さらにうまく回るイメージがあります。
他にも、事業会社の中にいるなら「俺はやる!お前はどうする?」と、自分が先にコミットしちゃうことで相手の意思決定に強烈な軸を作りに行くとか(あんまりやると嫌われる)、色々なやり方もありますよね。
 
いずれにせよ、こういう複雑怪奇な意思決定に対して「ロジカルじゃない」と切り捨てるのではなく、「私のロジックが至らなかった」と反省的に考える姿勢が、実務を前に進めるためには求められると思うのです。

「値上げ」とカスタマーサクセス :LTV向上の一番シンプルな方法

 
カスタマーサクセス(Customer Success)とは、主に月額課金系のビジネスで、顧客を成功に導く一連の活動や組織を指します。
IT・Web界隈(月額課金(サブスクリプション)が多い)で、ここ数年よく使われる概念です。なんとなく、ここ1-2年で、WebやIT系の人にとっては必修科目になった感があります。
 
2018年の通称青本カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則」を境に、ネット上や本でも色々な情報が出てくるようになりました。
 
が、一つ重要なのにあまり語られていない手段がある気がします。
 
「値上げ」です。
 
 

基本的には「LTVの向上」がカスタマーサクセスの目的

 
そもそも、自社のビジネス目線で見ると、カスタマーサクセスの目的は「LTVの向上」に尽きます
(理念的にはもっと美しいものなので異論もありそうだけれど、控えめに言ってLTV向上がカスタマーサクセスの「とても重要な目的であること」を否定はできない)
 
その意味では、カスタマーサクセスの前の概念(?)である「CRM」なんかも目的は一緒。
カスタマーサクセスが画期的だったのは、以下の3点だと思います。
  • サブスクリプションSaaSが本当に増えてきたという時代背景とマッチしたこと
  • 「顧客の成功」と「自社の成功」を重ね合わせるという、「三方よし」的なコンセプト
  • ある程度体系化されて実践可能な方法論とセットで提供されたこと(しかもそれがマーケ・インサイドセールス・セールス・CSという”The MODEL"みたいな超汎用的な全体像と一緒に提供されたこと)
いずれせよ、CRMと呼ばれた時代から、その活動の最重要目的(の一つ)はLTVの向上です。
 

LTVの要素である、単価を簡単に上げる方法が値上げ

サブスクリプションにおけるLTVの計算式は
 
LTV = a.平均単価(ARPU) × b.平均継続期間
 
ですね。
 
カスタマーサクセスの教科書的方法論では、「a.平均単価」を上げるためにアップセルやクロスセルが検討されます
(実務としてはアップセルやクロスセルは難しいし、そこまで到達していなカスタマーサクセス部隊も多いと思います。)
 
でも素直に考えたら、単価アップの方法って、まず値上げが検討されても良くないですか?
アップセル・クロスセルは後な気がする。
 
ところが、カスタマーサクセスで「値上げ」という選択肢を本気で出して検討できる人は、そこまで多くない。
 

なんで値上げしないの?

 
直接的な理由は、多分シンプルです。
「顧客の成功」ってキレイな理念を大上段に掲げておいて、「値上げ」ってなんか出しにくいから。 
基本的にそれだけの話。
 
間接的な理由は、他にも考えられます。
  
まず、組織的には、
「カスタマーサクセス大切」と掲げているとはいえ、実際のところカスタマーサクセス部門が値上げを起案するほどの大きな権限持っている会社は多くない。
 
ビジネス(金儲け)的にも、
  • レピュテーションリスクが怖い
  • 将来のアップセル・クロスセル基盤を失う
という理屈から、「値上げ」は避けられるべき選択肢のように見えます。
 
 
でもでも、私は下品だと言われようと問いたい。
  • そもそも御社の「月額3万円」って、今もホントに妥当ですか?
  • 料金体系100名-500名で同じに設定しちゃってますけど、そこに属する顧客の支払い能力や製品から受けるベネフィットって一緒ですか?
  • 頑張ってフィードバックループ回して、オンボーディングやサポートも綺麗にして、付加価値は(場合によって維持費も)昔より上がってるのに、価格は同じでいいんですか?
  • そのアップセル・クロスセル製品、パッケージに入れて値上げしちゃった方が売上も上がるんじゃないですか?売れるかわからないアップセルにしちゃうより、パッケージにした方が世の中へのインパクトも大きく出せるんじゃないですか?
 
ちゃんと儲けて再投資するってのは、会社が世の中を良くしていく上で大切だと思います。
 
そのための手段として「値上げ」というのはもっと検討・研究されてもいいと思うのです。
 
例えば、
  • 具体的なプライシングの仕方
  • (ハイタッチはいいとして)ロータッチやテックタッチにどう値上げをコミュニケーションしていくか
とか、もっと研究されてもいいと思うのですが、あんまり聞いたことがない。
 
 

正面切って、清濁併せ呑んで値上げは議論されるべき

ちょっと値上げを煽る書き方をしましたが、
実は私、実経験があります。
 
サブスクリプションビジネスの「中の人」として、数倍(!)という結構強烈な値上げを経験したことがあるんです。しかもCS担当として。
 
イメージとしては、「携帯の月額5千円が2万円に」とか想像してもらえばわかりやすいと思います(もちろんガラケースマホみたいな付加価値向上はしました。が、ガラケーのプランを一切残さなかった)。
 
今よりもっと未熟な時代で、現場回すのに手一杯でした。
でも「自分のやっていることは正しいのか」と、働く価値観を本当に強く揺さぶられる経験でした。
 
その経験も踏まえ(中の人であった以上、その是非についてここ述べるのは控えたいのですが)、
一般論としては「値上げ」は絶対的な禁じ手ではないし、値上げした方が、総合的には世の中に良いインパクトが出るケースもあると思います。
 
そして同様に一般論として、顧客はもちろん関係者に強烈な痛みを伴うことが多い打ち手が「値上げ」であるということも言えると思います。
さらに、実は経営者はこのオプションを心のどこかで考えていることも多い気がする。
 
そうである以上、
正面切って清濁併せ呑んで(結論として呑まなくてもいいけど)値上げについて建設的な議論・検討がなされるといいなぁ、と思います。
 
(プライシングの参考文献↓。そもそも4Pの一要素なのに「プライシング」って議論されなさすぎだと思う)

 

マッキンゼー プライシング (The McKinsey anthology)

マッキンゼー プライシング (The McKinsey anthology)

 

 

 

【目次】カスタマーサクセス「青本」10の原則 逐条解説的まとめ

カスタマーサクセスの教科書として知られる通称青本 

カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則

カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則

 

 

この本は、日本においてSaaS界隈以外にも大きく「カスタマーサクセス」という概念を広めた本だと思います。

また、10の原則がチェックリスト的に使えて非常に使いやすい本です。

 

ふと思い立ち、自分の復習も兼ねて、10の原則について逐条解説的にまとめてみました。

 ① 正しい顧客に販売しよう

 ② 顧客とベンダーは何もしなければ離れる

 ③ 顧客が期待しているのは大成功だ

 ④ 絶えずカスタマーヘルスを把握・管理する

 ⑤ ロイヤルティ構築に、もう個人間の関係はいらない

 ⑥ 本当に拡張可能な差別化要因は製品だけだ

 ⑦ タイムトゥバリューの向上にとことん取り組もう

 ⑧ 顧客の指標を深く理解する

 ⑨ ハードデータの指標でカスタマサクセスを進める

 ⑩ トップダウンかつ全社レベルで取り組む

 

10個書くの疲れました。笑

(内容はちょっとずつ直していきたいと思います)

 

トップダウンかつ全社レベルで取り組む :カスタマーサクセス10の原則⑩

カスタマーサクセスの教科書として知られる通称「青本」↓
カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則

カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則

 

 

その第10原則が「トップダウンかつ全社レベルで取り組む」です。
 
上記の本は、「10の原則」がチェックリスト的に使えて実務的に非常に使いやすいのですが、
以下では、本の内容を紹介・補足しつつ、その実務上の意味合いについて考えたいと思います。
 

※他の原則も書いています。このシリーズの目次はこちら↓

【目次】カスタマーサクセス「青本」10の原則 逐条解説的まとめ - B-log

 

 

4つの伝えたいこと

本章において、筆者が伝えたいことは以下の4つだと明言されています。
①(本物の)カスタマーサクセス とは何か
②なぜカスタマーサクセスは避けて通れないのか
③カスタマーサクセスはどのように価値をもたらすのか
④どこから始めるべきか
 
以下では、この4つについて、内容を紹介していきたいと思います。
 

(本物の)カスタマーサクセスとは何か

 
青本のこの章では、歴史の中で多くの企業が力を入れてきた活動の核は
  • 製品を作ること
  • 製品を売ること
の2つしかなかったとします。
そしてカスタマーサクセスは、これらに次ぐ第三の核だ、としています。
 
カスタマーサクセス とは部署名のことだと思っている人もいるかもしれない。
だが、「営業」という言葉が単なる部署名と部署をまたがる活動の両方を表しているように、「カスタマーサクセス」も全社レベルの問題だ。
カスタマーサクセス活動においては、事業場のあらゆる問題を顧客の成功に基づいて構成し直すことになる。 
 
青本の冒頭で、カスタマーサクセスには「理念」「組織」「方法論」の3つの側面があると紹介していますが、「(本物の)カスタマーサクセス」は単なる「組織」ではない、ということですね。
 
そして、このことがカスタマーサクセスを一部門の話とせず、「トップダウンかつ全社レベルで取り組む」必要がある理由です。
 
なぜカスタマーサクセスは避けて通れないのか
青本は、カスタマーサクセスは「経済構造の抜本的な変革によってもたらされる当然の帰結」だとします。
 
なぜ当然の帰結なのか、青本のロジックを、雑に要約すると
  • グローバリゼーションとテクノロジーで新規参入の壁が低くなった。
  • その結果、新規参入者たちによってサブスクリプションのような課金モデルが生み出された。
  • 顧客から見ると、顧客が選択肢と選択権を持つようになった。
  • 選択権を持った顧客は、自分を成功に導いてくれるようベンダーに期待するし、そんなベンダーが勝ち残る。
ということです。
この辺は、実生活・仕事の中で実感値を持たれる方も多いのではないかと思います。
 

カスタマーサクセスはどのように価値をもたらすのか

青本では、カスタマーサクセスで得られる成果として、以下の3つを紹介しています。
  • 成長
  • 評価
  • 差別化
 

成長

 
成功した顧客はアドボケートやリファレンスグループとなって、新たな顧客の呼び水となってくれる

チャーンの影響はそこに穴の開いたバケツ

 

注:アドボケート(Advocate)とは、自社のブランドの推奨者。リファレンスグループとは「あの会社がSalesforce導入してうまくいっているみたいだし、ウチも検討しよう」と、他の顧客に対して(ポジティブな)参考となるグループ。
 
という表現の通り、カスタマーサクセスは自社にも成長をもたらします。
そもそも顧客と自社の成功を重ねるのがカスタマーサクセスの概念の基礎ですから、ここは解説不要かと思います。
 

評価

青本では、ある投資会社の報告書の中で、
サブスクリプションを行う上場企業が倍増していることとカスタマーサうせすやリテンションとの間には直接的な相関関係がある」

ドル更新率はサブスクリプションビジネスの評価における最も重要な指標だ 

と触れられていることが紹介されています。外部からも評価が高まるということです。

(とはいえ、上場を目指すような会社においては、もはやカスタマーサクセスは常識なので、ここも特に解説不要かと思います。)
 

差別化

そして「カスタマーサクセス管理は有効な差別化要因になりうる」としています。
確かに、カスタマーサクセスを高いレベルで実施しきれている会社は2019年現在多くありませんし、そういった会社については直接の顧客の一次体験はもちろん、SNSなどでもポジティブな発信がなされ、差別化メッセージとして強力になることは推察されます。
 
 

どこから始めるべきか

そして、本章の最後は実際トップダウンで全社レベルで取り組むには「どこから始めるべきか」です。
そのヒントとして、青本は以下を掲げています。
  • 成功を定義する
  • 成功に関して足並みを揃える
  • カスタマーサクセス部門の話に耳を傾ける
  • カスタマーサクセスを優先する
  • カスタマーサクセス部門に権限を与える
  • カスタマーサクセスを計測する
  • カスタマーサクセスを報告する
  • カスタマーサクセスに褒賞を与える
  • 会社を後押しする
  • 成功を祝う
 
実際の推進は、上記の様々な要素が密接に連動しながら進むことが多いと思います。
 
 

考察 :やっぱりトップダウン。下からやるときはどこからやるべきか。

10の原則最後は「トップダウンかつ全社レベルで取り組む」です。
(ちなみに、ニック・メータ氏やGainsight社の他の資料を見ると、この原則は最初に来たり最後に来たりします。いずれにせよ、強調したいということだとは思います。)
 
トップダウン×全社というのは、いかにもアメリカっぽいのですが、実際カスタマーサクセスに関してはやはり
トップダウンかつ全社」での取り組みが必要かな、と個人的に思います。
 
経験上、カスタマーサクセスが月次の売上に効いてくるのはそれなりに時間がかかります。
当然、例えばオンボーディング率の向上とかの中間指標はうまくいけば2-3ヶ月で上がると思いますが、年間契約とかの形態をとっていると、それが顧客数・売り上げにダイレクトに効いてくるのは早くてさらに1年後です。
その間、ちゃんとカスタマーサクセスに投資し続けなくてはならない。
 
また、カスタマーサクセスは多くの部署をまたぐ活動です。
セールスやプロダクト部門、カスタマーサポートなど、多くの部門と連携しながら進めなくてはならない。
新しい部門というのはなかなか推進力を持たないというのは世の常で、そういった意味でもトップダウンという錦の御旗が必要です。
 
だとすると、「現場としてはトップダウンで進めるために何から始めるか」だと思いますが、個人的には、現状の計測が良いと思っています。
第8原則:顧客の指標を深く理解する の通り、カスタマーサクセス周辺の指標はかなり整理されています。
まずは
  • MRR(もしくはARR) (顧客あたりの月額(ARRは年額)単価)
  • ChurnRate  (解約率)
  • LTV 
  • CAC  ・・・顧客あたりの獲得コスト
  • Unit Economics ・・・1顧客あたりの経済性(LTVとCACの割り算)
あたりを出して、トップにカスタマーサクセスの必要性をしっかり説くことが、スタートになるんじゃないかと思います。そこで練られた資料があれば、各部門トップへの説明にも使えますし。
 

 

カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則

カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則