B-log

コンサル→ベンチャー。ビジネス系のネタ。

はじめに仮説ありきは嘘だ

 

「はじめに仮説ありき」的な言説

問題解決や、仮説思考の本を読むと
何事も、最初に仮説を持つべき。
仮説とは〜〜〜。
的な説明がされることが、多いです。
でもこれ、嘘だという話をしたいと思います。
 

仮説なんて立たない段階がある

そもそもビジネスの仮説というのは、
ものすごく平たく言うと
「論点に対する仮の結論で、いちばんそれっぽいもの」です。
 
「論点」と「それっぽさ」が重要です。
 
ところが、土地勘が全くない領域では、
そもそも論点を外すことが多いし、
それっぽさを担保した仮説なんて立たない段階がある。
 
この段階で考えることは、単なる思いつきです。
仮説とは呼ばない。
 
もし、これを強引に仮説と呼んだとしても、
論点を外していたり、結論の外し幅が大きすぎると、
検証しても修正の方向さえ定まらず、
何回も修正するうちに検証回数が増えるので、答えにたどり着くのに時間がかかる。
結果、「答えに早くたどり着く」という、仮説思考のメリットが失われる。
 
コンサルが情報少なくても面白い仮説を立てられるのは、頭の良さとハードワークはもちろんですが、体系化された知見(理論や自分がみてきた会社)をベースに推論しているから、というのが私の解釈です。
 
「仮説」と「思いつき」は違うのです。
 
 

実際のリサーチには、「仮説構築のためのリサーチ」と「仮説検証のためのリサーチ」がある

実務上、リサーチは
①仮説構築のためのリサーチ
②仮説検証のためのリサーチ
という2ステップを踏むことが結構あります。
 

①仮説構築のためのリサーチ

例えば、コンサルでも、新しい業界や領域のプロジェクトにアサインされると
「3日で専門家になれ」
とか言って、数十冊の本を大量にインプットする段階がある。
 
この段階は、明確な仮説を持っているわけではないです。
(一応、例えば「この業界は、国内では伸びが限界にきてるんじゃないかな。構造的には、実は〇〇業界に似てるから、○○業界から何かパクれる要素あるんじゃないかな。」程度のあたりはつけていることも多いですが、検証可能なほど厳密なものではない)
バーっといろいろな知識をインプットしながら
「この仮説は成り立つかな」とか
発想を広げたり狭めたりしながら、仮説を構築している段階です。
 

②仮説検証のためのリサーチ

そんなインプットをしたり、インタビューをして、筋が良さそうな仮説が見えたら
初めて、仮説検証のための調査を始められます。
ここからが、厳密な意味での仮説思考の世界。
 
コンサルだって、実際はこんなもんだと思うし、
データ解析の世界でも、「探索型」「検証型」とデータ解析を分類しますよね。
 例えば↓
データ解析の実務プロセス入門

データ解析の実務プロセス入門

 
 
実務ってそういうもんだもん。
 

仮説構築のためのリサーチは、高速で終わらせる

ただ、仮説構築のためのリサーチは、超高速で終わらせるのが鉄則です。
だから長くても「3日で専門家になれ」なのです。
 
分析に時間がかかってしまう人が、陥りがちなパターンを紹介します。
世の中の仮説思考本に騙されて「よし、まず仮説を作るぞ」とか言う。
しかし、極端に不十分な情報から、トンチンカンな、さらにひどいと検証不可能な仮説「もどき」を立てる。
結果、うまく検証できないうちに、頭がこんがらがって、
「仮説検証のためのリサーチ」のフリして、実際は
「仮説構築のためのリサーチ」にとどまっていることに気づけない。
つまり、「仮説検証のためのリサーチ」ができないだけでなく
「仮説構築のためのリサーチ」と「仮説検証のためのリサーチ」の区別自体ができていないことが多いです。
 
だったら、「仮説」の定義をちゃんと勉強した上で、
「仮説構築のためのリサーチ」を自覚しながらちゃんとやったほうがいい。
 

そもそも、はじめに仮説なんかなくても、電話一本かけられる奴が勝つ

さらに、最後に一番言いたいことなのですが、
はじめに仮説なんかなくても、電話一本かけられる奴が勝つことは多い。
 
昔読んだ本で、外資系のコンサル会社でケース問題(「■■湖の外来種を減らす方法を考えて?」的な問題)を出された人が
「私だったら、まず●●大学のXX領域の専門家に電話をかけて答えを聞きます。でも、この面接の場はそういう答えは期待されていないでしょうから、今わかる情報から推定します。まず、『■■湖の外来種』を定義します。」
と、まず「そんなの聞くのが早いじゃん。行動力大事!」って言った後、いわゆるケース問題の模範解答的な答えを出したら、えらく評価された、みたいな話を見ました。
 
これは、実務でもよく見る話で、
ある課題にぶつかった時、(イケてない)コンサル出身者がデータ集めて、頑張ってレポートたくさん読んでスプレッドシートで業界分析している時、
コンサル志望の学生が嫌いがちな、泥臭く寝技も含めて人脈を広げてきた営業出身者は、
「ちょっと知り合いに電話してみる」と、すぐ携帯を取り出して、
結果として、ものすごーく筋の良い仮説からスタートして、一発目から大きく成果を出しちゃったりするわけです。
 
これは、論理的にも当たり前の話で、最初の仮説が論点を押さえていて答えに近いから、
検証の回数も少なくて済むし、多少検証方法の設計が雑でも成果がちゃんと出る。
結果、「あいつロジカルじゃない」とかグダグダ言ってるコンサル出身者なんかぶっちぎって
ずっと先に成果を出してバンバン出世していくわけです。
携帯に電話する瞬間に、厳密な意味で「仮説」なんて持ってるわけないでしょ。
 
一番良くないのは、そういう行動力がある人に対して、半端な「はじめに仮説ありき」を吹き込むことでその行動力を削ぐことだと思っています。
 
 
そんなわけで、
①分析には、「仮説構築のため」のものもある
②仮説なんかなくても、電話一本かけられる奴のほうが成果出せることはよくある
ので、「はじめに仮説ありき」は嘘だと思うのです。