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コンサル→ベンチャー。ビジネス系のネタ。

PDCAサイクルよりYWTサイクル

YWTサイクル・・何の略だと思いますか?
Y:やったこと
W:わかったこと
T:次やること
まさかの日本語。笑
 
最初このフレームワーク(?)を聞いたときに、
「なんだ、PDCAサイクルの焼き直しか」
と思ったのですが、
実は、味わい深い、ミソがたくさん詰まったフレームワークなのです。
 
<目次> 

YWT最大の特徴:最初にYが来る

PDCAサイクルとYWTの最大の違いは、Planの有無です。
 
YWTには、Planに該当する概念がない。
その結果として、
YWTにおける「わかったこと」は
「(予定外も含めて)やったことすべて」を受けて、学びを抽出していく。
 
PDCAでは、Planが最初に来る。
なので、PDCAを正しく使うと、
PDCAにおける学び(Check)は、
基本的に、仮説(Plan)と実行(Do)の結果の差分にフォーカスされる。
逆に仮説外から学びは抽出されにくい。
 
PDCAは、あくまで仮説ありきで、それと差異にフォーカスするのに対し、
YWTは、やったこと森羅万象から学びを引き出そうとする(逆にフォーカスはしない)。
なんというか、日本的。
 

PDCA」ってぶっちゃけ使いにくくないですか

今や、新卒でも「高速でPDCAを回していきたいです!(キラッ)」とか言います。
私も、会社で「PDCA回していきましょう」とか言います。
でも、本当にPDCA高速で回せる人って、結構いい会社でも、二十代で10%もいない。
 
それには、以下の3つの構造的な理由があると思うのです。
 

①Planがない仕事だって、ぶっちゃけある

そもそも若手の仕事では、本当の意味でPlanをさせてもらえないことが多い。
 
例えば、新人研修一つ一つについて、「この講座で何を学びたいか」とかのディスカッションさせてもらえない。
「黙って受けろ、ばか」の世界です。
そして配属されたところで、まずは簡単な「業務=Do」が落ちてくることが多い。
 
そもそもPが欠落しているのです。でも日々も業務(Do)は積もっていく。
 

②知識がない人が立てるPlanなんてトンチンカン

もちろん、一つ一つの業務(=Do)の中でも、小さいPDCAを回すことは可能です。
背景・目的を頑張って理解した上で、自分なりのプランを都度立てていけば。
 
実際、若くして成長する人って、こういう基本動作がしっかりしてますよね。
 
ただ、実際はちゃんと背景や目的を理解するのは大変です。
Planの背景には、いろいろな知識が前提になっていることが多いから。
しかし、背景まで丁寧に教えてくれる先輩なんてそうそういない。
多くの人は、自分で背景を理解するために一つ一つ知識をインプットする時間も能力もない。
 
逆にそんな状況で、頑張って仮説(=Plan)立てたところで、
知識がない状態で立てる仮説なんてトンチンカン。
仮説がトンチンカンなんだから、学びもトンチンカンになりがちです。
 

③そんな状況で、標準的な地頭力で使いこなせるほどPDCAは簡単じゃない

さらに、そもそもPDCAのPって、ちゃんと検証できるように立てないとダメです。
これ、ビジネス実務に適用するには、ちょっと慣れが要るんですよね。
地頭がそこそこないと、最初から使うのは無理。
 
 

結果として、こんがらがる

つまり、
①Planがない
②Planを立てる知識がない
③特筆すべき地頭もない
状況下で、「PDCA回せ」を要求すると、なんかこんがらがっちゃう。
 
それを直す(これまた標準的な地頭の)指導役も、どこから直して良いのかわからない。
そんな目も当てられない状況に、よく出くわします。
 
さらに最悪だと「PDCA回せ」って言われて、
考え過ぎて行動量自体が極端に減ることで、
一番大切な「やってみて学ぶ」機会自体を逸失していることもあります。
 

だったらYWTでいいじゃん

だったらいいじゃん、特に新人はYWTで。
 
「素直な新人」みんな好きでしょ。
悪口じゃなくて、実際「素直さ」って、成長のための大きな才能だと思うのです。
それを、半端にロジカルな「似非PDCA」で浪費なんかしないで
 
(Y)やったこと「お前、昨日何やった?全部書け」
(W)わかったこと「どう思った?何かわかったか?気づいたことや考えたことは?全部書け」
(T)次やること「じゃ、次何やる?3つに絞っていいから絶対やりきれ。」
 
これをホントに日次で回せたら、すごいスピードで成長していきます。
T(次やること)のやりきり力で、差は出ますが。
 
繰り返しますが、「似非PDCA」は、素直な学びを阻害します。
だったらYWTでいいじゃん。
 
私は30過ぎた今でも、
転職・異動とかで新しい領域にチャレンジするときは、
自分用のYWTを日次でアウトプットすることがあります。
15分以上時間をかけたものは、ランチでも、「やったこと」に入れます。
そうすると、ふとした会話からの学びが強制的に抽出されます。
 
(おまけ)YWTを最初に考えた人
ちなみに、この「YWT」、メーカーの研究所でよく使われる概念なのですが
考えたのは
日本能率協会の岡田幹雄さんという方だそうです。
 
聞いた話によると、
あるプロジェクトの最終報告前に行き詰まってたメンバーを前に
「簡単だ。『やったこと』『わかったこと』『次やること』をまとめればいい。」
と言ったとか。
 
天才肌の人で、「技術KI」というメーカー技術者の生産性向上のパッケージを完成させた人だそうです。
で、その思想は東大の伊丹敬三先生の手を経て、本にもなっています。
 
そんなわけで、賢い研究者もこんがらがった時は「YWT」使っているのですね。
 

 

場のマネジメント 実践技術

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技術者の知的生産性向上―技術KI計画

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