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逆ヘルススコアに注目する :ヘルススコアではなく解約フラグを活用する

カスタマーサクセスのヘルススコアは、一般的にはポジティブなものの足し算方式が多いと思います。が、場合によっては、ネガティブな解約フラグに注目した方が成果が出ることがあると思います。

 

ヘルススコアは一般的にはポジティブなもの

カスタマーサクセスの「ヘルススコア」は、顧客の健康状態を示す指標のことです。

一般的には解約の先行指標として扱われ、顧客のシステム活用度合いや自社との接点回数(イベント参加回数など)、NPSなどを総合したスコアとされることが多いように思います。

一般的にヘルススコアは、ポジティブなもので足し算方式が多いと思います。 例えば、

  • ログインX回以上で +5point
  • ●●機能利用で +30point
  • 自社イベント参加で +50point

・・みたいな。

 

しかし、ポジティブなヘルススコアで歯が立たないケースもある

そもそも、ヘルススコアの最も重要な役割は「解約リスクを予測し、介入することで解約リスクを下げること」にあると思います。

しかし、上記のような足し算方式で、「ヘルススコアがうまく解約を説明できない」ってことないですか?今のヘルススコアは解約を十分説明しますか?

 

例えば、経理ソフトのように日常業務と密接不可分に使われるタイプのサービスの場合、 一度オンボーディング成功すると「徐々に使われなくなって、いつの間にか解約される」というケースはあまり多くない気がします。

むしろ「ある日パタっと使われなくなって、話を聞いてみたら既に競合にスイッチしていた」ということが結構あると思います。

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こういうケースだと、解約ボタン押す直前まで活用度は高い状態なので、ヘルススコアが悪くなった瞬間はすでに競合への乗り換えが済んでいる。ヘルススコア見てから行動しては、完全に遅い。

 

あるいは別のケースとして、一般的なポジティブなヘルススコアで解約はある程度は説明できるんだけど、顧客全体のヘルススコアが悪すぎてどこから手をつけたらいいのかわからないケース。 こういうケースでも、ポジティブなヘルススコアだけに注目するとリソースが分散してうまくはまらない。

 

他方で、解約フラグは多くのケースで明確に存在する

他方で、SaaS・サブスクビジネスには、「解約フラグ」に該当するような顧客の行動がある気がするのです。ヘルススコアの逆のイメージです。

例えば、

  • 既存顧客の料金ページ確認
  • 解約のヘルプページ閲覧
  • データエクスポートの不自然な利用(→他ソフトへ移行が始まっていたり、製品内のレポート機能に満足していなかったりする可能性が高い)
  • 画面キャプチャやマニュアルダウンロード(→キーパーソンが異動・退職で引き継ぎ資料作ってる可能性がある。キーパーソン交代は乗り換えリスクにつながる。)

のような行動は、一定確率で解約の行動に結びつくと思います。

 

つまり、一見ヘルススコアで動きがなくとも、解約の予兆に気付くことは可能なのです。

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悪どくやるなら、「解約しそうな人が踏むトラップを仕掛けておく」ことで、解約のフラグを積極的に立てに行ってリソース集中投下する、とかもあると思います。


解約フラグは、役に立つ

カスタマーサクセスをしていると、理想の使い方や関係を前提とした、加点方式のヘルススコアが歯が立たないケースにたまに出会います。

しかし、ヘルススコアの重要な目的は「解約を予測し、事前に介入すること」にあるはず。

だとしたら、そんな時の一つの選択肢として、上記のような「解約フラグ」に注目してしまった方がいいと思うのです。(特に、年間契約を導入しているケースなら、解約フラグからのリカバリ施策を発動させる時間的余裕もあるはずです。)

 

もちろん、解約フラグを見つけるだけでは長期的に解約は減らせませんし、顧客と永続的な関係は構築できません。 なので、正攻法的なヘルススコア改善はとても大切。

他方で、うまく重点化できなかったり短期でどうしても成果が必要なとき、
「カスタマーサクセス」という美しい理念からは出てきづらい発想として、ネガティブなヘルススコア、解約フラグに注目することは一定の成果を産むと思うのです。