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クレームに向き合うカスタマーサクセスに伝えたい3つのこと

カスタマーサクセスが、クレーム対応で傷ついている

カスタマーサクセスには、誠実で共感性が高い人がたくさんいる

カスタマーサクセス職が日本でも広がっています。
カスタマーサクセスの教科書として知られる赤本では、カスタマーサクセス職は
①引く手あまた!
②カッコいい!
③豊かな人生を送る!
なんて書かれています。
 
そして、そんな素敵なカスタマーサクセス人材の要件の一番目として
共感性(Empathy)が強い
という点が掲げられています。
 
確かに、カスタマーサクセスは「仕事だから」ではなく、人の役に立つのが好き・頑張る人を助けたい・貢献したいという基本的な欲求に突き動かされている人が活躍しているイメージがあります。
カスタマーサクセス・プロフェッショナル」著者のルーベン・ラバゴ氏が、あるイベントで「カスタマーサクセスの魅力は、IT業界の真ん中で、極めて人間的な仕事であること」みたいな趣旨のことを言っていたこととも重なります。
 

他方で、カスタマーサクセスはクレームと隣合わせ

他方で、カスタマーサクセス(特にCSM(カスタマーサクセスマネージャー)と呼ばれる人)は、顧客接点です。
なので、顧客からクレームを突きつけられることもあります。
 
比較的早い時期に日本にカスタマーサクセスを紹介した資料として有名な「カスタマーサポートのことは嫌いでも、カスタマーサクセスのことは嫌いにならないでください」では、
カスタマーサクセスの役割を
 × クレームを処理する
 ○ 顧客と話す
としています。
 
カスタマーサクセスの特徴は「プロアクティブ」な課題解決とされ、リアクティブに顧客のクレームに向き合うことは推奨されていません。
でも、そんなのは理論系・実験室の中の話であって、実際にはAWSが障害を起こせばシステムは止まるし、その結果顧客と契約内容で揉めることはあるわけです。
 

結果として、多くの人が傷ついていく

結果として、多くの人が傷ついていきます。
共感性が高いから、クレームの精神的ダメージをモロに食らう
「お客さんの役に立ちたい」という青臭くも美しい気持ちを持っているから、「こんなプロダクト/会社に自信が持てない、私はこんなことやっていていいんだろうか」と自責の念に駆られます。
もっとも悲しいのは、クレームによって顧客の嫌な面を見て、顧客を愛することもできなくなってしまうことです。
プロダクトも顧客も愛せなくなると、誠実で共感性が高い人はもうそのポジションでカスタマーサクセスはできなくなって転職していくことになります。
 
そんなわけで
  • カスタマーサクセスには、誠実で共感性が高い人がたくさんいる
  • でも、顧客接点だからクレームは避けられない
  • 結果として、多くの人が傷ついていく
という問題が発生するわけです。
 
 

クレームと向き合うカスタマーサクセスに伝えたい3つのこと

IT界隈で、今風に言えばカスタマーサクセスやプロダクトマーケティングマネージャーのような仕事を10年近くしてきました。
カスタマーサクセスとクレームの問題は、気持ちの部分が大きいのでとても難しいのですが、まぁ有り体に言えば一定程度は「傷を舐め合う」ことも大切だと思っています。
 
実際に顧客の意見をどう建設的な問題解決に繋げていくかが一番大切なのは言うまでもありません。
ただし、それについてはカスタマーサクセスの本や各種イベントで語られている気がするので、ここでは敢えて感情論的なことを少し書きたいと思います。
 

①大体どこにだって、クレームはある

カスタマーサクセスの世界では、プロアクティブな問題解決が推奨され、クレームなんてあたかもないかのように語られることがあります。
でも、そんなの嘘です。
  • 昨日のイベントに登壇してキラキラ輝いて見えたあの人も
  • 大型資金調達/IPOしてイケイケドンドンに見えるあの会社も
  • noteで「オンボーディング率が大幅に向上してチャーンが減った」って書いてるあの人も
つい5分前まで、オンボーディング失敗して更新タイミングを迎えた顧客から値引き交渉付きのクレームを受けていたかもしれないし
去年のAWS大規模障害で、休暇中なのにハイタッチの顧客からケータイにクレームが鳴りまくってたかもしれません。
 
自社の落ち度 / 顧客の落ち度 / 第三者の落ち度 問わず、どんなプロダクトだってクレームは起きます。
他の良い部分が、クレームを隠しているだけです。
 
「でも、うちの経営層は成長を優先して、カスタマーサクセスを優先していない」と感じることもあるかもしれません。
そんな時は、青本の第1章を補足説明までよく読んでみて下さい。
理想の世界なら、会社は理想的な顧客だけに販売すればいい。だがもちろん、成長企業には収益を伸ばさないといけないという途方もないプレッシャーがあるものだ。そのため、効果的に成長するには、理想的な顧客の定義を拡大せざるを得ない場合もある。 
第1原則で「正しい顧客に売ろう」と宣言する青本でさえ、「理想的な顧客の定義を拡大せざるを得ない場合もある」という成長企業の宿命を、実は受け入れているのです。
 
クレームが起きるのはあなたのプロダクトだけではないということを、認識いただきたいです。
 

②誰だって、クレームに対応なんてしたくない

共感性が高く、誠実なカスタマーサクセスの人にとって、クレームへの対応は大変なストレスです。
「顧客の成功」という青臭くも美しいコンセプトに心惹かれた人ほど、そのギャップに苦しむ傾向がある気がします。
 
でも、それはあなただけではありません。
 
クレーム対応に慣れていそうな大型コールセンターのオペレーターも
非協力的に見えるサーバーサイドのエンジニアやデータサイエンティストも
一見サイコパスに見える経営者も
いまあなたにクレームを言ってきているクライアントも
 
クレーム対応なんてしたくありません。
それはみんな一緒です。クレーム対応に向いてる人(好きでやってる人)って、実はそんなにいないのです。

③それでも顧客の成功は存在するし、否定されない

そんなわけで、多くのカスタマーサクセスが、隠れてクレーム対応に追われているわけですが、
いま目の前の顧客からクレームを浴びたとしても、
顧客の成功は実在するし、否定されません。
 
先月オンボーディングしたあの顧客の成功も
どうにかリニューアルにこぎつけた大規模顧客も
今クレームを言ってきている顧客がオンボーディングした瞬間に顧客に提供した成功も、
嘘じゃなくて実際に社会に提供された価値ですし、クレームによって否定されません。
 
思うに、クレームはカスタマーサクセスやってると避けられないし、クレーム対応ホント嫌なんですけど、
結局は「それでも顧客の成功が嬉しい」という一点によって、最後顧客接点の仕事ってどうにか続けられるんだと思うんですよね。
 
言い換えると、クレーム受けてる時はすごく嫌な気持ちだと思うんで、仲間内で適度に愚痴り慰め合いつつ
  • どこに行ったってクレームは一定避けられない
  • 誰だってクレーム対応なんてしたくない
ってメタ認知しながら、やり過ごすしかないと思うのです。
その上で、気持ち切り替わったら、次の成功に向かって進めばいいのかなぁ、と。
 
 
 
メタ認知できたら、建設的な問題解決で、クレームと対峙していただければと思います。
まだ気分転換が必要な方は、こんなのもどうぞ。 笑

 

クレームと向き合う気になったら、クレーム対応の本は古いものから色々あるので、読んだ上で場数を踏めば誰でも一定のレベルにはなれます。