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絶えずカスタマーヘルスを把握・管理する :カスタマーサクセスの10原則④

カスタマーサクセスの教科書として知られる通称「青本」↓

カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則

カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則

 

 

その第4原則が「絶えずカスタマーヘルスを把握・管理する」です。
 
上記の本は、「10の原則」がチェックリスト的に使えて実務的に非常に使いやすいのですが、
以下では、本の内容を紹介・補足しつつ、その実務上の意味合いについて考えたいと思います。
 

※他の原則も書いています。このシリーズの目次はこちら↓

【目次】カスタマーサクセス「青本」10の原則 逐条解説的まとめ - B-log

 

なぜ「カスタマーヘルス」が必要なのか

一言で言うと、「予測と管理に必要だから」です。
 
青本ではこの問いに対して、「セールスの幹部による案件管理」となぞらえて、以下のように説明されています。
 
要するに予測と管理だ。
(中略)
これは顧客の将来の行動(更新、アップセル、チャーンなどの危険な状態)を示す日々の指標であり、自部署を日々管理できるものだ。CSMがチャーンやリテンション率を算出するまでに12ヶ月も待つ必要はないのである。

  

つまり、更新、アップセルなどの目的に対して、プロアクティブ(カスタマーサクセスとカスタマーサポートの最大の違いの一つ)に動くためには、カスタマーヘルスという概念が必要だということです。
 

カスタマーヘルスとは何か

本の中に直接的に定義した記載はないのですが、カスタマーヘルスに取り組む理由から、更新・アップセルなどの目的に対しての先行的な指標がカスタマーヘルスとなることがわかります。
 
本の中では、「どの会社も別物なのだから1つの方法で解決できるわけではない」としつつも、カスタマーヘルス全体の判定に使えるものとして、以下を例示しています。
 
  • 製品定着率
  • カスタマーサポート
  • 調査結果
  • マーケティングへの関与ど
  • コミュニティへの参加度
  • 契約金額の増減
  • 自立度
  • 支払い履歴
  • 幹部との関係性
 
以上のような項目を洗い出しながら、絞り込んだりして、カスタマーサクセスを定義しようとする取り組みそれ自体も価値があるものだとされています。
 

「管理」「把握」「絶えず取り組む」

そして、原則の残りの要素は「管理」「把握」「絶えず取り組む」です。
 
ここはそれほど複雑ではありません。
カスタマーヘルスは「管理」されなくてはならない。つまり、眺めているだけではダメで、目的(契約更新やアップセルなど)のために、点数を上げる行動に繋げなくてはならない。
その超前提としてカスタマーヘルスは「把握」されなくてはならない。
そして、成功に導くためには、「絶えず」カスタマーヘルスの改善に取り組み続けなくてはなくてはならない。
という話です。
 
 

考察 :実務上のカスタマーヘルス定義

青本の内容に沿ったまとめは以上で、以下はおまけです。 
 
この原則を自分のビジネスで適用しようとすると、「カスタマーヘルススコアを具体的に何にするか」に迷うと思います。が、本では「どの会社も別物なのだから1つの方法で解決できるわけではない」として、例示をするにとどまっています。
 
様々な情報を見ると、以下のような観点が重要なようです。
 
目的志向
「更新率(解約率)」「顧客単価」あたりが、カスタマーサクセスの上位指標だとすると、カスタマーヘルスはこれらの要素となっている(ヘルススコアが改善すれば、継続率/顧客単価が改善する)という関係に関係にならなくてはなりません。
 
先行指標
「解約率」などをプロアクティブにコントロールするために、カスタマーヘルスを把握するのですから、カスタマーヘルスは先行指標でなくてはなりません。
 
データ志向
一定の歴史を持つビジネスなら、カスタマーヘルス指標と上位指標との紐付きは、基本的にデータ分析によって検証することが可能です。「機能XとYを利用すれば、8割は解約しない」みたいな。
ですので、カスタマーヘルス指標と上位指標の紐付きはデータによって裏付けられる必要があります。
 
重点志向
カスタマーヘルスの指標は無限にありますが、それらが全て同等の重要さを持つことは稀です。
上位指標に合わせてカテゴライズしながら、重み付けして把握・管理する必要があります。
個人的には、コントロールしきれないなら、思い切って「すごく効く1つか2つの指標にフォーカスする」というマネジメントが有効な局面も多いように思います。
 
 
とにかく上位指標との紐付けが重要で、そこだけ理解できれば設計はうまくいくのかな、なんて思ったりします。
 
私がこれまで関わってきたビジネスでは、「圧倒的に解約予測に効く1-2の指標」が存在し、それ以外はあくまで「従」みたいなケースが多かったです。
 

ヘルススコア設計については別にまとめました