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メンバーが「いない」ところでメッセージを発していないか

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「マネジメントのメッセージがメンバーに伝わってない」というのは、会社組織でよくある悩みの一つです。
全社レベルだけでなく、部門レベル/チームレベルの各階層で起きている問題です。

その理由の一つに
「実は相手が『いない』ところで、メッセージを発している」
というケースが意外とある気がしています。

 

「政治はなぜ僕らから遠いのか」

こう思うきっかけになったのは「イシューからはじめよ 」「シン・ニホン」で有名な安宅和人さんのブログです。

政治はなぜ僕らから遠いのか」と題した記事で、政治不信の理由として 「人のいないところ、発言を信用してもらえないところ」で政治コミュニケーションが行われていること、を指摘しています。

以下、一部抜粋・引用します。

市民、つまり多くの人が集う場所はどこにあるのか、が考えるべき最初のクエスチョンだ。当然のように渋谷や新宿がそうだ、と考える時代は終わってしまった。TVや新聞などのマスメディアだと思う時代も終わってしまった。これらは確かにかつては最大級の人が集まるプラットフォームだったが、今はそうではない。

ではどこに行ったのか、、それはこのブログを読まれている人なら自明な通り、明らかにインターネット、スマートフォンの中にあるサイバー空間の中だ。

多くの人において、情報消費、メディア、対人接点時間において、インターネットがもうTV、新聞、電話の数倍以上になって久しい。TVを見る時間の数倍、スマホを触り、街に出る時間の数倍、スマホアプリやYouTubeNetflix、AppleTVなどで情報を得ているということだ。(中略)

最近の日経による調査データを見ても、マスコミを信頼できる人は9%に対し、インターネットを信頼できると答えた人は24%、マスコミを信頼できない人は47%に対し、インターネットを信頼できないと答えた人は約三分の一の17%だ。

なのに、街頭演説やリアル空間でのイベントに集中し、媒体的な接点はテレビや新聞が主というのが現在の政治活動のほとんどだ。(中略)

一言で言えば、人のいないところ、発言をそのまま信用してもらえないところで政治は行われているのだ。

 

相手がいないところや、相手が不信感を抱く媒体で発信をしても信用はしてもらえない、と。
盲点のようですが、確かに河野太郎氏を見ても「有権者が『いる』ところでコミュニケーションをする」ことは非常に重要な気がします。

 

メンバーが「いない」ところで、メッセージが発せられている

翻って、会社のマネジメントのメッセージは、伝えたい相手がいるところで発せられているのでしょうか?

会社・部門の方針は、全社や部門のキックオフなど、メンバーも出席するところで発せられています。一見問題はなさそうです。

しかし、本当に問題ないのでしょうか?

 

「トップのメッセージがメンバーに伝わってない」という時、その意味合いは「日常業務の中で、方針が意識されていない」ということだと思います。

ところが、例えば役職を持たないメンバーの多くにとって、
全社総会や部門総会というのは日常業務から離れた異空間のようなもの。そこに「日常業務を行う私」はいない気がするのです。

さらに言うなら、会議がリモート化される中で、日常業務に忙しいメンバーがキックオフや総会の話を本当に聞いているかは怪しい。内職してるメンバーも正直多いと思うし、もっと正直言えばスマホいじってるかもしれない。飯食いながら聞いてるメンバーもいると思う。

誤解を恐れずいえば、トップが情熱を持っても
総会に、一般メンバー(の心)は「いない」
のです。

 

メンバーが「いる」ところに、こちらから行くべき

とはいえ、本来的にはメンバーだって上の方針が気になるはずなんです。日々の業務や評価に影響するから。なので、メンバーが「いる」ところでメッセージを発せれば伝わるはず。

じゃあ「日常業務を行う私」はどこにいるかというと、基本的には「その人がアウトプットするところ」にいると思います。

  • 会議であれば、聞く一方じゃなくて自分も話す会議
  • slackであれば、自分も発言するchannel
  • 自分自身が計画ドキュメントを作るプロセス

こういう場所(↑)にマネジメントの側が入って行ってメッセージを伝えることが、メンバーにメッセージを伝える肝になるのではないかと思います。

もちろん、社長が全ての会議に入っていくことはできない。でも、社長以下マネジメント層がそれぞれ2~3階層下まで意識して「メンバーがいるところ」に赴くことは可能だと思います。
相手が発言できる場で伝えることで、フィードバックも受けやすくなる。

 

例えば、事業部のキックオフが終わった後、事業部長は各チームの定例を巡回してもいい。「キックオフで話したのは〜〜ということだったけど、マーケのチームに特に関係するところはココ。なぜなら〜〜と言うことなんだけど、●●さんイメージできる?」と聞いてみるイメージです。

チーム長などより現場に近い管理職なら、1on1の場で「チームの方針伝わった?」と個別に聞いてみてもいい。

 

もちろん、トップのメッセージが伝わらない理由は他にもあるかもしれません。

ただ、相手が「いない」ところでコミュニケーションとっても、絶対に伝わらない。
そして、相手(の心)がいるところで話すには、「相手を連れてくる」より「相手がいるところに行く」方が実は簡単確実な気がするのです。

「ちゃんと聞け」と言って心をこっちに持って来られるなら「トップのメッセージがメンバーに伝わってない」って問題はそもそも発生しないはず。

会社の中で偉くなってくると忘れがちなのですが、往々にして全社や部門の大きな会議にメンバー(の心)はいないし、そう簡単に連れて来れない気がするのです。

 

メンバーが「どこにいるのか」に敏感になる

相手がいないところでコミュケーションとった気になるのは、有権者がいないところで政治コミュケーションをとっているのと同じで「遠さ・不信感」を産む原因になります。これは社長だけでなく、部長やグループ長のような中間管理職でも同じ。

嘘みたいだけど、1対多の、特にオンラインのコミュニケーションだと、こういうことが本当に起きる気がします。

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そうだとすると、マネジメントは「メンバーがどこにいるのか」に敏感になり、自分が普段いるコンフォートゾーンを抜け出して、メンバーがいる場所に飛び込んでいく必要があると思うのです。