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非人事向け「等級制度」がサクッとわかった気になる (1)等級制度のパターンと歴史

 
この記事では、人事じゃない人を対象に、「人事制度」の核の一つである「等級制度」について、基本的なパターンと歴史を「なんとなくわかった気になる」状態をゴールに設定しています。
 

等級制度とは

別記事 で解説の通り、狭い意味で人事制度というと以下の3つを指すことが多いです。
  • 等級制度
  • 評価制度
  • 賃金制度
この中で、等級制度は、社員を能力や役割などによって区分する制度を言います。
横文字で「グレード」とか呼ばれるやつですね。
 

等級制度の目的

等級制度は何のためにあるのか?
これは、等級制度が「ない」状態を考えるとわかりやすいです。
 
等級制度が「ない」状態を想定すると、以下のような不都合が生じるはずです。
  • 給与(特に基本給)を決めにくい。
  • 会社から、各人への期待(例えば、このグレードだからこれくらいやってほしい)が伝わりにくい。結果、育成もしにくい。
  • 社員から見て、給与含むキャリアプランが描きにくい。
  • 配置にあたっての公平感が出にくい。
社員5人くらいだったら、別に等級制度なんてなくてもこんな問題発生しないと思います。
でも、20人30人くらいを超えてくると、全社としての「基準」を明示しておかないと上記のような不都合が生じると思います。
公正公平な人事のために等級制度が必要ということです。
 

等級制度のパターン

「等級制度」には、実は基本的なパターンがあり、それを知っておくと転職した時とか人事制度が変わった時にその運用にすぐアジャストできるようになります。
 
教科書で説明される等級制度は、以下の3つです。
  • 能力等級
  • 職務等級
  • 役割等級
 
が、ぶっちゃけ、人事じゃない人は
  • 超雑に要約した等級制度の歴史
  • 能力等級
  • 役割等級
だけ理解していれば十分だと思っていて、以下ではそれを説明していきます。
 

等級制度の歴史

等級制度の歴史について理解するには、上記3つに加えて年齢等級まで含めて考えるとわかりやすいです。
 
先に要約すると、こういうことです。(細かい正確さは捨てた説明です)

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等級制度の歴史
 
上の絵を文章で説明すると、以下の感じです。
  • 大昔は、年功序列年齢とか勤続年数が等級や給料を決めていました。
  • それじゃ良くないよねってことで生まれたのが能力等級。「成果主義」とか言われた時代の話。
  • ところが、「能力等級」は、以下の2つの問題を発生させました。
    • 1つ目は、「能力」という見えないものを基準にする結果として、結局年功序列的な運用がされてしまうケース
    • 2つ目は、当時「コンピテンシー理論」とか言って、その会社で活躍する人の特性を何十とかいう項目で定義するってのが流行ったのですが、複雑すぎて現場の運用に乗らなかったケース
  • 上記2つの問題は、表面上は別の事象ですが、根本的には「人の内面にある能力って測りにくいよね。」って問題がある。
  • そこで導入が検討されたのが、「職務等級」アメリカとかで主流だった各人の仕事内容(=職務)を基準に等級を決める制度です。
  • 「職務等級」は、等級の基準を「人」基準から「仕事」基準に変えるという意味で画期的でした。
  • しかし、「職務等級」は、職務の詳細な記述を前提とするところ、ゼネラリスト前提の日本企業では運用が難しく、ほとんど導入に至りませんでした。
  • そこで、導入されたのが「役割等級」。ミッショングレードとか呼ばれる制度。
  • 「役割等級」は、「仕事基準」を維持しながら、職務よりももう少し緩い「役割」での記述を許容しました。例えば、「小さなチームを率いて職務を遂行する」とか。
  • そして、今(特にスタートアップ界隈で)みる等級制度のほとんどは、能力等級か役割等級。
 
大枠の人事制度の歴史はこんな感じです。
 
で、最後に書いた通り、いま多くの会社は「能力等級」「役割等級」のどちらかです。
 
なぜこの2つか。 
まず、役割等級(ミッショングレード)については、上記の歴史の中を見るとなんとなくわかると思います。
能力等級については、「能力」が測りにくいというところが問題だったのですが、そこをどうにかうまく運用して年功的運用を避ければ、ちゃんと機能する制度です。その辺運用の工夫を編み出したりして、(また役割等級には役割等級で問題があるので)能力等級も一定の支持を得ながら生き残っている、という次第です。
 
というわけで、次回、「能力等級」「役割等級」について説明をしていきます。