能力開発目標のコツ :"SMART"より有効だった3つのポイント
能力目標は、難しい
春は人事評価&目標設定のシーズンです。
評価する側/される側の両方が、結構頭を悩ませながらやっているものと思います。
特に、能力等級のような人事制度を導入している企業では「能力目標」「能力開発目標」みたいなものを設定しますが、これが難しい。目には見えない「能力」に関する目標だからです。
よく見るのが
- 「ロジカルシンキングの能力を上げる」
- 「リーダーシップを発揮する」
- 「強いコミットメントを発揮する」
みたいな目標。
・・達成された試しがありません。笑
そこで人事からはよく提示されるのが、"SMART"のフレームワークとかです。
実際に自分もSMARTのフレームでメンバーの指導してたりしてたのですが、自分の部下が"SMART"を知ったところで、うまく目標を書けた試しがありません。笑
補足:SMARTとはSpecific:具体的Measurable:計測可能Achievable:達成可能なRelated:(上位目標に)関連するTime-bound:期限を定めた目標設定をしなさい、という話です。
そこで、最近有益と感じているのは
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どういう状況で
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どういう課題について
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どういうことができるようになりたいのか
の3つを具体的に書こう、というアドバイスです。
これは別に、「5W1Hで書きなさい」みたいなツマラナイことを言っているわけではなく、理論的背景がある話なのです。
そもそも、スキルはダイナミックに変動する
これから紹介するのは、「ダイナミックスキル理論」という理論です。
この理論によると
私たちの能力は、多様な要因に影響を受けながら、ダイナミックに成長していくもの
です。
ここでいう「ダイナミック」とは、直線的でも階段状でもなく、うねうねと、伸びていくということです。
図示するとこんな感じです。
なぜダイナミックかというと、スキルの発揮には以下の特徴があるからです。
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環境依存性 :外部の環境により、能力発揮レベルは変わる
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課題依存性 :取り組む課題により、能力発揮レベルは変わる
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変動性 :自身のコンディションにより、能力発揮レベルは変わる
ダイナミックスキル理論のコンセプトは、
- (それまで)能力の[保有]に注目 →(新)能力の[発揮]に注目
- (それまで)能力は伸びていく一方 →(新)能力発揮レベルは、上がったり下がったりしながら伸びていく
と、能力開発について、大きな気づきと業務への改善をもたらしてくれました。
なので、能力の変動要素と発揮状況を書くと、能力開発目標はうまくいく
そういうわけで、能力は
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保有するものではなく、発揮するもの
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伸びていく一方ではなく、上がったり下がったりしながら伸びていく
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上がったり下がったりをもたらすのは、環境や課題や自分のコンディション
というのがダイナミックスキル理論です。
その前提に立つと、
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どういう状況で (変動要素-1)
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どういう課題について (変動要素-2)
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どういうことができるようになりたいのか (発揮状況の定義)
を目標に書くことで、うまくいくことが多いと思うのです。
例えば、
- 開発の方向を決定する顧客接点・エンジニアの合同会議の場で (状況)
- いつも顧客接点側の提案に根拠が示せていないので (課題)
- 数字で根拠を示してロジカルに示してエンジニア陣を唸らせたい (発揮状況)
こんな感じで書いてもらったら、「なんかやれそう」な気がしてきませんか?
何より、本人の経験をベースにした具体的な場面があるので、目標に対する腹落ち・やりたい感が違う。
そしてこれが書けたら、上司としては
- なぜ、それができるようになりたいのか?
- 他に、類似した場面はないか?
を聞けばいい。
そうして本人とすり合わせながら、目標設定シートに書くようないい感じの抽象的な表現は一緒に作文してあげればいい。
そんなわけで
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どういう状況で
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どういう課題について
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どういうことができるようになりたいのか
を整理する、というのは能力目標を設定する上で、上司・部下ともに有効なことが多いtipsだと思っています。
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「ダイナミックスキル理論」については、こちらでもう少し詳しく解説しています。
元の本はコチラ。
具体的なレシピも載っていて大変良書です。この本もっと注目されていいと思う。
また、人事制度諸々はこちらもどうぞ