B-log

コンサル→ベンチャー。ビジネス系のネタ。

目標に、正しさより覚えやすさを

本やコンサルが教えてくれない目標設定の隠れたTipsに
「覚えやすい」
というのがあると思います。
 
経営企画やコンサル出身者は理屈をこねて目標設定します。
例えば、
  • 昨年度実績がXX件、これに市場成長率のXX%を掛けて、そこに全体の受注率がハイパフォーマー水準まで上がるとすると...
  • 全社計画の売上が3年後でXX億円、そのうちこの商材は6%だが、10%くらいのプレゼンスを出したい。そのためには....
  • KPIツリーを因数分解していくと、XX部が追う指標はAとBとCとDで...
とか。
 
それはそれで正しいと思うのですが、
ある局面ではシンプルに「覚えやすい」が重要ということがある、と学んだ出来事がありました。
 

根拠なく"盛られた"目標設定

以前、とあるプロダクトのオーナーをしていたときのことです。
  • 昨年実績
  • 市場の拡大予想
  • 今後の生産性UP期待分
とか、いくつかパラメーターを設定してシミュレーションして、
自分が出したのは、確か288件という目標値でした。
 
それを当時の上司に提出したところ、
数週間後に
333件で予算通しておいたよ。
 288からの差分の根拠?期待だよ、期待w」
みたいな感じで、割増されて予算が返ってきました。
 
無茶ぶりですが、
ここまでは、まぁ成長企業でよくある話だと思います。
 
で、私はこの目標をメンバーに落とす時、どうにも理屈で説明がつかないので、
もう正直に
「正直、290件くらいまでは見えてるんだけど、最後◯◯さん(上司)の愛で333件になりました。
 これから達成する方法を必死に考えるんで、皆さんよろしくお願いします!」
と伝えました。
 
すると、あるメンバーが言いました。
「333!ゾロ目で覚えやすい!ゾロ目作戦ですね!行きましょう!」
と。
 
その場は「あぁ、根拠ないのにポジティブに受け止めてくれてありがとう」くらいにしか思っていませんでした。


具体の数字が日々の会話に

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ところが、1-2ヶ月経って、それまでと会話にちょっと違いが出ていることに気付きました。
  • 「このままのペースで333件行くんですか?」
  • 「こうすれば、333件行くんじゃないですか?」
  • 「このまま行ったら333行けるね!ゾロ目超えちゃう!」
と、【333】という目標数字が強烈にチーム内で意識されていることに気づいたのです。
目標に行かない」ではなく「333件に行かない」と具体的な数字が出るのです。
あまりに皆がいろいろなところで言うので、他のチームの人までウチのチームの目標数値を知っていたくらいです。
 
なんでだろうと思ったのですが、思い当たるのは
「【ゾロ目・333】という数字が覚えやすい」
ということくらいなのです。特に前年からやり方とか変えていないし。
 
ただ、ストレッチされた目標をしっかり意識するので、みな知恵が出るし体も動きます。
そんなこんなで、チームは当初自分が立てた288件という数値目標を上回るペースでパフォーマンスを発揮していきました。
 
単純に「覚えやすい」目標の破壊力を知った出来事でした。
 

そんなに簡単じゃないけど、「覚えやすい」はいくつかの局面では有効なオプション

もちろん、覚えやすいだけで達成できるほど、簡単な物事ばかりではありません。
目標にはそれなりの根拠・正しさが必要。設定後のマネジメントも大切。
 
ただ、目標というのはそれなりにストレッチするから設定の意味があるわけです。
ストレッチするからには、皆が意識して取り組まないと達成できません。
なので例えば、
  • メンバーの数字への意識足りない
  • メンバーが目標と成り行きの差分から発想できない
  • というか、ぶっちゃけ目標数字自体、誰も覚えてすらいない
みたいな時、シンプルに「覚えやすい」というのは、意外と威力を発揮するかもしれません。
 
あるいは、ぶっちゃけ目標なんて、ロジックで正しさ積み上げても、最後は数字鉛筆舐めて気合で数字いじることが多いワケです。
そんな時、細かい正しさを追求するのは放棄して
「どうせだったら覚えやすい数字」
というのは、覚えておいて損はないオプションだと思います。
 
単純な数字以外の面でも同じで、「覚えやすい」というのは大切。
例えば、「KPIツリーを因数分解して行くと、目標は次の7つです!」とか、ロジック的に正くてもメンバー覚えられない。
 
メンバーに意識させることが目的なので、その手段は「リーダーが繰り返し目標を唱える」とかでもいいですが、それにしても目標自体覚えやすくした方が効果は高いと思います。
 
(おまけ・後日談)
ちなみに、この【333】という目標、実は達成できなかったんです。
最後どうしても333に届かず、確か310くらいで着地したと記憶しています。
 
ただ、うまく説明できませんが、多分元々自分が立てた【288】を目標にしていたら、
まず300を超えることはなかったと、今でも思います。
正直288も怪しかったと思います。
その意味で、未達ながらも大きな飛躍の経験とともに
根拠のない【333】というゾロ目から得た学びは、自分の中で今も生きています。