物事の全体像の押さえ方 〜東名阪をおさえる
コンサルの端くれをしていたり、事業会社で業界特化のビジネスをしていたりした関係で
「この業界/領域の全体像がわからない、地図が欲しい」と、聞かれることがあります。
そこでオススメの方法は一つ。
イメージは、「東名阪を押さえる」です。
(とってもウケが悪い説明なのですが、私にはこうとしか説明できない。)
「栃木は、東京のちょっと上」 〜人間の地図の理解の仕方
「『本を読んでも』全体像がわからない、地図が欲しい」と言っている人は、
本を1冊目・1ページ目から読むタイプが多い。
これは、日本という国を理解しようとするとき、
北海道、青森、秋田、岩手・・・と北から都道府県(あるいは市区町村を)を上から順に暗記するようなアプローチです。
でも、普通の人間の地図の理解の仕方は、そうじゃない。
普通の人は、
まず東京・大阪・名古屋(+政令市の位置関係)だけ、ザクっと理解する。
そして、東名阪がどんなところかだけは、ザクっと理解する。
これで「基準点」を作って、そこから広げていく。
実際、大阪の人に「栃木ってどこ?」と聞かれたら「(大阪と東京の位置関係は分かる前提で)東京のちょっと上」と、答える人が多いと思うのです。
逆説的ですが、全体像を理解するには、
まず重要なポイントとその関係だけを理解して、他は捨てるのが近道、という話です。
実際は難しい「東名阪」の見つけ方
とはいえ、基準点となる「東名阪」がわからない、というのが
実際上の一番の悩みだと思います。
これに対する解決策は2つあります。
解決策1「本棚を舐める」
例えば、新しく「問題解決」の領域に詳しくなりたいなら、
近くでビジネス書が一番置いてありそうな本屋で「問題解決」のコーナーに行って、1〜2時間かけて10-20冊の本をざっと斜め読みする。目次だけでもいい。
そうすると、8割方の本で、共通して書いてあることがあるのに、気づくはずです。
「問題の定義が大切」「MECE」「ツリー構造」「論点が大切」「仮説が大切」あたりでしょうか。
だいたい、それがその分野の「東名阪」であることが多い。
そしたら、その東名阪および周辺領域について、
自分が気に入った本を買ってちょっと読んでみる。
コンサルで新しい業界のプロジェクトにアサインされたとき「3日で専門家になれ」とか言われて、30冊くらいの本を3日で読むって作業に似てますね。
このやり方、(慣れない人には大変評判悪いのですが)
実は、誰でもやっている方法だと思うのです。
旅行行く時って、誰でも2〜3冊くらいガイドマップ見るじゃないですか。
で、もうちょっとマニアックな場所は、「銀閣寺」から徒歩5分、みたいな覚え方する。
そうすると、京都の街の地図が、なんとなく浮かび上がっていく。
これと同じイメージ。
解決策2 複数名の有識者への「3つだけ」に絞ったヒアリング
ここでポイントは、
「3つだけ」と、こちらから絞る質問をすることです。
なぜなら、本当の業界第一人者ならいざ知らず、
我々一般人が気軽に聞けるレベルの「有識者」だと
「全体像を教えてくれ」「体系的に理解できない」という質問を投げかけても、
とっ散らかって、なかなかうまい答えは返ってこないからです。
そこで、角度を変えて、
「ちょっと頭悪いんで、『3つだけ理解するとしたら』何を理解しておくといいですか?」
と投げかけてみる。
「3つかぁ、難しいなあ・・。でも敢えていうなら、、」と教えてくれる人が多いと思います。
で、「なんで、その3つなんですか?」と聞いてみる。
そうすると、だいたい、その3つが、その領域の東名阪だっていうことがわかってくる気がするのです。
東名阪から地図を広げていく
東名阪がなんとなく表現できたら、可能な範囲でその中身と関係ををしっかり理解しにいく。
そして、新しい物事が出てきたら、東名阪との関係を意識してつなげる*1
説明の仕方はなんでもいいと思うんです。
滋賀に行くルートを、名古屋経由で説明しても大阪経由で説明しても、別にいいと思うんです。
ただ、そういった思考を繰り返していくことで、物事の全体像が浮かび上がってくる。
さらに、東名阪以上に実は重要なポイントが浮かび上がってきたりする。(そういうところは、何回も出てくるので、勝手に気づく)
そうやってやっていくうちに、ある日全体像が降りてくる。
物事の全体像って、そうやって分かることが多い気がするのです。
*1:
東名阪を「見つける」に加えて、「中身と関係をしっかり理解しにいく」というのが、ポイントだと思うのですが、これを徹底できることって少ないと思うんですよね。
イメージとしては「なんでそうなってるの?」「ほんと?」を5回と言わず10回くらい自分に本気で問い続ける感じ。そうすると誰もが共有できる共通認識(=東名阪)に辿りつくから。