本当に拡張可能な差別化要因は製品だけだ :カスタマーサクセス10の原則⑥
カスタマーサクセスの教科書として知られる通称「青本」↓
カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則
- 作者: ニック・メータ,ダン・スタインマン,リンカーン・マーフィー,バーチャレクス・コンサルティング
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2018/06/06
- メディア: 単行本
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その第6原則が「本当に拡張可能な差別化要因は製品だけだ」です。
上記の本は、「10の原則」がチェックリスト的に使えて実務的に非常に使いやすいのですが、
以下では、本の内容を紹介・補足しつつ、その実務上の意味合いについて考えたいと思います。
なぜ、この原則が大切なのか。
端的にいうと
-
SaaSで製品は、一度作れば何百回でも提供できて
-
顧客の成功を実現するのは、最後は製品そのものだから
の2点です。
正直、青本の中でもこの章は特に分かりにくいです。
が、例えば、著者による補足説明の下記から上述の2点が読み取れます。
会社全体の中で本当の意味で拡張可能なのは、製品だけだ。確かに、会社のどの部分も効率を高めればある程度の規模の拡張に耐え得るのだが、あなたが作る製品はどれも、いったん作ったら何百万人のユーザーに何百回も使われる可能性を秘めている。「一度作ってたくさん届ける」は、うまくいけば利益を生み出す秘訣なのだ。最優先すべきなのは製品部門である。その一番の理由は、享受したい大成功へと続く唯一の道が製品であるという点だ。
どうやって差別化された製品にするのか
では、どうやって差別化した製品を作っていくのか。
本に書いてあることを大雑把に引用すると
「フィードバックループを回す」
この一言に尽きます。
その手段として、様々な方法を青本は紹介しているのですが、特にキーとなるシステムとしてPAC、COPを掲げています。
●PACとは
PACとは、製品諮問機関(Product Advisory Council)です。
PACの主要な活動として、以下のようなものが例示されています。
PACの内容は少しわかりづらいのですが、青本のビジョン・ベネフィットがわかりやすいです
ビジョン:製品諮問機関(PAC)とは、構造的相互的なプラットフォームだ。ここで顧客がフィードバックすると、今後の製品の方向性に影響を与えるという形でかいやの製品管理部門に協力することになる。ベネフィット:PACは顧客基盤全体の代表として活動している。活動を通して、常に製品は顧客の長期的・短期的いずれのニーズにも適合し続けるため、更新率が上がるだけでなく、製品やサービスへの投資額も増えるし、他者にも推薦してもらいやすくなる。
PACは製品部門が管轄するものの、PACに参加する顧客にも役割と責任を明記すべきとします。
例えば、「会合への参加」や、「プロジェクトに適した設計の発見や試用への参加」などが、顧客に対する役割・責任として求められます。
COPとは
COPとは、実践コミュニティ(Community of Practice)です。
青本では、PACは製品部門が主となるのに対して、COPは「製品に関する事業プロセス、ビジネス手法、課題をテーマとした意見交換の場」であり、「様々な事業分野の相手とつながる協働フォーラム」だとしています。
以上のような形で顧客参加型プログラムを回し、顧客のフィードバックを全社に浸透させていくことで
「本当に拡張可能な差別化要因」である製品を洗練されたものにしていくべき、としています。
考察
本の内容に沿ったまとめは以上で、以下は考察です。
正直、青本の中でもこの章は一番わかりにくいと思っています。
内容をシンプルに示すと
-
本当に顧客に成功をもたらすのは製品
-
良い製品を生み出すには顧客の声が欠かせない
-
なので、顧客参加型プログラムとかを駆使しつつ、カスタマーサクセス部門と製品部門はフィードバックループを形成しなくてはならない
ということかな、と。
逆に、よくあるアンチパターンは「コミュニケーションしかしないCS部門」だと思います。
例えば、「お客様窓口」的な組織を、カスタマーサポート→CRM→カスタマーサクセスと、名前変えてきただけのような組織。
「結局コミュニケーション部隊でしょ」となりがち。
そんな部門だと、例えば、以下のような状態になりがちです。
-
VOC管理さえされてない
-
VOCはただのロングリストで、製品部門に的確に届ける仕組みがない。「正しい顧客」からのものがどれかもわからない。
-
VOCを製品部門に届けても、それがどういう優先順位で決まるのかのルールやリリース管理の仕組みがない
-
顧客参加型のプログラムやエンゲージメントマネジメントなんて存在しない
-
カスタマーエクスペリエンス・・製品とは関係ないでしょ?
ここまで行かなくても、本当の意味で顧客接点部門と製品部門が、がっちり噛み合っている組織は多くないと思います。
例えば、カスタマーサポートやCRMを背景として作られたカスタマーサクセス部門は、特にそうなりがちです。
新しい組織でも、製品をローンチして一定の規模が出てビジネスが複雑になってくると、カスタマーサクセスと製品が離れがち。
そんな状況下で、この原則を貫く部門には、高い調整力とコミットメント、実行力が求められます。
しかし、そもそもの顧客接点部門はそれをミッションとして定義さえしていないことも多い。
だからこそ、一見当たり前に見える「製品は大切。それを磨くのは顧客。」をもう一度強調するために、この原則が必要があるのだ、と個人的には思っています。
※他の原則についてはこちら↓
カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則
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