カスタマーサクセスの「裏技」的施策集
このエントリーでは、カスタマーサクセスの「裏技」的施策を、いくつか紹介していきます。(というほど裏技でもないかもしれませんが)
他方で、結構効くのにあまり表で共有されないタイプのカスタマーサクセスの施策がある気がします。
というのも、カスタマーサクセスの魅力の一つは、「顧客の成功」と「自社の成功」を重ねる美しいコンセプトにあると思います。なので、逆にあんまり商売っ気の強い(自社の成功にフォーカスが寄ってる)タイプの施策は嫌われるし、表立って共有されづらい気がするのです。
でも、現実ビジネス観点だと、カスタマーサクセスの極めて重要な目的の一つがLTVないしMRRの向上であることは異論がないかと思います。
そして、この「LTV・MRR向上」だけにフォーカスすると、商売っ気が強くて「顧客の成功」というカスタマーサクセスの理念からはあまり表立っては取り上げられない、いわば「裏技」的な施策が浮かび上がる気がするのです。
本エントリーではその具体例して、
-
値上げ
-
契約期間や支払い方法をいじる
-
逆ヘルススコアに注目する
を、順に紹介していきます。
具体施策-1 :値上げ
継続課金型ビジネスのLTVは、
LTV = 顧客単価 × 平均継続期間
の式で計算されます。
で、色々なやり方で
- 解約率を下げる
-
使いこなしてもらうことで、従量料金を増やす
-
上位プランにアップセルする
とかで「顧客単価」や「平均継続期間」を上げるというのが、カスタマーサクセスの王道です。
でも、LTVを伸ばすには、実はパッケージ部分・定額部分の一律値上げが有効なケースが結構あります。
*以下では、わかりやすさのためにLTVを売上ベースで出しています。本当はLTVは利益の指標ですね。
例えば、シンプルに年額10万円、年間解約率10%、会員100名のビジネスを考えます。
- 今年の売上は、10万円×100名なので、1,000万円になります。
- 来年の期待売上は、10万円×100名×90%なので、900万円になります。
- 再来年の期待売上は、10万円×100名×90%×90%なので、810万円になります。
=>向こう3年間での期待売上は、2,710万円ということになりますね。
これを、思い切って4倍の40万円に値上げしてみましょう。
びっくりしてユーザーの4割くらいが一気に辞めちゃうかもしれません。そうすると、初年度ユーザーは60名に一気に減ります。
さらに、来年以降のChurnRateも倍増して20%くらいまで上がるかもしれません。
そうすると.....
- 今年の売上は、40万円×60名なので、2,400万円になります。
- 来年の期待売上は、40万円×60名×80%なので、1,920万円になります。
- 再来年の期待売上は、40万円×60名×80%×80%なので、1,536万円になります。
=>向こう3年間での売上は、5,856万円になります。
ちなみに、少しややこしいの式は省きますが、LTVベースで見ても
- 10万円を続けるケース →100万円
- 40万円に変えるケース →120万円(最初の100顧客全部を含めるとき。値上げタイミングで離脱した40名を除くなら200万円)
と、4倍の40万円に値上げするケースが勝ちます。
つまり、こういうことです↓
4割の顧客が一気に離反しても、向こう3年間の売上は倍以上違うんです。 (実際には色々な施策を打てば、この離反率はもっと下げられると思う)
これ、業務システムみたいにスイッチしにくいタイプのプロダクトで、かつ高機能化が進んでる場合だと結構あり得る数字だと思います。
さらに、”winner takes all”的な特性を持つ市場でシェア取ってから値上げすれば、解約率の上昇はもっと抑えられるかもしれません。
そんなわけで、解約率が上がっても、大きく値上げするとエコノミクスはよくなることがあります。
新規獲得のセールスの難易度も上がりますが、まぁ最初から高ければそれなりに売れるもんです。
実際、昔からカスタマーサクセスと値上げって親密なのに語られなさすぎるなぁ、と思っていて以前こんな記事を書きました。
この数ヶ月後にfreeeさんが値上げしてましたね。予想していたわけじゃなくてたまたまですが。
なお、LTVの計算式はこちら
具体施策 -2:契約期間や支払い方法をいじる
裏技の2つ目は「契約期間や支払い方法をいじる」です。
1つ目の「値上げ」と比べるとショボいかもですが、結構効くことがあります。
契約期間をいじる
例えば、「毎月やめられる契約」を「半年契約」に、「半年契約」を「年間契約」にすることです。
契約期間をいじるとなぜChurnが下がるかというと
-
単純に辞めるタイミングを逸する。
-
なんなら顧客が「辞める」って言ってからリカバリプランを発動できる。
-
期間が定まっているから、カスタマーサクセスが顧客へのサポートプランが練りやすい
というメカニズムからです。
ただし、期間が決まっていると逆に「満期タイミングで継続を検討するタイミングを与える」ことにも繋がるので、その辺の手当ても必要だったりします。
支払い方法をいじる
もっとショボいのですが、地味に効くと思うのが支払い方法を変えることです。
例えば、「請求書払いを辞める」です。
「契約期間をいじる」とも似てるのですが、請求書を見るタイミングってコスパを検討する→解約を検討するタイミングになり得るんですよね。
だったら、口座引き落としとかにして、「請求書を毎月郵送して振り込んでもらう」みたいなのを辞める。これで、地味に解約率下がるケースもあると思います。
具体施策 -3:逆ヘルススコアに注目する
裏技の3つめは、「逆ヘルススコアに注目する」です。
ヘルススコアの概念はすでに浸透していると思います。活用度などをスコアリングして顧客の状況をウォッチして、それに合わせて介入を行う概念です。
一般的にヘルススコアは、ポジティブなもので足し算方式が多いと思います。
例えば、「●●機能を使ってくれたら+30point」みたいな。
でもこの足し算方式のヘルススコアって、あんまりうまく使えてる会社多くない気がするんですよね。
他方で、SaaSには「使うことが逆に危険信号になる機能」が一部あると思っています。いわば使うとヘルススコアがマイナスになる機能。
具体的には
-
HELPの解約方法のページを見てる →これは明確に危険信号
-
台帳系のエクスポート機能の不自然な利用 →他ソフトへ移行が始まっている可能性がある
-
画面キャプチャやマニュアルダウンロード →経理ソフトのように限られたキーパーソンが使う場合、キーパーソンが異動・退職で引き継ぎ資料作ってる可能性がある。キーパーソン交代で乗り換えリスクが起きることがある。
みたいな。
プラスのヘルススコアを積んで顧客を成功に導くことでに注力するのではなく、
こういうネガティブな機能に注目して(もっと悪どくやるなら、ロイヤルティ下がりつつある人が踏むようなトラップをわざと仕掛けておいて)
ネガティブな機能を踏んだ人に積極アプローチして解約を止めに行く、という施策、効く場面あると思いませんか?
まとめ
以上、カスタマーサクセスの「裏技」ってほどでもないですけど、あまり語られない気がする施策を3つご紹介しました。
-
値上げ
-
契約期間や支払い方法をいじる
-
逆ヘルススコアに注目する
カスタマーサクセスの魅力の一つは、「顧客の成功」と「自社の成功」を重ねる青臭くも美しいコンセプトだと強く思う一人ですが、「顧客の成功」というコンセプトからは語られにくい上記のような施策がビジネス的に効くことが多いのも、また真実だと思ってます。
そして、ちょっとひねくれた書き方しましたが、上記のような施策も、しっかり考えてやれば本当はカスタマーサクセスの理念につながることも大いにあると思ってます。
何より、カスタマーサクセスのメンバーがこういう施策嫌いだとしても、会社の利益向上につながるから社長や事業責任者は選択肢に持っていることが多い。
現実問題として、カスタマーサクセスの現場が嫌がっても、こういう施策が走るときは走るのです。実際、値上げするSaaSもぼちぼち出てきてるわけで。
そうである以上、こういう裏技が裏技的に扱われるのではなく、表立って議論がもっとされてもいいんじゃないかな、って思っています。
【解説】"HIGH OUTPUT MANAGEMENT"をマネージャー・課長の教科書1冊目としてお勧めする理由[ハイアウトプットマネジメント]
ビジネスパーソンは、役割がメンバーからマネージャー・課長に変わった瞬間に、求められる能力や立ち振る舞いが質的に変化します。
当然悩む人や行き詰まる人は多く、管理職の教科書的な本は世の中にたくさんあるのですが、個人的にはその中でも「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」を一番オススメしています。
ただこの本、人によって読みづらいと捉えられることもあるようで、
以下に本書の基本的な主張を要約しながら、この本の構造・オススメポイントを紹介したいと思います。
HIGH OUTPUT MANAGEMENTとは?
HIGH OUTPUT MANAGEMENTは、インテル元社長アンドリュー・グローブ氏が、1983年に書いたマネジメントに関する本です。
今から40年近く前の本ですが、十分今でも学べる本です。
最大のオススメポイントは、マネージャーの仕事の本質の定義
この本の最大のオススメポイントは、マネージャー業務の本質を突くこの数式です。
HIGH OUTPUT MANAGEMENTは、この数式をベースに全てが書かれています。
ここで、この本のポイントとなるアイデアは3つあります。
マネージャーの仕事を、アウトプット志向で考える チームとしてのアウトプット生産性を最大化するために、最もてこ作用の高いタスクを選び取る チームは、メンバー個人のパフォーマンスが発揮された時に最もよく機能し、アウトプットを高める
以下、順に解説していきます。
●マネージャーの仕事を、アウトプット志向で考える
他の管理職の教科書的な本でも、「管理職としての振る舞い」とか「管理職として必要なスキル」みたいなことは書かれています。
でも、本によって「褒めろ」って書いてあったり「叱れ」って書いてあったり。笑
しかし、態度でもタスクでもスキルでもなく、シンプルにアウトプット志向というアイデアを根本に据えることが本書の特徴です。書名も「High Output Management」ですもんね。
※正確には、自分の組織のアウトプットだけでなく、「自分の影響力が及ぶ隣接組織のアウトプット」までもマネージャーのアウトプットと定義するところもポイントです。実際、上がっていくマネージャーって周辺組織にも影響を及ぼしながら成果出して出世していきますよね。
●チームとしてのアウトプット生産性を最大化するために、最も「てこ作用」の高いタスクを選び取る
マネージャーの仕事は、無限にあります。
私の1日が終わるのは、疲れて帰宅する時であり、仕事が終わった時ではない。私の仕事は決して終わらない。
という本書の一節は、マネージャーの日常を適切に言い表していて笑えました。
「決して終わらない」仕事を抱えるマネージャーが
「自分の組織のアウトプット + 自分の影響力が及ぶ隣接組織のアウトプット」を最大化するためには、どうしてもレバレッジが効く活動に自分の時間を投入する必要があるというわけです。
●チームは、メンバー個人のパフォーマンスが発揮された時に最もよく機能する
そして、「自分の組織のアウトプット + 自分の影響力が及ぶ隣接組織のアウトプット」は個人のアウトプットの集合体ですから、個々人のパフォーマンスが最高であれば最高水準になるはず、という話です。
目次に照らして、HIGH OUTPUT MANAGEMENTの構造を解説
この本、アメリカの本にありがちなちょっとわかりづらいところもあるのですけど、シンプルにいうと示しているコンセプトは↑に書いた3つ、すなわち
マネージャーの仕事を、アウトプット志向で考える チームとしてのアウトプット生産性を最大化するために、最もてこ作用の高いタスクを選び取る チームは、メンバー個人のパフォーマンスが発揮された時に最もよく機能し、アウトプットを高める
だけです。
で、目次との関係でこれを整理すると以下の通りです。
「第1部 朝食工場」は、前提となる生産性の概念や原理原則を伝えています。
「第2部 マネジメントはチーム・ゲームである」で、マネージャーのアウトプットの定義とマネジメントにおけるテコ作用の重要さ、テコ作用を最大化させるための方法論が並んでいます。
「第3部 チームの中のチーム」は、そもそもの「チームとは」というか組織図の設計方法について述べられています。
「第4部 選手たち」は、個人のパフォーマンスを最大化する方法が書かれています。
という感じになります。何となくイメージつきますでしょうか?
(正直、ミドルマネージャーなりたての人が読むんだったら、3部は読み飛ばしてもいい気がします。)
まとめ
管理職のマネジメントに関する良書はたくさんあります。
でも、色々ありすぎて、正直混乱します。
そんな時、
マネージャーのアウトプット = 自分の組織のアウトプット + 自分の影響力が及ぶ隣接組織のアウトプット
という本書が示した数式は、色々な情報を読み解くにあたっての起点になるはずです。その一点をもって、この本は非常にお勧めです。(色々他にもいいところあるのですが、私は何よりこの数式が根本の原則として貫かれているところが本書の魅力だと思っています。)
そもそも、40年も生き残るような本は、大体良書に決まってます。
マネージャーになりたい方、マネージャーなりたての方は一度読んでみて損はないと思います。
ロジカルシンキング・問題解決の必読書&おすすめ本のまとめ
その必読書やおすすめ本を紹介します。
新しい本や個人的にオススメの本というより、なるべく「スタンダード」とされている本をピックアップして行きたいと思います。
柔らかめ
「世界一やさしい問題解決の授業」
2007年の発行以来、30刷以上を重ねる大ベストセラーです。
薄くてわかりやすいので、「活字を読むこと自体苦手」という方におすすめです。
薄いですが、内容的には十分で、10年以上支持され続けているのは、その内容の良さの現れかと思います。
個人的に「ロジカルシンキグ・問題解決でオススメの本は?」と聞かれた時は、とりあえず「世界一やさしい問題解決の授業」と答えるようにしています。
中くらい
「イシューからはじめよ」
「イシュー本」って言われたりする名著です。
すっごく要約すると「解く前に問題(イシュー)の見極めをちゃんとやろう」という本です。
じゃあ、イシューってなんだよって話になるのですが、その辺も「なんちゃってイシュー」と題して「イシューじゃないもの」が明示されていたりして、わかりやすいです。
序章と第1章だけでも、買って読む価値あると思います。
「仮説思考」「論点思考」
「イシューからはじめよ」が流行る前だと、「イシュー」に関してよく紹介されていたのはこの2冊な気がします。特に「仮説思考」。
実用的なTIPSにあふれているのがこの本の特徴です。
例えば、「実験する前に論文を書く」という節があります。これは、国際的に有名な学者が「実験する前に論文を書け」と言われたというエピソードを紹介するものなのですが、ビジネスの報告書作成とか通ずるエピソードだと思います。
また、問題解決の流れって教科書だと綺麗に整理されてることが多いのですが、実際はそんな綺麗に行かないことも多いです。
その点、この本では「問題解決の流れは行ったり来たりする」ということが明示されているのも特徴です。
以上、「柔らかめ」〜「中くらい」として4冊を紹介しました。
たった4冊ですが、以上を読めば、ロジカルシンキング・問題解決については、「なんとなくわかった気」にはなれると思います。
以下は、本格的に勉強したい方向けです。
堅め
コンサル業界で働きたいとか、コンサル出身上司と戦いたいとか、そんな方は読んでおきたい厳選4冊です。
「ロジカル・シンキング 」
「ロジカルシンキング」という概念が日本で広がるきっかけの一つになった1冊とか言われています。
「考える技術・書く技術」
言わずもがなの古典ですね。
「問題解決プロフェッショナル」「問題発見プロフェッショナル」
「問題解決プロフェッショナル」「問題発見プロフェッショナル」も、問題解決の文脈でとても良い本です。
以上、「堅め」として紹介した4冊の内容はくどくど説明しないのですが、
「考える技術・書く技術」は1999年、「ロジカルシンキング」は2000年の発行と、だいぶ古い本です。
古い本なので、内容に古さを感じる人もいると思います。
また、(時代背景の一致度含めた)分かりやすさという意味では他の本でも代用可能なのかもしれません。
でも、この4冊はコンサル界隈で推薦される頻度も特に高い気がします。
推薦される頻度が高いということは、多くの人に評価されているということです。その意味で、内容に外しはないかと。
あるいは、「よく推薦される→読んでいる人が多い」の結果として、世の中的にスタンダード・常識として扱われている部分が多い、ということなのかもしれません。
いずれにせよスタンダードなので、まだの方は、これを機に読んでみても損はないんじゃないかと思います。
副作用として、「え、お前読んでないの?」ってマウント取られる事態も防げます(笑)。
プレゼンテーション
ロジカルシンキングとセットで語られることが多いプレゼンテーションに関する本です。
「ロジカル・プレゼンテーション」
ロジカルシンキングとプレゼンテーション(提案)をつなぐ一冊。そもそもロジカルシンキングって、最終的にプレゼンテーション(提案)の形でアウトプットされることも多いですもんね。「イシューからはじめよ」もプレゼンにまで触れてますし。
「マッキンゼー流図解の技術」
翻訳版で2004年の本。これも、もはや古典ですね。
この本の地味にいいところは「これやっちゃダメよ」というアンチパターンとその修正例、演習がたくさん載っていることだと思います。
図解とかロジカルシンキングは、いきなり正解を示されるより、「実際に間違えて、そこから直す」って過程が理解を深めると思います。アンチパターンの例示や演習は「実際に間違えて、そこから直す」を疑似体験させてくれます。
まとめ
以上、ロジカルシンキング・問題解決で紹介されることが多い本を厳選で紹介しました。
「私がオススメする」じゃなくて、「世の中でオススメとされることが多い」を選定基準にしたつもりです。実際amazonでも上位にランクインしている本ばかりだと思います。
「オススメだからオススメ」という循環論法。笑
でも繰り返しになりますが、「世の中でオススメとされることが多い」ということは、
-
多くの人が内容を評価している
-
世の中的にスタンダード・常識として扱われている確率が高い
ということになると思います。なので、好き嫌いはあるにせよ、一通り読んでみても損はないんじゃないかな、と思います。
カスタマーサクセスのキャリアは本当に明るいのか
「カスタマーサクセスのキャリアは明るい」みたいな話がよく言われるようになりました。
例えば、日本で書かれたカスタマーサクセスの教科書として知られる「カスタマーサクセスとは何か」(通称「赤本」)でも
カスタマーサクセス職は
①引く手あまた!
②カッコいい!
③豊かな人生を送る!
なんて書かれています。
実際、カスタマーサクセス関連の求人は増えていますし、「カスタマーサクセスのキャリアは明るい」一定の真理をついていると思います。
でも、それはホントに本当だろうか、と疑ってみるエントリを書いてみたいと思います。
なぜ、カスタマーサクセスのキャリアは明るいと言われるのか
そもそも、なぜカスタマーサクセスのキャリアは明るいと言われるのでしょうか?
食いっぱぐれないし給料も上げやすそう
1つめは、カスタマーサクセスのスキルを身につければ、食いっぱぐれにくいし給料も上げやすそう、ということです。
赤本で言えばリテンションモデルの進展により
要は、継続率を重要指標とするビジネスモデルが発展することによって、継続率を向上させる方法論としてのカスタマーサクセスはビジネス上の重要性を増しています。
ビジネス上の重要性を増しているので、求人が増えます。なので、カスタマーサクセスのスキルを身につければ食いっぱぐれる機会がない。
さらに、カスタマーサクセスは(コストセンターではなく)プロフィットセンターなので、お給料も上げやすい。
そんなロジックだと思います。
実際、LTVと対峙してLTVベースで物事を考える経験というのは、ビジネスパーソンとして貴重な経験だと思います。
「顧客の成功」をミッションとする気持ちよさ・豊かさ
2つめは、「顧客の成功」をミッションとする気持ちよさ・豊かさです。
カスタマーサクセスが生まれる前も、他に儲かる職種はたくさんあったし、求人が拡大する職種なんてのはたくさんあったわけです。
例えば、SEとか今で言えばデータサイエンティストとか。
それらと比べて、カスタマーサクセスの魅力的なところは「顧客の成功に自社の(自分の)成功を重ねる」と言う、青臭くも気持ち良いコンセプトだと思います。
赤本風に言えば「豊かな人生を送る!」わけです。
昔から、肉食っぽい人が稼げるフルコミッション・成果給のポジションとか、データを扱えるタイプの人が稼げるポジションというのはたくさんあったと思うのです。
しかし、「共感性が高かったり優しい」を特性とした人たちが、その特性を発揮して稼げる職種というのは、必ずしも多くなかった気がします。
そういった人たちに希望を与える職種がカスタマーサクセスという職種なのかな、なんて思います。
SaaS・サブスクが拡大し、カスタマーサクセスが進化すると何が起きるのか
ところで、SaaS・サブスクが拡大し、カスタマーサクセスが進化すると何が起きるのでしょうか。
さらに進む分業と定型化
すでに一定規模以上になってるSaaSを見ていると分かりますが、事業が大きくなりカスタマーサクセス組織が大きくなると分業が進みます。
例えば、最初は1人とか2人とかで「カスタマーサクセス」とか「CSM」とか大きくくくっていたものが
8人とか超えたあたりから「オンボーディング」「アダプション」「リアクティブ」「リニューアルセールス」みたいな感じで、分業されていきます。
なぜ分業が起きるかというと、その方が効率的だからです。
そして、さらなる効率を追求して「オペレーションの定型化」が進みます
どの会社でもこれ自体は不可避だと思いますが、
特に「SMB寄りだが完全テックタッチにもできない」みたいなビジネスを抱えているほど顕著だと思います。
実際に、一定規模以上のSaaS企業のカスタマーサクセスの組織図を調べてもらえば、一定の確率で分業が進んでいることがわかると思います。
分業・定型化が生む新たな問題
ここで新たな問題が生じます。
分業が進み、オペレーションの整理が進んでいくと、現場で働く人たちはぶつ切りにされた仕組みを実行するだけの「オペレーター」になってしまうのです。
オペレーターになってしまうと、以下2点問題が生じます。
1つめは、単純にスキルが身に付きづらいことです。一定出来上がった仕組みを実行するだけの人になるからです。
仕組みを実行するだけなら、正直カスタマーサクセス経験者である必要もないし、給料も上がりにくい。
となると、「職種自体が拡大していて食いっぱぐれもないし給料あがりやすい」というカスタマーサクセスのキャリアが明るい根拠の一つめが崩れてきます。
2つめは、楽しくないことです。
想像してみてください。ものすごく定型化されたオンボーディングを毎日5件捌き続ける日々を。
「顧客の成功に自社(自分の)成功を重ねる」という、青臭く・人間臭く気持ちいいカスタマーサクセスとはちょっと違う感じになって来ませんか?
ぶつ切りになっているから全体も見えにくいし。
ちなみに昔、楽天がECを始めた時も同じような問題が発生したと聞いています。
当初「ECコンサルタント」は、ECに入る店舗を獲得する営業と獲得した店舗をサポートするカスタマーサクセスを兼ねていた(カスタマーサクセスなんて言葉は当時なかったと思うけど)。
それが一定の規模を超えたタイミングで新規獲得チームと既存サポートチームを分けた。これは、仕事が膨れ上がった現場からの要請だった。経営の要請じゃなくて現場の要請ってのが面白いですね。聞いた話だと、三木谷さんは「お前らはそういう分業された大企業が嫌でベンチャーに来たんだろう」と一度は突っぱねたらしい。
でもいよいよ規模が拡大して分業されることになった。これによって効率化は進んだけど、全体見られる人材が育ちにくくなった。仕事の楽しさはちょっと失われた。そんなストーリーです。
かくして、
カスタマーサクセスが拡大することにより、逆にカスタマーサクセス職の未来が明るくなくなる、ということになる可能性があります。
それでもカスタマーサクセスのキャリアは明るい
以上を考えると
「なんとなく流行りのカスタマーサクセス職になったら未来開けそう」みたいなケースは、ちょっとキャリアを大外ししてしまうことがあり得そうな気がします。
それを避けるためには
- 一定の裁量があるポジションに行く
- 定型化された業務をやりながらも自分なりの工夫を意識的にする
のいずれかが必要になってくると思います。両方程度問題ですが。
「一定の裁量があるポジションに行く」という意味だと
例えば、
「これからカスタマーサクセスを作っていく1人目」とか魅力的ですし、
そこまで極端だと自信ない方でも
「まだ5人ぐらいしかいなくて、これから業務拡大していく」みたいなポジションとか入るのは良いかもしれません。
「分業進んでるけど、完全テックタッチを志向していてそのPDCAを回すポジション」とかもいいですね。
逆にすでに数十人規模に大きくなったカスタマーサクセス組織や定形オペレーションを持ったカスタマーサクセスでも、しっかり自分なりの工夫をすることは可能です。
そして、重要なポイントとして、現時点で大きなカスタマーサクセス組織を持っているような会社は、
カスタマーサクセス職に自分なりの工夫を推奨する文化と仕組みを持っていると思うし、マネージャーもそういうマネジメントをしてくれると思います。
実際、某SaaS企業のCSの偉い人が「オンボーディング専属チームを作ってすごく効率的になったけど辞めた。そこで働くメンバーのキャリアを描けなくて。」なんて言ってました。
一定の揺さぶりはありつつも、メンバーのキャリアを青臭く考える「いい人」が多いのも、カスタマーサクセスの特徴かもしれませんね。
そんなこんなで、
-
分業促進によるオペレーター化という、カスタマーサクセス職の未来を奪いかねない課題はある
-
でも、小さな組織に行けばとりあえず回避できそう
-
今の所、大きな組織もオペレーター化を推奨していない
というロジックで、結局カスタマーサクセス職の未来は、現時点でそれなりに明るいと思います。
とは言え、「自分なりの工夫ができているか」「仕組みを作る側に回れそうか」という投げかけは自分なりに持っていた方が良いんじゃないかな、なんて思ってます。 どんな仕事でも同じだと思いますが。
<これからカスタマーサクセスに転職しようという方へ>
こちらのエントリーもどうぞ。
「必読」のものだけでもサクッと読んでみると、面接官と話が合い易くなる&もしかしたら面接通過し易くなるかもしれません。
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人事評価のtips :A評価には、B評価じゃない理由を書く
3-4月は人事評価シーズンです。
人事評価の運用スキルは、幸せな会社員人生を送る上でとても大切なスキルだと思うのですが、(人事の方の努力にもかかわらず)結構個人差が激しいです。評価する側・される側ともに。
ベンチャー界隈にいるとなおさら差が激しいです。
昔コンサルで人事制度作ったりもしていたのですが、当時学んだ中でも特に即効性のあるオススメのTIPSが
「A評価をするためには、B評価じゃない理由を書く」です。
そもそも評価制度は抽象度が高い
そもそも、評価制度運用が難しい理由の一つは、抽象度が高いからです。
すなわち、色々な仕事をしている人を評価するために等級や目標は
-
〇〇を高い自律性を持って実施できる
-
〇〇を適切に実施できる
みたいな感じで、抽象度高い形で定義されています。
目標設定の考え方としてはSMARTなどが知られますが、全ての目標を完全に具体的かつ定量的な目標することはできません。 抽象度が残ります。
抽象的ということは、具体の事象に適用すると解釈の余地が残るということです。
この解釈を揃えるのが大変なので、評価する側/される側両方の納得感がある評価を決めるのが難しい。ということかと思います。
A評価には、B評価じゃない理由を書く
で、色々な方法でこのギャップを埋めに行くわけですが、個人的に比較的広い層に対して即効性が高いTIPSが「A評価には、B評価じゃない理由を書く」だと思っています。
だいたい、人事評価はS-A-B-Cみたいな段階を踏むことが多いです。で、例えば
S:期待を大きく上回る
A:期待通り
B:期待を下回る
C:期待を大きく下回る
みたいな定義がされるかと思います。
で、ダメな評価の仕方の例は「とてもよくできました。なのでA。」というやつ。
「とてもよくできたならSにしてよ」に反論できない。
そうじゃなくて、↓みたいな感じで書けば、ちょっとマシになります。
-
そもそも〜〜〜という期待をしていた。
-
これに対して、〜〜〜というアウトプットを出してくれた。
-
これは期待水準を超えているのでB(「B:期待を下回る」)ではない。
-
他方で、当初期待の〜〜以外にアウトプット項目もないので「S:期待を大きく上回る」とも言えない
つまり、「Aである理由」を直接説得しに行くんじゃなくて、「Bじゃない理由」と「Sじゃない理由」ことで、A評価であることを説明する。
もちろん、これも「マシ」というレベルで、人事の専門家に言わせたら色々ツッコミどころがあると思います。
ただ、一度これをやると「じゃあどんなだったらSなんだろう/Bなんだろう?」というのを、評価する側・される側ともに想像させる、考えるきっかけができるというのがとてもいいと思っています。
そうすると、ちょっと意欲的な評価者・被評価者は、次から(評価のタイミングではなく)目標設定の時点で、事前に
-
もしこれくらいのアウトプットだったらAだね
-
ここまでやってくれたらSをつけられると思う/Sが欲しい
-
逆にこれくらいだったらBでも仕方ないね
みたいなコミュニケーションができるようになることが多い。
こうなったら、難しい理論とか知らなくても、評価のコミュニケーションの不満の半分以上は解決したようなもんです。
そんなわけで、目標設定・評価は色々な理論・方法がありますが、その中でも「A評価には、B評価じゃない理由を書く」は、当座の評価に納得感を持たせることに加えて、評価する/されるスキルを上げるという意味も含めて、結構オススメなtipsだと思います。
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ミルクボーイに「カスタマーサクセス」を語らせたら
内海「どうも〜ミルクボーイです。お願いします。」
内海「あ!ありがとうございます〜。いま、SNSでこのブログのシェア頂きましたけどね。こんなん、なんぼあってもいいですからね。ゆうとりますけどね。」
駒場「最近、うちのおかんが転職してな。」
内海「おかんすごいな。」
駒場「なんて仕事に転職したのか、仕事の名前忘れたらしいねん」
内海「自分の仕事の名前忘れてまうって、どうなってんねん。」
駒場「色々聞くんやけどな、全然わからへんねん。」
内海「ほんだら俺がね、おかんの職業一緒に考えてあげるから。どんな特徴言うてたか教えてみてよ。」
(カスタマーサクセスって)
内海「カスタマーサクセスやないかい?そら完全にカスタマーサクセスの特徴やもん。サブスクリプションが引き起こした第二の波がカスタマーサクセスって言われるくらいやし。『顧客の成功』って『カスタマーサクセス』そのものやん。てか、お前のおかん、本みたいな難しい言葉使うな。でもすぐわかったよ、こんなもん。」
(特徴・原則)
駒場「俺もカスタマーサクセスやと思ったんやけどな。おかんが言うにはな、ジッと待ってる時間が長いらしいねん。」
内海「ほな、カスタマーサクセス違うかぁ。カスタマーサクセスは、カスタマーサポートと違うて自分からお客さんにアプローチするからな。プロアクティブいうらしいねん。待ってはおらんもんな〜、カスタマーサクセスと違うなぁ。もうちょっと詳しく教えてくれる?」
駒場「おかんが言うにはな、そもそも正しい顧客に売るのが肝らしいねん。」
内海「そらカスタマーサクセスやないかい。『正しい顧客に売ろう』『チャーンの90%は販売時に発生する』ってもう青い教科書の一番最初に書いてあんのよ。売った後だけの話やってのは、カスタマーサクセスへの典型的な誤解やねん。そんなもんカスタマーサクセスや。」
内海「ほな、カスタマーサクセスとはちゃうなぁ〜。カスタマーサクセスは、サブスクリプションを支えるプロフィットセンターやもんな。KPIも、コストとか業務効率やないねん。おかん他にもなんか言うてなかった?」
駒場「オンボーディングゆうのやってるらしいねん」
内海「そらもうカスタマーサクセスや!『やってよかった!』って思ってもらう瞬間早く作るのが大事やねんあれ。それオンボーディングゆうねん。タイム・トゥ・バリューが大事やねん。航空会社以外でオンボーディングなんて言葉使うの、人事とカスタマーサクセスだけやねん。」
(他部門・数字との関わり)
駒場「けどな、プロダクト部門との関わりは全くないらしいねん。」
内海「ほな、カスタマーサクセス違うかぁ。カスタマーサクセスは、プロダクトフィードバックゆうて、お客さんの声をプロダクトに反映させたりして、プロダクト部門と色々関わるらしいからな。カスタマーサクセスだけどんなに頑張っても、本当に差別化可能でお客さんに価値を届けんのはプロダクトやしな。プロダクトは、カスタマーサクセスのおとんみたいなもんやねん。」
内海「ほなカスタマーサクセスやないか!おかん、家系図ちゃんとわかっとる?カスタマーサクセスのおとんがプロダクト、その子供が四人兄弟で、上から、長男マーケ、次男インサイドセールス、三男フィールドセールス、しっかり者の末っ子四男がカスタマーサクセスやねん。THE MODEL四兄弟ゆうねん。ちなみにあいつら外ヅラ仲いいフリしとるくせに、実はウラでたまに喧嘩しよんねんな。そんなもんカスタマーサクセスや。」
駒場「でもな、データとか横文字を見ることはないらしいねん。」
内海「ほな、カスタマーサクセス違うかぁ。MRR、チャーン・ネガティブチャーンはもちろん、ヘルススコアとか横文字のデータと睨めっこすんのが大切やねんあれ。なんで横文字なのかはわからへんねんけど、そういうもんやねん。データ見ないんじゃカスタマーサクセスちゃうかぁ。他に何かおかん言うてなかった?」
(おまけ)
駒場「そういえば、最近おかん『ミートアップ行ってくるわ』とか言って夕飯作ってくれへんねん。」
内海「そらもうカスタマーサクセスや、絶対。あいつらすぐ『ミートアップ』とか『ピッチ』とか言って集まってノウハウ共有しよんねん。ほいですぐnoteにまとめてtwitterで発信すんねん。はてなブログとか使わへんねんな。でも俺はね、あれは純粋なノウハウ共有目的だけじゃなく、採用とブランディング目的も入っとるんやと、俺は睨んどるのよ。それはそれで健全やねんけどな。俺の目は騙されへんよ。俺の目騙したら大したもんや。カスタマーサクセスに決まり!」
駒場「・・わからへんねん。」
内海「わからへんことない!おかんが転職したのはカスタマーサクセスや!」
駒場「いや、おかんが言うにはな、『カスタマーサクセスではない』って。」
内海「ほなカスタマーサクセスちゃうやないか!俺が家系図説明してる時どう思ってたん?」
駒場「いや、だから申し訳ないな、って。」
駒場「おとんが言うにはな」
内海「おとん!」
駒場「youtuberちゃうかって。」
内海「いやもう絶対ちゃうやろ!もうええわ。どうもありがとうございました。」
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カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則
- 作者:ニック・メータ,ダン・スタインマン,リンカーン・マーフィー
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2018/06/06
- メディア: 単行本
「よいイシュー」と「ウケる感覚」
イシューからはじめよ:解く前に見極める
名著「イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」」のヒットにより、「『解くべき課題の見極め』が重要である」ということは、なんとなくビジネスの世界で常識になりつつある気がします。
しかし、実感を持って「よし、俺は今いいイシューの見極めができてる!」って感覚で毎日をご機嫌に過ごせている人は多くないと思います。
このギャップを埋めるにあたり、「ウケる感覚」ってコンセプトが役に立つと思っています。
「よいイシュー」とは
前提として、「イシューからはじめよ」は、課題解決の中で「解の質」よりも「解く課題の見極め」が重要であることを説いた名著です。
そこで定義されている「よいイシュー」(=本当に解くべき問い)とは、以下の条件を満たすものを指します。
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「本質的な選択肢である」こと。つまり「それに答えが出るとそこから先の検討方向性に大きく影響を与えるもの」であること。
-
「深い仮説がある」こと。例えば、「常識を覆すような洞察」がある、あるいは「新しい構造」で世の中を説明しているようなこと。
-
「答えを出せる」こと。
「よいイシュー」にたどり着く手順
では、どうやったら「よいイシュー」にたどり着けるか。
イシューからはじめよの中では、「よいイシュー」にたどり着く方法として、イシュー特定のための3つのコツとイシュー特定の5つのアプローチを紹介しています。
すなわち
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イシュー特定のための情報収集のコツ
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一次情報に触れる
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基本情報をスキャンする
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集めすぎない・知りすぎない
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(情報を集めてもイシューにたどり着かないときの)イシュー特定の5つのアプローチ
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変数を削る
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視覚化する
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最終形からたどる
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「so what?」を繰り返す
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極端な事例を考える
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といった情報収集方法・アプローチを紹介しています。
イシューとウケる感覚
ここからが本題です。
よいイシューの定義とそこに至るアプローチは上記の通りで、異論ありません。
ところが、です。
イシュー度を高められない人が上記のアプローチだけを学んでも「なんかうまくいくイメージがない」のです。
実際、イシュー本めちゃくちゃ売れてますけど、本を読んでよいイシュー設定できるようになった人ってどれくらいいます?
そんな時、自分として大切にしている問いは、
「それ、お客さんにウケる?」
ただ一つです。これがコツだと思っています。
ここで言っているお客さんは、場合によって社長だったり上司・部下だったり同僚だったりすることもあります。要は、そのアウトプットの価値提供先(これを誰と置くかはとても大切)。
イシューをうまくとらえた時、そのアウトプットには客さんが頷く、ポンと膝を打つ感覚があります。
「刺さる」「ウケる」感覚、あるいは
「そうこれだよ、俺が欲しかったのは」「なるほど、それは思いつかなかった」と言わせしめる感覚です。
イシューをとらえたアウトプットというのはつまるところ、この意味で「ウケる」場面が想定できる/実際「ウケる」アウトプットだと思うのです。
そして、自分の仕事に「これはウケるか」を必死に問い、お客さんにぶつけ、感覚を研ぎ澄ましていく。その結果として「イシューからはじめよ」的な仕事の仕方ができるようになると思うのです。
「イシューからはじめよ」の著者も似たことを言っている
実は「イシューからはじめよ」の安宅さん自身も、別のところでこんなことも言っています。
日本を支配するマッキンゼー人脈―週刊東洋経済eビジネス新書No.24 よりマンツーマンでフィードバックをもらう以外に、イシューを立てる能力は訓練のしようがない。研究者育成は1000年前から徒弟制度で成り立っているが、ほかに方法がないからだ。自分が立てたイシューに対し、「それは価値がない。なぜならこうだからだ」とフィードバックをもらい、「ああ、そうか」と納得する。この「そうか」の繰り返しでだんだん能力が磨かれていく。その意味では、サッカーの本田圭佑選手などは、恐ろしいほどにイシュードリブンな(イシューありきの)仕事をしている。「ここでパスを出したら得点につながるのではないか」などと、一瞬ごとに判断を行なっている。そして、その結果は即座にフィードバックを受ける。これはイシュードリブンな思考力を身に付ける理想的な環境と言える。
確かにこれができたら、イシューを立てる能力が高まる気がします。
しかし、実際はこの話の前段のように
自分が立てたイシューに対し、「それは価値がない。なぜならこうだからだ」とフィードバックをもらい、「ああ、そうか」と納得する。この「そうか」の繰り返しでだんだん能力が磨かれていく。
なんて恵まれた環境にいる人はほとんどいない。
これが、冒頭に述べた
実感を持って「よし、俺は今いいイシューの見極めができてる!」って感覚で毎日をご機嫌に過ごせている人は多くない
という現象の大きな原因だと思うのです。
そこで、次善策として
「お客さんにウケるか」の感覚に重きを置き、「こうすればウケるんじゃないか」の判断を積み重ね、実際にぶつけて「ウケる感覚」を日々の業務で磨いていく、というのがいいと思うのです。
「ウケる感覚」を大事にするコンサルは意外と多いかも
ここで「イシュー」を「ウケる感覚」と言い換えると、ものすごく雑に感じる方もいるかもしれないと思います。
しかし、BCG→ドリームインキュベーターと堀紘一の懐刀と呼ばれた(らしい)古谷さんという方も、ご自身の著書の中で以下のようなことを言っています。
意外とコンサルでこういう感覚持っている人多いんじゃないかな、と思っています。
たしか海外関係のプロジェクトだったと思う。コンサルタント時代のあるとき、私は外国人オフィサーの下で仕事をすることになった。とはいえ、お客さんは日本人である。その外国人オフィサーはかなり上のレベルにいる経営コンサルタントだったが、日本語はまったくわからない。したがって、私がプレゼンをやることになった。正面にお客さん、脇にはそのオフィサーが控えている。このときは、話し終えてみて、私としてはウケたと思った。ちなみにこれは、バカウケというのとは違って、話が通った、伝わった、こちらのペースに引き込んだ、といった感触に近いものである。すると、会社に帰る道すがら、上司のオフィサーがいった。「今日のおまえのプレゼンは大変よかった。お客さんに絶対に通じているよ」この上司は日本語がわからない。私がプレゼンでどんな内容を喋ったか、理解できてはいないのである。それでも大いに満足してほめてくれたのだ。これは嬉しかった。あのとき私は、二重の意味で喜んだ。一つは、一流の経営コンサルタントに自分のプレゼン能力を認めてもらえたことに対する素直な喜び。そしてもう一つは、ほめてくれた彼もまた、プレゼンのときの言葉がうまいとか下手というのではなく、私がお客さんにウケているか否か、という感覚的なものを判断基準にしていたのを知った喜びである。
なんとなく、ここで言ってる「お客さんにウケているか否か、という感覚的なもの」と イシューを捉えているアウトプットをお客さんに見せている時の感覚って近い気がするんですよね(正確にはイシュー捉えててもプレゼン下手とかの理由でウケないこともあると思うけど、そこまでプレゼン下手な人って「イシュー」とかいう言葉使う人にはあんまりいないと思う)。
「よいイシュー」と「ウケる感覚」
というわけで、「よいイシュー」の定義や「よいイシューへのたどり着き方」をロジカルに、あるいは手順的に説明すると「イシューからはじめよ」の通りだと思うのですが、それだけだと、よいイシューにたどり着かない人も多い。
本当は、イシュー度に関する高次元のフィードバックが必要。
でも多くの人は、それが可能な環境にない。
そこで次善策として、「こうすればウケるんじゃないか」の判断を自分の中で積み重ね、実際にぶつけて「ウケる感覚」を日々の業務で磨いていく。
言ってみたら、イシュー・ドリブンならぬ、ウケる・ドリブンです。