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総務部の本当の役割考察 〜理想の総務部は「自らシゴトを作り、自らを切り出す」

意外と共通認識がない「総務の理想形」

総務とか管理部と呼ばれる組織は、世の中にたくさんあるのですが、その「理想形」については、あまり語られることがないと思います。
セールスやマーケ、商品開発などの組織に比べて、「理想形」の共通認識がない気がします。
 
そんな背景もあり、昔、コンサルの大先輩にふと「理想の総務部って?」という問いを投げたことがあります。
その答えが
「シゴトを作るところ」
というものでした。
 
聞いた瞬間、「シゴトを作る」という表現に強烈な違和感を覚えました。
が、詳しく聞いていくと、「これはアリかも」と思えるコンセプトだったのです。
自分なりの解釈も追加して、紹介したいと思います。
 
「理想形」を語るにも共通の議論の拠り所も少ない総務部論(?)において、
議論の一つの出発点としては割と結構いい線行くんじゃないか、と思っています。
 
結論として、歴史に学ぶと、
理想の総務部は「自らシゴトを作り、自らを切り出す」という話です。
 

一般的に、総務部は何をしているのか

そもそも、総務部に含まれる機能は、例えば以下のようなものです。
※下の方は、専門の部署がある会社も多いと思います。
  • 固定資産・オフィス管理
  • 消耗品管理、備品管理
  • 文書管理
  • 社内システム運用
  • 受付・来客対応
  • 慶弔対応
  • 福利厚生
  • 会社行事運営
  • 社内広報
  • 社外広報
  • リスクマネジメント
  • 株主総会・IR
 
 
ポーターのバリューチェーンの支援活動の「色々」のうち、
 ① 少量で部門として切り出すほどじゃないもの
 ② 業務として定義しにくいもの
を総務部がやっている、と捉えるのがわかりやすいと思います。
 
その具体例が、上で挙げたような業務なのだと思います。
 
 

自らシゴトを作り、自らを切り出す:歴史に学ぶ強い総務部

 
上述の通り、総務部と呼ばれる組織の仕事は、ポーターのバリューチェーンの間接部門の「色々」のうち、
 ① 少量で部門として切り出すほどじゃないもの
 ② 業務として定義しにくいもの
と考えられます。
 
しかし、
 
① 少量で部門として切り出すほどじゃないもの
→組織の成長・変化や世の中の変化で重要課題となって業務量が増えてくると、この定義に当てはまらなくなってきます。
 
② 業務として定義しにくいもの
→世の中の変化で専門分野として確立してくることで、業務の定義できるようになってくるとこの定義に当てはまらなくなってきます。
 
という感じで、時代や組織の変化に伴い、状況は変わります。
 
これは、世の中の組織図の歴史(あるいは会社の成長)と重ねて考えると理解しやすいです。
 

総務がシゴトを作るとき

例えば、40年前の会社組織図を想像すると、「情報システム室」なんてない会社がほとんどだったはずです。
 
ところが、コンピューターの普及によって、コンピューター・情報システムの調達・運用機能が会社に必要になってきた。
初期においては、総務部が、世の中の変化や社長・事業部の「コンピューター使いたい」みたいな話を受けて、実際に導入しながら、会社として必要な調達・運用のルールや資産管理方法などを作っていったのではないかと思います。 
 
もし当時、受け身で「コンピューター」というポテンヒットを拾うにとどまらず
時代の動きや自社の事業への鋭い洞察をもとに、むしろ積極的に、役員や事業サイドに先回ってコンピューター導入を議論して、役員や事業サイドを説得し切って、事業成果まで繋げた総務部があったとしたら、
それは、理想に近い総務部だと思うのです。
 
つまり、外部・内部の変化を見逃さず、必要な課題とこれまでにない業務を定義して、経営成果を最大化するという意味で「シゴトを作れる」総務部は強い。
 
(追記)
2020年のコロナウイルスの対応でも、総務部の対応分かれた気がします。リモートワークや職域摂取を積極的に仕掛けられたかとか。受け身にならず、いい意味で自分から「シゴトを作る」ことで従業員やビジネスを守った総務部があるんじゃないかと思っています。
 

総務が自らを切り出すとき

「情報システム室」の例を続けます。
 
さらにコンピューター普及が進む中で、業務の規模と重要性が増えてきたはずです。
 
例えば、一人一台パソコンを持つようになり、インターネットが普及しセキュリティなどの課題も増えてきたかもしれません。
これくらいのタイミングで、総務部から切り出す形で「情報システム室」みたいなのが生まれた、そんな歴史をたどった会社は多かったはずです。
(同じようなことが、中小企業が大きくなる過程でも発生すると思います。例えば、中小企業で「法務」「IR」などの領域が、総務部(管理部)から独立する過程は、想像がしやすいかと思います。)
 
自ら作り出したシゴトに対して、専門化を進めれば、業務はより明確に定義できるようになります。
また、そのシゴトが時代を先取りしたものなら、必然的に少しずつ重要性と業務量は増えていくはずです。
 
そうなると、だんだん冒頭の「総務部」の定義にある「少量」「定義しにくい」という枠に収まらなくなってきます。結果として、自らを切り出して別部署とする瞬間が来るのです。
 
つまり、会社や世の中の流れを汲んで専門化を進め、最後は別組織化するという意味で「自らを切り出せる」総務部は強い。
 

自らシゴトを作り、自らを切り出す

このように
  • 外部・内部の変化を見逃さず、必要な課題とこれまでにない業務を定義して、経営成果を最大化するという意味で「シゴトを作れる」
  • そして、会社や世の中の流れを汲んで専門化を進め、最後は別組織化するという意味で「自らを切り出せる」
という2点が、理想の総務部の重要ポイントという見方が成立すると思うのです。 
 

理想の総務論の一つの出発点

この話は、ベンチャーだと「管理部」と呼ばれる組織の一部にも適用できると思っています。
 
私は総務の仕事をする人をとても強く尊敬しています。
隣人愛に溢れているから。そして、会社を支えてくれているから。
 
しかし、世の中一般的にキャリアや働きがいの文脈で「総務」という仕事がポジティブなイメージが持たれているかというと、残念ながらそうでもないと思います。
 
確かに、古い会社だと「総務は出世ルート」なんて話もあると思います。
でも、なんか多くの人にとって、「総務部の3ヶ年ビジョン」とか、ワクワク感を持って描きにくくないですか?
 
そんな中、
「自らシゴトを作り、自らを切り出す」
は、総務部の理想形の一つだと、私は思うのです。
 
当然いろいろな組織があっていいと思うので、絶対的な正解ではないかもしれないけど、議論の一つの出発点としては割と結構いい線行くんじゃないか、と思います。
 
このコンセプトをスタートとして、具体に落とす中で、総務部がワクワクするビジョンも描けるような気がしています。
 

おまけ)経営企画の役割も参考になるはず

総務部や管理部と近い組織として「経営企画」なんてのもあります。その役割について考えることも、総務部や管理部の役割を考える上で参考になるはずだと思っています。
ということで、その役割についてもまとめました↓

 

参考になりそうな本↓
経営を強くする戦略総務

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図解・部門のマネジメント 総務部管理者の仕事

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一生食べていくのに困らない 総務の仕事力

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マンガでやさしくわかる総務の仕事

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(はじめの1冊!) 総務の仕事がよくわかる本

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