B-log

コンサル→ベンチャー。ビジネス系のネタ。

地方拠点とカスタマーサクセス

2020年、コロナの諸々がなければ、もっと話題になっていただろうなぁと思うカスタマーサクセスの話題があります。
それは、「カスタマーサクセスの地方拠点問題」です。 

「カスタマーサクセスの地方拠点」が話題になる土台が整ってきた

そもそも2010年代、「カスタマーサクセス」という名前の組織を持って、この職種をリードしてきたのは東京のSaaS系スタートアップでした。
まだ会社自体も単一拠点のことも多く、日本において「カスタマーサクセスの地方拠点」という論点はそこまで共通の課題としては取り上げられてきませんでした。
 
しかし、2020年現在、その状況は変わりつつあります。
 
第一に、カスタマーサクセスを牽引してきたSaaSのスタートアップのビジネス・組織が拡大してきました。その結果、地方企業もその顧客に多く抱えるようになってきました。さらに顧客層も様々になってくる中で「おたくは来てくれないの?」と言われる機会も増えてきたと思います。地方顧客との向き合い方が問われるようになってきました。
 
第二に、元々全国規模で営業組織を張り巡らしている大きな会社が、カスタマーサクセス組織を導入するようになってきました。そうすると、従来の「営業部大阪支店」とカスタマーサクセス組織の関係が問題になってくるようになってきました。
 
結果として、カスタマーサクセスの地方拠点が話題になる土台が整ってきたように思います。
 

具体的なカスタマーサクセスの地方拠点のあり方

では、カスタマーサクセスの地方拠点はどのようにあるべきでしょうか?
 
前提として、「わざわざ地理的に(顧客の近くの)地方に作る」わけですから、
カスタマーサクセスの地方拠点の使命はテックタッチやロータッチではなく、ハイタッチ寄りになるのが、素直な発想な気はします。
 
その上で、敢えてパターンを考えれば、3つくらいのパターンがあると思います。
 

パターン1:ハイタッチの純粋カスタマーサクセス部隊

1つ目は、「ハイタッチでカスタマーサクセスだけをやる部隊」を地方に置くパターンです。
これは一番シンプルです。イメージとしては、東京で成果を出したCSM+若干名を立ち上げメンバーとして派遣して、そこでCSM部隊を立ち上げるイメージでしょうか。
大阪に本社がある顧客を対象に、オンボーディングやらを担当する部隊が出来上がりそうです。
難点を挙げるとすると、「カスタマーサクセス専属で、地方にそんなに人材置けない」という企業は多そうです。
また、意外と「大阪支店として」のマネジメントが難しくなることがあるのがこのフォーメーションの難点です(セールスの長とCSの長がいるわけですから、両雄並び立たず的な。逆にセールス置かずにCSだけで地方拠点作るオプションもあるんですかね...あまり想像つきません)。
 

パターン2:セールスもカスタマーサクセスもやりますよ部隊

そこで2つ目は、「セールスもカスタマーサクセスもやる部隊」です。
1つ目との違いは、組織図上「大阪支店・カスタマーサクセスグループ」を作らない、という点です。一つのチームでセールスもカスタマーサクセスも担当させます。
ヘッドカウント少なく柔軟にやれるのが、このパターンの魅力です。
そもそも東京においても「エンタープライズではフィールドセールスとカスタマーサクセス分けてない」という組織設計も多く、特にそういった組織においては、この選択肢も結構現実的だと思います。
難点を挙げるなら、スタートアップにそれだけの(セールスもカスタマーサクセスもバランスよくこなせる)人材をちゃんと地方拠点で採用・リテンションできるのか、というのは課題として残るかもしれません。
あるいは、伝統的に営業が強く、文化としてのカスタマーサクセスが定着していない組織でこのフォーメーションやると、セールスに力点が置かれすぎて「カスタマーサクセスってなんだっけ?」ってなることもありそうですね。なんか2年後とかに組織再編とか起きていそう。
 

パターン3:思い切ってロータッチ・テックタッチも

思い切った3つ目の選択肢は、地方にロータッチ・テックタッチの部隊も作ってしまおう、という選択肢です。
ロータッチ・テックタッチなら究極どこでもできるわけですから、選択肢としてはアリな気がします。実際、地方にカスタマーサポート部隊を置いていた会社が、カスタマーサポート部隊を発展させる形で、結果としてこういうフォーメーションを取っているケースとかもありますね。
ただし、難点はヘッドクォーターやプロダクトとの(物理的)距離が空いてしまうことです。これはこれでマネジメント上の課題がありそうです。プロダクトフィードバックとかも、ちょっと精度落ちそうですね。この辺は、会社としてのリモートワークへの考え方や定着度にも依るかとは思います。
ただ直感的にですが、この3つ目のパターンは、安易に採用すると特に上手く行きづらいと思います。実際こういうフォーメーション取っている会社も存じ上げてはいるのですが、難易度高い気がします。プロダクトや会社全体の方針と連動させてカスタマーサクセスの理念や方法論がちゃんと根付くのがちょっと大変かなぁ、と。
 

まとめ

アメリカとは地理的状況・交通事情も商慣習も異なる日本において、「カスタマーサクセスの地方拠点」がどう発展していくのかは、まだまだこれからの論点だと思います。
さらにコロナでオンライン商談の(特に顧客側への)普及が一気に進んだという特殊事情が加わって、この論点は少し読みづらくなった気がしています。
 
ベースになるパターンは上述の通り3つくらいな気がしていますが、会社ごとの事情もあると思うので、結構悩ましい論点だなぁ、と。
今後の議論・プラクティスに注目したいと思っています。