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コンサル→ベンチャー。ビジネス系のネタ。

AIに「渡したくない」仕事

「AIに奪われない仕事」みたいなのが話題になっています。例えば、以下のような言説です。

  • 今の日本の仕事の49%はAIやコンピューターに代替される可能性が高い
  • 実は会計士も危ないんじゃないか
  • クリエイティブな仕事は大丈夫
  • 数学的な素養を身につけてAIを使う側にまわる必要がある

社会としては必要だと思う一方で、多くの個人にとって、この類の議論ってあまり楽しくない気がします。とはいえ、この時代に生きる以上無視する気にもなれない。

そこで、代替として「AIに渡したくない仕事」という問いを提案したいと思います。

 

「AIに奪われない仕事」の問いは楽しくない

なぜ楽しくないのか。

シンプルに不安を煽られるだけになるからだと思います。

 

もう少し具体的に説明します。

 

まず「AIに仕事奪われないためには」みたいな課題設定自体が後ろ向きです。

さらに「AIに仕事を奪われないための処方箋」として「人間ならではの価値」「数学的素養」とか言われても、自分の現状からするとピンとこないし、現状とのギャップに不安感や絶望感ばかりが漂う人が多いように思うのです。

しかも、AIって多くの人にとって「よくわからんもの」です。結局のところ、何がAIにできて何がAIにできないのかなんて自分で考えてもわからないし、専門家の記事を読んでも手触り感持って理解できる人は多くない。そうなると、未知への不安ばかりが募る気がするのです。

 

「どんなにAIが発達しても、AIに渡したくない仕事」という問い

そこで、提案したいのが「どんなにAIが発達しても、AIに渡したくない仕事」という問いです。

 

そもそも、「AIに奪われない仕事」という問いはAIが主役になっています。

一般事務が仕事を奪われるとか、タクシー運転手もダメとか、会計士も実は怪しいんじゃないかとか。そういう議論が主で、最後にちょっとだけ自分が最後に出てくる。だから楽しくないし自分という個別にあった解にならない。

そうじゃなくて、もっと自分を主役にした問いの立て方があっていいと思うのです。 それが「どんなにAIが発達しても、AIに渡したくない仕事」という発想。

 

より具体的には、以下のような順番で考えてみるのも良いと思うのです。

  • まず自分にとって「AIがどんなに発達しても、AIには渡したくない仕事」を考える
  • それについて調べてみる。
    • AIにしばらく奪われなさそうならラッキーなのでそのままでいい
    • AIに奪われそうな場合、以下の可能性を考えてみる
      • 周辺領域を取り込むことで、自分の手に残せないか
      • 客を変えることで、自分の手に残せないか

 

糸井重里さんは以下のように語っています。

たとえば、猫の絵を描くと決めて、その柄や毛並みなんかを機械的に塗っていくのは単純作業かもしれない。でも、その単純作業は、すごくうれしかったりする。塗りながら、「ああ、これ、俺がいつも見てる猫だな」って、しみじみ感じたりする。こういうときに、「猫の毛並みを塗るのは人工知能がやってくれるよ」と言われても、その作業を渡したくないでしょ? その渡したくない作業や労働と呼ばれているものを、AIを語るときに、みんなが軽んじすぎていると思うのです。

糸井重里氏に聞く、雑用をAIにやらせる未来が「ディストピアかもしれない」理由

 

あるいは、私の知人で大量の文章を読まなくてはならない高度専門職の人はこう言っていました

AIによる要約は精度上がっていくだろうし、何ならAIじゃなくても資料にアンダーラインしてくれる人もいる。でも違う。大量の資料の中からアンダーラインを引いて、構造を見出していくという作業自体が自分にとっては最大の楽しみで、アンダーラインは自分に引かせてほしいんだ。

 

猫の毛並みを塗る(あるいはアンダーラインを引く)と言う作業は、見方によっては「AIに奪われる」仕事かもしれません。でも、それをやりたい人というのはいるんです。

そこで「やりたい」ことを軸にして考えれば、例えば「手描きに価値を感じてくれる人を相手にしている会社に入る」といった選択肢が浮かんでくると思うのです。

自分と関係ない有象無象の「AIに奪われない仕事」を考えるより、よっぽど健康的だし建設的な気がするのです。

 

 

AIに渡したくない仕事を考える

つまり、こういうことです。

 

AIを出発点にした記事を見すぎて不安になるのをやめる。

「AIに奪われない仕事」をベースに考えるのではなく、「自分が好きなこと」をベースにそれをAIに奪われない方法を考える。

「職業を丸ごと変えて転職する」のではなく、「客・やり方を少しだけ」変えてやり過ごせないかを考える。

 

その方が自分が好きなことがベースになるから、ちょっと楽しく物事が考えられると思うのです。

多くの人にとって今の仕事の中に「得意なこと」「楽しく思えること」の要素は何かしらあるはずだと思うのです。

 

確かに「今の仕事がすごく得意で大好き」という人はあまりいないかもしれません。
しかし、今の仕事について「何一つできることがない」「1秒も楽しい瞬間がない」という人もあまりいないと思うのです。多くの人にとって「ものすごく苦手なこと」「全く楽しい瞬間がないこと」というのは仕事にしにくいはずです。

そうだとすると、今の仕事の中に何かしら「得意」「好き」の種があるはず。
それを出発点にして「AIに渡したくないこと」というのはAI時代を生きる我々にとって、良いアプローチの一つだと思うのです。

 

「AIがどれだけ発達しても、AIに渡したくない仕事」ありますか?

 

新任マネージャーは「問題を放置する」オプションを持つべき

新任マネージャー、特に若いマネージャーが陥りがちな失敗パターンの一つに「くすぶってるメンバー、問題児を構いすぎて、成果上がらず組織も崩壊する」というのがあると思います。そんな時、「問題を放置する」オプションを持つと意外とすんなり解決するケースがある気がします。

 

「問題を放置する」とは

ここではわかりやすく、全員が同じ営業目標を追っている営業組織を想定します。

上記のような組織のマネージャーが、「未達の原因は?」と営業部長に詰められたら「Aさんの未達です」となりますし、「くすぶっているメンバー」としてAさんが指導対象になるのは容易に想像できます。

が、これが失敗のもとになるケースがそこそこある気がするのです。

くすぶってるAさんはどんな人なのか

くすぶっているAさんはどんな人なのでしょうか?

未達続きで成果を出す感覚自体わからない人かもしれませんし、もしかしたら昔は達成できていたがここ1年間何かの理由でスランプに陥っている人かもしれません。

いずれにせよ、結果が出ていない人というのは(全てではないですが)それなりの確率で負のスパイラルに陥っていることがあります。

負のスパイラルに陥っている人をV字回復させるのが難しいというのは、マネージャーに上がる人ならこれまでの経験からなんとなくわかるはずです。

他方で達成しているCさんは?

他方で、すでに120%ぐらい達成しているCさんはどんな状態でしょうか?

常時達成のエースかもしれませんし、転職組ですごく気合が入っている大物ルーキーかもしれません。いずれにせよ「ノっている」状態の人である可能性が高いです。

これもマネージャーに上がる人ならわかると思うのですが、成果が出ている人は「いいスパイラル」に乗っていることが多いものです。そういう人には機会さえ与えればどんどん成果を出していきます。

 

つまりこういうことです。

そうだとすると、組織の成果最大化という観点からすると未達のAさんを100%にするために介入するより、すでに120%の達成をしているCさんをさらに鼓舞して(場合によって商談も集中させて)、150%達成を目指させた方が、近道になるケースがあると思うのです。

すなわち、以下のイメージです。

(補足)

便宜上「問題を放置」と書きましたが、「問題」とは理想と現実のギャップです。なので、より正確にいうと「全員が達成してチーム達成」という理想状態を捨てて、「Cさんが引っ張ることで、多少未達がいてもチーム達成」と理想状態を定義し直すことで「問題(ないし問題点)を定義し直した」とするのが正確かもしれません。

 

 

様々な組織形態で検討可能なオプション

ここではわかりやすく営業を念頭に話しましたが

  • マーケティングでチャネル別分業体制をとっている組織
  • 事業企画系でテーマ・論点ごとに分担している組織

でも似たような話ができると思います。

そもそも、「マネージャーの成果」をシンプルに定義すれば、「自分が管轄・影響する組織の成果」です。(参考記事↓)

マネージャーに上がると「人と向き合わなきゃ」「成長を促さなきゃ」みたいなイメージを持ちがちですが、それはあくまで「組織成果」という観点からすると一つの手段・オプションに過ぎない。

少なくとも短期的な「組織の成果最大化」という観点からすると「問題児の更生」は難易度が高くコスパが悪いオプションのことが多いです。特に若くしてマネージャーに上がるような人は、ご自身の力で「いいスパイラル」に乗り続けていることが多いため「くすぶっている人」の状態を解像度高く理解できないことも多い。

それにもかかわらず、一番難易度の高い「問題児の更生」に手をつけてしまい、時間を取られ、成果も出ず、チームの雰囲気も壊れ、、、という失敗パターンをいくつか見てきました。

 

だったら、少なくとも短期的には「問題を放置」して、逆に自分のチームの長所に目を向けてそこをもっと伸ばす方向で組織全体のアウトプットを最大化する、というのは新任マネージャーとして持っていて良いオプションだと思うのです。

 

 

分析は、行ったり来たり

コンサルの入社直後に教わって今も覚えていることの一つに「分析は発散と収束を繰り返す」というものがあります。

先に図示するとこんな感じの話です。

曰く

  • 先にイシュー・仮説があって、その可能性を検証して潰していくのが理想。その場合、図の左側の感じで分析が進むとどんどん可能性が狭まって答えに近づいていくイメージになると思う。
  • でも実際は、分析している途中で「あ、こっちの方が切り口鋭いな」って気づいたり、最初に立てた問いが間違っていることに気づいて手戻りしたりすることも多い。その場合、図の右側のイメージで答えに近づいたり離れたりを繰り返す振り子みたいなイメージになる。
  • もちろん、事前にキレイにイシュー分析ができていてその通り進むのが理想だし実際それができる人はいるけど、(特に新人のお前らは)そうは行かないのが現実。
  • そうなったときに、最初の仮説や構造に固執して事実やデータを曲解するのが最悪。情報を素直な目で見て、必要に応じて可能性を広げ直すことが大切。で、多分俺も間違えるから分析実務でデータと睨めっこする君らが違和感に気づいたら遠慮なく言ってほしい。

こんな感じの話だったと思います。

なんとなく「分析は『狭める』一方の行為」だと思っていた自分にとって、目から鱗の教えでした。

 

いくつか大事なポイントがある気がするので、詳述していきます。

 

そもそも分析はイシュードリブン

前提として、分析は何かと何かを比較してイシュー(その場で白黒つけるべき課題)を解決するために行われるべきものです。

仮に上司から「●●の市場規模調べといて」とイシューがなさそうなタスクが投げられてきた時でも、 本当は「●●の市場は1,000億円以上の規模があるのか」「●●の市場は拡大しているのか縮小しているのか」「●●の市場は、実は▲▲の市場より小さいんじゃないか」など、何かしらその場で白黒つけたい課題があるはずです。

もっと日常業務的なところでも同じ話です。

例えば、「明日のテレアポはどこにアタックすべきか」みたいなレベルでも「アポ数とアポ率どっちが課題なのか?」「その課題を解決できそうなのはAリストかBリストか」みたいに、白黒つけるべき課題はあるはずです。

イシューがない(あるいはイシュー度の低い)分析は、悪です。

でも、イシューや仮説を外すこともある

でも、実際はイシューや仮説は外れることがあります。

そもそもイシューを的確に当てる能力というのは、かなりのトレーニングが必要です。「イシューからはじめよ」で有名な安宅さんも以下の通り書いています。

これは「イシューアナリシス」と呼ばれるコンサルティング現場では秘宝のように鍵とされている方法論で、体系的にトレーニングをしても、実際には日々の実践で身につける以外の方法はない。基礎レベルであっても身に付くのはそれなりの時間がかかるし、その課題についてのセンスがあるほど、そして経験を積むほど、レベルが上がる。  
圧倒的に生産性の高い人(サイエンティスト)の研究スタイル より)

逆にいうと、日々の実践でイシューアナリシスが身についていない段階や、課題についてセンスや経験がない領域では、イシューや仮説を外すことはたくさんあります。

 

仮説が外れたときに一度視野を広げる

そんなわけで、実際にはイシューは外れるし仮説も外れます。

仮説を否定する分析結果が出たときに、一番ダメなのがデータを曲解してどうにか最初の仮説をサポートするかのように見せてしまうことです。

次にダメなのが、最初の仮説の構造に固執して周辺で言えそうなことを言ってお茶を濁そうとするパターン。

 

本当は、仮説が外れたらただそれを素直に受け入れて、仮説やイシューツリーを組み立て直さなくてはいけない。

例えば、売上低迷の理由を<地域別>で分析しても仮説通りの結果が出なかった時に、

  • じゃあ、地域 x 商品別で見たらどうだろう?
  • 地域 x 商品別で見たら切れ味よかった。特に影響強かった商品群XXは▲▲業界でよく売れているはずだから、実は商品というより顧客の業界別の方が切れ味鋭いのでは?そうすると、地域って切り口はもはや不要なのでは?
  • そうだとすると、イシューツリー全体の組み替えが必要で….

と、次の仮説にどんどん移っていくことが大切だという話です。

このタイミングがまさに、分析が「広がる」瞬間です。(広がるは広がるのですが、前の仮説が否定されているので多くの場合は振れ幅は前回より狭くなる。)

 

分析は発散と収束を繰り返す

そんなわけで「分析は発散と収束を繰り返す」というコンサル入社数週間で教わった教えは、今も自分の中にしっかり残っています。

 

 

実務上のTips

以下は若干の蛇足・おまけ的内容です。

「分析は発散と収束を繰り返す」というのは、「仮説が外れたらすぐ次の可能性に行こうぜ」というある種当たり前の話なのですが、その後の長い実務経験の中で、なるほど確かにこれができていないケースが意外とあるということを実感してきました。

そして失敗するケースをみていると、そこから導かれるTipsみたいなものがある気がしてきました。具体的には以下の3つです(MECEなまとめではなく「あるある」な話として)。

  • データを少し広めに準備しておく(広げやすい形でデータを作っておく)
  • 余裕をもったスケジューリング(Quick & Dirty)
  • 単純に分析の速度を上げる

以下順に解説していきます。

 

データを少し広めに準備しておく(広げやすい形でデータを作っておく)

実務上、外れた最初の仮説にこだわってしまうパターンの一つとして「次の仮説を分析するのに必要なデータがない(集めるのが面倒)」というケースがあります。

先ほどの例でいうと、<地域別>で売上低迷を説明する仮説が外れた時に、<商品別><顧客業界別>のデータが用意されていないと「本当は商品別で見た方がいい気がするけど、データセット作り直すのが面倒臭い(データ集め直すと納期に間に合わない)」となってしまいがちです。

最初にデータを集めるときに、仮説が外れた時を想定して広めにデータを集めておくor後からデータを足しやすい形でデータセットを準備しておく、というのは実は大切なポイントな気がします。

余裕をもったスケジューリング(Quick & Dirty)

もう一つ最初の仮説にこだわってしまう(あるいはその周辺で何かを言ってお茶を濁そうとする)パターンとして、「本当はイシューツリーを大きく組み直さなきゃ行けないけど、納期まであと3日しかない」みたいなのがあります。

(これは本当は「イシュードリブン」の一部なのですが)「ここの仮説外れたら全部やり直しだな」というポイントがあるのであれば、雑にでも早めに結論を出してみた方がいいです。そのために、影響が大きい論点の見極めと早く雑に結論を出す検証方法を考えることが大切。

逆説的ですが、イシュードリブンでの分析の経験がない人ほど、最初の仮説検証をギリギリのスケジュールで組む気がします。

余裕持ったスケジュール大切。

単純に分析の速度を上げる

以上の前提として、単純な分析の速度、という変数も重要な気がします。

例えば「地域別に売上を分析する」と言ったときに、「比較ってどうやるのか、平均値?合計?その差分が有為かの検定方法は?」的な数学っぽい話から、単純にExcelで関数知ってるか/操作早いか、みたいなのも仮説検証の回数を増やす上で地味に重要です。雑に言えば、Excelでピボットテーブルをスムーズに使えない人がQuick&Dirtyなんてできないことが多いんです。

で、これは正直ある程度座学したら、あとは場数な部分もあるので、早くなるまでは多少睡眠時間削っても頑張るしかないのかなあ、と思います。

(「イシューからはじめよ 」で言う犬の道っぽいですがこれは許されていい気がする。筋トレみたいなもんです。コンサル会社のアソシエイトがショートカットキー使いまくるのも近い話。)

 

 

本当は、イシュー・アナリシスをちゃんとできるのが一番大切です。

イシュー・アナリシスを本当の意味でできていれば、tipsで触れたような内容はまさに瑣末でしかない。

しかし、上でも述べた通りイシュー・アナリシスはそう簡単にできるようにならない。そうである以上、多くの人にとってtipsのような内容もそれなりに重要になるのではないかと思ってます。

評価は他人がする :「頑張ってるのに評価されない」に対する人事評価の原則

「頑張ってるのに評価されない」への対処は難しい

人事評価において重要なのに、研修等で触れられない原則に
「評価は(自分ではなく)他人がするもの」
というのがあると思います。

人事評価面談で

  • 「僕はこんなに頑張ってるのになんで評価してくれないんですか!?」
  • 「部下の〜〜さんは正直自己評価がズレてて、評価面談するの気が重いなぁ...」

みたいな場面、経験したり見たりしたことないでしょうか?

このような課題は、評価面談のテクニックで回避できることもありますが、
そもそも「評価は他人がするもの」という仕事の原則がしっかり理解されていないことに由来するケースも多い気がします。つまり、「自己評価が甘いこと」を直接是正するより「評価は他人がするもの」をしっかり伝える方が大事な気がしています。

人事評価って「自己評価」するから分かりにくいのですが、「自己評価」はあくまでズレを解消するためのプロセスでしかない。最終的な「評価」をするのは他人(上司や会社)なんです。

ここで難しいのは、
上司部下の関係だと、上司 = 評価する側になるので、「評価は他人がするもの」と言いづらいところ。
「お前が頑張ったと思っていようと、評価するのはお前じゃない。俺だ。」
って、面と向かって言いづらいですよね。

そしてそもそも、「なぜ、評価するのは他人なのか」をキレイに言語化するのも難しい

 

そんなことを考えていたとき、以下のエントリーを見つけまして目から鱗でした。

「ストーリーとしての競争戦略」で有名な一橋の楠木先生のエントリーです。

『仕事の一般原則』と銘打って、仕事(特に研究のようにふわふわしたもの)の原則を10か条で紹介しています。

元々は仕事の原則についてまとめたものだと思うのですが、冒頭の「僕頑張ってるもん」的なすれ違いに対して、深い示唆を与えてくれる内容になっています。

以下、人事評価の文脈に照らしながら10か条を引用・紹介したいと思います。3つのセクションで理解するとわかりやすいです。

 

セクションI:仕事と趣味は違う

最初の2か条はこれです。

1.「仕事と趣味は違う」の原則

自分以外の誰か(価値の受け手=お客)のためにやるのが仕事。自分のためにやる自分を向いた活動はすべて「趣味」。趣味は家でやるべき。仕事と混同してはならない。

2.「成果は客が評価する」の原則

であるからして、仕事はアウトプットがすべて。ただし、アウトプットのうち、客が評価するものだけを「成果」という。例えば、商品をつくる。これはアウトプット。その商品が客に喜ばれ、必要とされ、受け入れられる。これが成果。仕事の達成をアウトプットの量に求める。このすり替えが自己欺瞞。こうなると仕事が趣味になってくる。仕事の自己評価の必要は一切なし。自分が納得する仕事をしていればよい。あとは客が評価をしてくれる。評価されなければそれでおしまい。

「誰かのためにやるのが仕事」であって、そうである以上、評価はその「誰か」がするんです。

好きなことをやるのは自由。でもそれを評価されて報酬(お金だけでなく「賞賛」「やりたい仕事」とかも含む)が欲しいと思ったら、それは報酬を出す側に主体はあるのです。

労働に対価を出すのは会社なので、会社の代理としての上司が評価主体になるわけです。(ここで上司が正しく会社を代理できていないケースでは、一階層上に抗議したりするしかないです。それでも変わらない場合は、下記の第3原則以降の話に移管します)

 

ここで面白いのは

  • 「仕事」と「趣味」を峻別して、「自分のためにするのは趣味」と切り捨て
  • 「アウトプット」と「成果」を峻別して、「客が評価するものだけが『成果』」とし
  • 「自己評価」と「納得」を峻別して、「自己評価の必要は一切なし」と太字にしてまで言い切る

ところです。実に清々しい。

 

さらにこのエントリーの面白いところは、以下が続くところです。これにより「仕事と趣味は違う」「成果は客が評価する」の本当の意味が立体的に浮き彫りになります。

 

セクションⅡ:客を選ぶのはこっち

3.~7.はこれです。

3.「客を選ぶのはこっち」の原則

それでも、客を選ぶのはこちらの自由。全員に受け入れられる必要なし。つーか、それはほぼ不可能。こういう人のためにやるというターゲットをはっきりさせて、その人たちに受け入れられればそれでよし。

4.「誰も頼んでないんだよ」の原則

ターゲットの選択からやり方から何から何まで仕事は自由意志。誰からも頼まれてない。誰にも強制されていない。すべて自分の意志でやっていること。仕事が成果につながらないとき、他者や環境や制度のせいにする。これ最悪。仕事の根幹が台無しになる。

5.「向き不向き」の原則

自由意志で納得のいく仕事をしていればよいのだが、どうしても自分で納得がいくアウトプットが出ない、もしくは、アウトプットが出ても客が評価する成果にならない、これを「向いてない」という。つまり才能がない。資質、能力がない。これはどうしようもない。だから、

6.「次行ってみよう」の原則

向いていないことが判然としたら、さっさと別のことをやるべき。つまり「ダメだこりゃ、次行ってみよう」。ただし、だからといって一からやり直したり大転換する必要なし。本当に向いてないことには、人間そもそも手をつけないもの。次に行くべきところは意外と近くにある。

この辺りは、会社で語るときは少し難しいですね。特に冒頭述べたような「僕頑張ってるもん」的なジュニアなメンバーが相手だと。

「評価に納得いかないなら客変えろ(=会社やめろ)」って言いづらいし、「客を選ぶのはこっち」って信じられる人ばっかりじゃないと思うから。「誰も頼んでないんだよ」も受け入れにくい人は結構多いと思います。

 

逆に言うと、「評価するのは客」だけで「客を選ぶのはこっち」がないと、窮屈になっちゃうんですよね。

コンサル出身とかで「評価するのは客」が身に染みてる、かつ、実力もある(=客である職場を選べる)上司が、くすぶってるメンバーを持った時に「評価をするのは客」を要求しすぎてメンバー側が疲れちゃうケースをよく見ますが、その根本の一つは「客を選ぶのはこっち」への感覚の違いがあるのかもしれません。

 

セクションⅢ:自分に残るのは過程

最後の4つはこれです。

7.「自分に残るのは過程」の原則

仕事のやり甲斐は、自分の納得を追求する過程にある。客にとっては結果(成果)がすべて。仕事の成果を自分で評価してはならない。しかし、自分の中で積み重なるのは過程がすべて。仕事の過程で客におもねってはならない。おもねると、短期的に「成果」が出たとしても続かない。

8.「仕事の量と質」の原則

客側(自分ではなく)で記録に残る成果の集積を「仕事の量」という。これに対して、客の記憶に残る成果が「仕事の質」。一方で、自分の記憶に残る成果、これを「自己満足」という。自己満足はわりと大切。ただし、客の評価抜きに自分で手前勝手に足し合わせた「量」に目が向いてしまうと、「自己陶酔」。何の意味もない。

9.「誘因と動因の区別」の原則

仕事の量を左右するもの、これを「誘因」(インセンティブ)という。ただし、誘因では仕事の質を高められない。仕事の質を左右するのは「動因」(ドライバー)。誘因がなくても自分の中から湧き上がってくるもの、それが動因。

10.「自己正当化禁止」の原則

自己満足は仕事の動因となり得るが、あくまでも舞台裏の話で、表に出してはならない。自己満足について客に同意や共感を求めるのは論外。それは「自己正当化」。みっともないことこの上なし。

 

これまた面白い。

この辺りは、むしろ上司側の方がグッと刺さる部分ある話かもしれません。自己正当化禁止とか誘因と動因の区別とか。

 

人事評価にも役立つ「仕事の一般原則」

そんなわけで、仕事の一般原則 は元々は研究者の仕事を中心にした「仕事の原則」として書かれたエントリーだと思うのですが、

  • 「僕はこんなに頑張ってるのになんで評価してくれないんですか!?」
  • 「部下の〜〜さんは正直自己評価がズレてて、評価面談するの気が重いなぁ...」

といった人事評価のトラブルに対して、結構役に立つと思うのです。

 

人事評価シートって、あくまで最終的な「評価」をするのは他人なんです。自己評価は、ズレを解消するためのプロセスでしかない。評価と納得は別なんです。

 

評価してもらいたいなら、相手の評価軸に合わせるっきゃないのです。

ただ、それと自分が何を大切にするかは別問題。

 

「僕頑張ってるもん」的なメンバーについては、「自己評価が甘いこと」ではなく「『評価は他人がするもの』だとわかっていないこと」が問題の本質であるケースが多いと思うのです。ただ、「評価するのは客」だけで心のどこかに「客を選ぶのはこっち」がないと窮屈になっちゃう。

実際はメンバーに伝えようとすると、出すタイミングとか伝え方が難しい話なのですが、自分だけだとうまく言語化できない話を綺麗に整理されているエントリーなので、たまに見直すようにしています。

 

楠木先生の本は、以下のいずれも面白いです。

 

メンバーが「いない」ところでメッセージを発していないか

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「マネジメントのメッセージがメンバーに伝わってない」というのは、会社組織でよくある悩みの一つです。
全社レベルだけでなく、部門レベル/チームレベルの各階層で起きている問題です。

その理由の一つに
「実は相手が『いない』ところで、メッセージを発している」
というケースが意外とある気がしています。

 

「政治はなぜ僕らから遠いのか」

こう思うきっかけになったのは「イシューからはじめよ 」「シン・ニホン」で有名な安宅和人さんのブログです。

政治はなぜ僕らから遠いのか」と題した記事で、政治不信の理由として 「人のいないところ、発言を信用してもらえないところ」で政治コミュニケーションが行われていること、を指摘しています。

以下、一部抜粋・引用します。

市民、つまり多くの人が集う場所はどこにあるのか、が考えるべき最初のクエスチョンだ。当然のように渋谷や新宿がそうだ、と考える時代は終わってしまった。TVや新聞などのマスメディアだと思う時代も終わってしまった。これらは確かにかつては最大級の人が集まるプラットフォームだったが、今はそうではない。

ではどこに行ったのか、、それはこのブログを読まれている人なら自明な通り、明らかにインターネット、スマートフォンの中にあるサイバー空間の中だ。

多くの人において、情報消費、メディア、対人接点時間において、インターネットがもうTV、新聞、電話の数倍以上になって久しい。TVを見る時間の数倍、スマホを触り、街に出る時間の数倍、スマホアプリやYouTubeNetflix、AppleTVなどで情報を得ているということだ。(中略)

最近の日経による調査データを見ても、マスコミを信頼できる人は9%に対し、インターネットを信頼できると答えた人は24%、マスコミを信頼できない人は47%に対し、インターネットを信頼できないと答えた人は約三分の一の17%だ。

なのに、街頭演説やリアル空間でのイベントに集中し、媒体的な接点はテレビや新聞が主というのが現在の政治活動のほとんどだ。(中略)

一言で言えば、人のいないところ、発言をそのまま信用してもらえないところで政治は行われているのだ。

 

相手がいないところや、相手が不信感を抱く媒体で発信をしても信用はしてもらえない、と。
盲点のようですが、確かに河野太郎氏を見ても「有権者が『いる』ところでコミュニケーションをする」ことは非常に重要な気がします。

 

メンバーが「いない」ところで、メッセージが発せられている

翻って、会社のマネジメントのメッセージは、伝えたい相手がいるところで発せられているのでしょうか?

会社・部門の方針は、全社や部門のキックオフなど、メンバーも出席するところで発せられています。一見問題はなさそうです。

しかし、本当に問題ないのでしょうか?

 

「トップのメッセージがメンバーに伝わってない」という時、その意味合いは「日常業務の中で、方針が意識されていない」ということだと思います。

ところが、例えば役職を持たないメンバーの多くにとって、
全社総会や部門総会というのは日常業務から離れた異空間のようなもの。そこに「日常業務を行う私」はいない気がするのです。

さらに言うなら、会議がリモート化される中で、日常業務に忙しいメンバーがキックオフや総会の話を本当に聞いているかは怪しい。内職してるメンバーも正直多いと思うし、もっと正直言えばスマホいじってるかもしれない。飯食いながら聞いてるメンバーもいると思う。

誤解を恐れずいえば、トップが情熱を持っても
総会に、一般メンバー(の心)は「いない」
のです。

 

メンバーが「いる」ところに、こちらから行くべき

とはいえ、本来的にはメンバーだって上の方針が気になるはずなんです。日々の業務や評価に影響するから。なので、メンバーが「いる」ところでメッセージを発せれば伝わるはず。

じゃあ「日常業務を行う私」はどこにいるかというと、基本的には「その人がアウトプットするところ」にいると思います。

  • 会議であれば、聞く一方じゃなくて自分も話す会議
  • slackであれば、自分も発言するchannel
  • 自分自身が計画ドキュメントを作るプロセス

こういう場所(↑)にマネジメントの側が入って行ってメッセージを伝えることが、メンバーにメッセージを伝える肝になるのではないかと思います。

もちろん、社長が全ての会議に入っていくことはできない。でも、社長以下マネジメント層がそれぞれ2~3階層下まで意識して「メンバーがいるところ」に赴くことは可能だと思います。
相手が発言できる場で伝えることで、フィードバックも受けやすくなる。

 

例えば、事業部のキックオフが終わった後、事業部長は各チームの定例を巡回してもいい。「キックオフで話したのは〜〜ということだったけど、マーケのチームに特に関係するところはココ。なぜなら〜〜と言うことなんだけど、●●さんイメージできる?」と聞いてみるイメージです。

チーム長などより現場に近い管理職なら、1on1の場で「チームの方針伝わった?」と個別に聞いてみてもいい。

 

もちろん、トップのメッセージが伝わらない理由は他にもあるかもしれません。

ただ、相手が「いない」ところでコミュニケーションとっても、絶対に伝わらない。
そして、相手(の心)がいるところで話すには、「相手を連れてくる」より「相手がいるところに行く」方が実は簡単確実な気がするのです。

「ちゃんと聞け」と言って心をこっちに持って来られるなら「トップのメッセージがメンバーに伝わってない」って問題はそもそも発生しないはず。

会社の中で偉くなってくると忘れがちなのですが、往々にして全社や部門の大きな会議にメンバー(の心)はいないし、そう簡単に連れて来れない気がするのです。

 

メンバーが「どこにいるのか」に敏感になる

相手がいないところでコミュケーションとった気になるのは、有権者がいないところで政治コミュケーションをとっているのと同じで「遠さ・不信感」を産む原因になります。これは社長だけでなく、部長やグループ長のような中間管理職でも同じ。

嘘みたいだけど、1対多の、特にオンラインのコミュニケーションだと、こういうことが本当に起きる気がします。

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そうだとすると、マネジメントは「メンバーがどこにいるのか」に敏感になり、自分が普段いるコンフォートゾーンを抜け出して、メンバーがいる場所に飛び込んでいく必要があると思うのです。

 

 

 

逆ヘルススコアに注目する :ヘルススコアではなく解約フラグを活用する

カスタマーサクセスのヘルススコアは、一般的にはポジティブなものの足し算方式が多いと思います。が、場合によっては、ネガティブな解約フラグに注目した方が成果が出ることがあると思います。

 

ヘルススコアは一般的にはポジティブなもの

カスタマーサクセスの「ヘルススコア」は、顧客の健康状態を示す指標のことです。

一般的には解約の先行指標として扱われ、顧客のシステム活用度合いや自社との接点回数(イベント参加回数など)、NPSなどを総合したスコアとされることが多いように思います。

一般的にヘルススコアは、ポジティブなもので足し算方式が多いと思います。 例えば、

  • ログインX回以上で +5point
  • ●●機能利用で +30point
  • 自社イベント参加で +50point

・・みたいな。

 

しかし、ポジティブなヘルススコアで歯が立たないケースもある

そもそも、ヘルススコアの最も重要な役割は「解約リスクを予測し、介入することで解約リスクを下げること」にあると思います。

しかし、上記のような足し算方式で、「ヘルススコアがうまく解約を説明できない」ってことないですか?今のヘルススコアは解約を十分説明しますか?

 

例えば、経理ソフトのように日常業務と密接不可分に使われるタイプのサービスの場合、 一度オンボーディング成功すると「徐々に使われなくなって、いつの間にか解約される」というケースはあまり多くない気がします。

むしろ「ある日パタっと使われなくなって、話を聞いてみたら既に競合にスイッチしていた」ということが結構あると思います。

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こういうケースだと、解約ボタン押す直前まで活用度は高い状態なので、ヘルススコアが悪くなった瞬間はすでに競合への乗り換えが済んでいる。ヘルススコア見てから行動しては、完全に遅い。

 

あるいは別のケースとして、一般的なポジティブなヘルススコアで解約はある程度は説明できるんだけど、顧客全体のヘルススコアが悪すぎてどこから手をつけたらいいのかわからないケース。 こういうケースでも、ポジティブなヘルススコアだけに注目するとリソースが分散してうまくはまらない。

 

他方で、解約フラグは多くのケースで明確に存在する

他方で、SaaS・サブスクビジネスには、「解約フラグ」に該当するような顧客の行動がある気がするのです。ヘルススコアの逆のイメージです。

例えば、

  • 既存顧客の料金ページ確認
  • 解約のヘルプページ閲覧
  • データエクスポートの不自然な利用(→他ソフトへ移行が始まっていたり、製品内のレポート機能に満足していなかったりする可能性が高い)
  • 画面キャプチャやマニュアルダウンロード(→キーパーソンが異動・退職で引き継ぎ資料作ってる可能性がある。キーパーソン交代は乗り換えリスクにつながる。)

のような行動は、一定確率で解約の行動に結びつくと思います。

 

つまり、一見ヘルススコアで動きがなくとも、解約の予兆に気付くことは可能なのです。

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悪どくやるなら、「解約しそうな人が踏むトラップを仕掛けておく」ことで、解約のフラグを積極的に立てに行ってリソース集中投下する、とかもあると思います。


解約フラグは、役に立つ

カスタマーサクセスをしていると、理想の使い方や関係を前提とした、加点方式のヘルススコアが歯が立たないケースにたまに出会います。

しかし、ヘルススコアの重要な目的は「解約を予測し、事前に介入すること」にあるはず。

だとしたら、そんな時の一つの選択肢として、上記のような「解約フラグ」に注目してしまった方がいいと思うのです。(特に、年間契約を導入しているケースなら、解約フラグからのリカバリ施策を発動させる時間的余裕もあるはずです。)

 

もちろん、解約フラグを見つけるだけでは長期的に解約は減らせませんし、顧客と永続的な関係は構築できません。 なので、正攻法的なヘルススコア改善はとても大切。

他方で、うまく重点化できなかったり短期でどうしても成果が必要なとき、
「カスタマーサクセス」という美しい理念からは出てきづらい発想として、ネガティブなヘルススコア、解約フラグに注目することは一定の成果を産むと思うのです。

 

 

 

初回1on1の始め方

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異動・転職などで上司or部下が変わった時、初回の1on1でのMtgというのはお互い緊張するものです。

初回1on1のtipsは色々なところで整理されていますが、

汎用性のあるおすすめは

「いつからこの部署(会社)で働かれてるんでしたっけ?」から始めることです。

 

本来初回の1on1で聞きたいこと

本来、初回の1on1で聞きたいことは、大体以下のような事項かと思います。

ただ、上記のようなことをいきなり聞こうとすると、部下側が警戒して話が弾まず、本音が聞けないこともあります。

そこで、世の中的にはアイスブレークとかが推奨されているわけです。それが上手にできる人はそれでいいです。

でも、プライベートの話を振ってみたら、プライベートを話したがらない部下のこともあるし、逆に向こうの趣味がマニアックすぎて全然盛り上がらなかったりすることもある。笑

そこでお勧めしているのが

「いつからこの部署(会社)で働かれてるんでしたっけ?」

です。

 

誰でも語りやすく、本題につながりやすい

「いつからこの部署(会社)で働かれてるんでしたっけ?」という問いの良いところは2つあります。

誰でも語りやすい

1つめは自分のこと&仕事という共通の話題なので語りやすいこと。

アイスブレークで盛り上がらないパターンはいくつかあるのですが、基本的には「共通の話題にならなかった」というのが多いと思います。

その点「いつからこの部署(会社)で働かれてるんでしたっけ?」という問いの答えば自分のことを話せばいいので、ほとんどの方が普通に語れます。

「3年前に入社しまして、最初は営業にいたのですが、、」

と語り始めてくれる方がほとんどだと思います。

仕事という共通の話題ですので

「当時って営業部長誰でしたっけ?」とか、話も広げやすいと思います。

また、意外と上司にプライベートを語りたがらないメンバーも多いものです。なのでいきなりプライベートに踏み込みすぎない方がいい。その辺の探りを入れる意味でも、この質問はおすすめです。

 

本題に繋ぎやすい

2つめは、「本来の話題」への繋ぎがいいことです。

冒頭申し上げたとおり、本来最初の1on1で聞きたいことは

あたりかと思います。

最初に「いつからこの部署(会社)で働かれてるんでしたっけ?」から始めれば、例えば

  • 「最初は営業で、去年からこの部署にいるんですね。ちなみに、今って具体的にどんなことやってるんでしたっけ?(今の業務内容)」
  • 「最初は希望の部署じゃなかったんですね。ちなみに、うちの会社に入ったのってなんでなんですか?(モチベーションの元)」
  • 「〜〜という業務をやってきたのですね。これからやってみたい事とかありますか?(モチベーションの元 / キャリアプラン)」
  • 「かなり色々やってきたと思うのですが、これまでやってきた業務でこれは楽しかった/嫌だった、というものはありますか?(モチベーションの元)」
  • 「●●課にいた時って帰りも遅かったんじゃないですか?その時もうお子さんいたんでしたっけ?(ワークライフバランス)」

と、本来聴きたい話題へと繋ぎやすいです。

相手が転職間も無い人なら「前職は何されてたんでしたっけ?」とかでもいいと思います。

 

1on1以外の場面でも使える汎用性の高い質問

実は「いつからこの部署(会社)で働かれてるんでしたっけ?」の問いは、汎用性が高く、活用場面は部下との1on1だけでないと思います。コンサルでもインタビューでこの問いを使う人がいます。

 

基本的にコンサルが各部署の課長とかにインタビューするときって、相手はめっちゃ警戒しているわけです。よそ者だし。コンサル側から見ると、値踏みされている感が半端ない。

そんな時、コンサル時代のとある先輩は自己紹介とプロジェクト背景を説明した後

「すみませんが、この会社のことにも詳しくなりたくてXXさんがどんなお仕事されてきたかから伺ってもいいですか?」とその人の社内での経歴を聞いたりしていました。

自分のキャリアなので皆さんちゃんと話せるし、課長とかになっている人なのでそれなりの自慢話も入れられる。

聞き手としても場が盛り上がるだけでなく、会社の雰囲気やその人の経験・背景がわかるので、その後の本来聞きたい事項についても立体的に理解できる。

(年上の部下とかもこの流れに乗せられるとうまくいくケースが多い気がします。嫉妬を抱かれているケースも多いのでとても難しいですが。)

 

そんなわけで

「いつからこの部署(会社)で働かれてるんでしたっけ?」

初回の1on1その他の場面で大変おすすめです。